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汽車旅ひろば - ひろやすの汽車旅コラム

汽車旅ひろば


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"鉄道フォーラム"代表の伊藤博康氏による鉄道コラム。
毎回幅広いテーマの中から、「乗ってみたい」「知って良かった」「へぇ~」な汽車旅関連の話題をご紹介します。お楽しみに!

ブルトレの最終章か、「あけぼの」来春廃止の報道 [No.H066]

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最後の正統派ブルートレインとなった、
上野~秋田~青森を結ぶ、寝台特急「あけぼの」。
上野口はEF64牽引となったが、EF81牽引当時の写真。


11月早々に、衝撃的なニュースが駆け巡りました。
寝台特急「あけぼの」が、来年3月のダイヤ改正で廃止されるというのです。JR東日本からの正式リリースはまだありませんが、タイミングからしてほぼ間違いない報道であろうと思われます。
同列車は、東北新幹線が新青森まで全通した2010(平成22)年12月に廃止されるとの観測が流れました。しかし同年7月に、乗車率が高いことから当分のあいだ存続することが決まったと報じられました。その当分のあいだというのが3年強だったようです。
この列車の特徴は、ビジネス客を対象とした最後の寝台客車列車ということでしょう。同様な寝台列車には「サンライズ出雲・瀬戸」(2013.7.19コラムに関連内容あり)がありますが、これは寝台"電車"です。寝台客車列車といえば、1980年頃に「ブルトレブーム」で話題となったブルートレインです。当時憧れの対象だったブルトレですが、時代の波に逆らえず、次第に廃止されていった結果、最後に残ったのがこの「あけぼの」というわけです。それほどビジネス利用が多いため、一人用個室が多くあることも特徴です。
上野~青森を結んでいますが、日本海側を経由します。利用者の多くは、新潟・秋田・青森県の羽越・奥羽本線の駅を利用する方々です。それだけに、下り列車でみると、午前4時6分発のあつみ温泉から6時38分秋田着までの約2時間半で、6駅にも停車します。秋田~青森も、3時間10分の間に10駅停車と、寝台列車としてはかなりの停車頻度です。新潟新幹線・秋田新幹線・東北新幹線の恩恵を受けにくい駅と東京を結ぶ列車、との位置づけです。まさに、正統派のブルートレインですよね。その廃止は、長距離移動に夜行列車が利用されなくなったことを示しているのでしょうか。


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最後のブルートレインとなる寝台特急「北斗星」。
青函トンネル開通の象徴として走りはじめたが、
「あけぼの」に続いて廃止の予定と報道された。
寝台特急「あけぼの」が廃止になると、ブルートレインは寝台特急「北斗星」だけとなります。「あけぼの」とは違ってビジネス利用は多くなく、乗ることを目的とした観光客の利用が多いことが特徴です。この「北斗星」は、1988(昭和63)年3月の青函トンネル開通を象徴する列車として、青函トンネル開業と同時に登場しました。つまり、走りはじめてから今年で25年となったわけです。個室主体で、豪華なA個室寝台「ロイヤル」や2名用の個室寝台も多く連結し、フランス料理のフルコースが味わえる食堂車「グランシャリオ」(2012.8.24コラムに関連内容あり)を連結するなど、それまでの日本の鉄道にはないサービスを提供しています。そのため、登場からしばらくは大人気となり、最大で一日3往復の運転でしたが、いまは一日1往復となっています。
その「北斗星」も、「あけぼの」の廃止翌年に廃止との報道がありました。こちらは、報道各社により幾分内容に幅がありますが、臨時列車にしたうえで、北海道新幹線新青森~新函館開業時に廃止するということではないかと推測しています。この廃止時には「トワイライトエクスプレス」「カシオペア」も廃止とする報道もありました。いずれもJRから正式発表があったわけではなく、マスコミ報道によるものですから確実ではありません。しかし、「北斗星」「トワイライトエクスプレス」の客車や牽引機の老朽化を考えると、残念ながら大きくはずれた報道とは思えません。
そこで、今の段階で予想される、今後の廃止時期をまとめてみました。

○今後予想される、寝台列車の廃止とその時期
2014(平成26)年3月 「あけぼの」廃止
2015(平成27)年3月 「北斗星」定期廃止、臨時列車になる
2016(平成28)年3月 「北斗星」「カシオペア」「トワイライトエクスプレス」廃止
※同月に北海道新幹線 新青森~新函館が開業


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夜行急行「はまなす」は札幌~青森間を結ぶ。
夜行列車廃止の流れに逆らえるのか?
いまのところ、存廃に関する報道はないようだ。
このように、東北・北海道の寝台列車が全廃の方向となると、気になるのが札幌~青森を結ぶ夜行急行「はまなす」です。上記寝台列車たちと同じく、車両も牽引機も老朽化しています。さらに、北海道新幹線新青森~新函館の開業によって、江差線の木古内~五稜郭は新幹線の並行在来線として第三セクター化される予定です。また、青函トンネルを通過するには、牽引機をJR貨物が新製するEH800とする必要があります。いまは本州側の中小国~青森を除いて、全てJR北海道の車両と線路ですから、それより採算制が悪化することが確実なわけです。また、函館~札幌は特急で約3時間半ですから、新青森~新函館の所要約1時間を加えても夜行存続の意義が薄れそうです。すると、「はまなす」も札幌発着の寝台特急と命運を共にするのでは? との推測がでてくるわけです。
筆者は、JR各社の内部情報を知りませんので、以上はあくまでもこれまでに報道された内容からの推測です。しかし、当たらずも遠からずであろうと思っています。できれば外れて欲しい予想なのですが…
なにはともあれ、札幌発着の夜行列車に乗るなら今のうちということは間違いないものと思います。参考にされて下さいね。


掲載日:2013年11月29日


●伊藤 博康(いとう ひろやす)
(有)鉄道フォーラム代表。愛知県犬山市生まれ。パソコン通信NIFTY-Serve草創期から鉄道フォーラムに関わり、1992年から運営責任者。(有)鉄道フォーラムを設立後、独自サーバでサービスを継続中。著書に「日本の “珍々”踏切」(東邦出版)「鉄道ファンのためのトレインビューホテル」「鉄道名所の事典」(東京堂出版)がある。現在、中日新聞社「達人に訊け」でもコラムを連載中。