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汽車旅ひろば - ひろやすの汽車旅コラム

汽車旅ひろば


  • ひろやすの汽車旅コラム
"鉄道フォーラム"代表の伊藤博康氏による鉄道コラム。
毎回幅広いテーマの中から、「乗ってみたい」「知って良かった」「へぇ~」な汽車旅関連の話題をご紹介します。お楽しみに!

バス会社に経営移管した『京都丹後鉄道』の運行が始まる [No.H136]

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京都丹後鉄道は、宮津駅を中心にして福知山・西舞鶴・豊岡の3方向の路線を有する鉄道。
前々回の当コラムで、今年(2015年)4月1日から上下分離をして、公有民営鉄道となった四日市あすなろう鉄道について記しました。同じ日に、もう一つの第三セクター鉄道でも上下分離が行われました。京都府等が出資していた第三セクター鉄道「北近畿タンゴ鉄道」です。
同鉄道は上下分離をしたうえで、運行を高速バス会社大手のウィラーアライアンスに移管したのです。ウィラーアライアンスは、鉄道施設と車両を借りて運行するための会社「ウィラートレインズ」を設立し、同日から「京都丹後鉄道」として運行を始めました。ツアーバス会社として、ネットを駆使した低コスト高付加価値サービスで利用者の支持を得て、さらに高速バスへの転身も果たしたウィラーです。しかし、初の鉄道進出は、意外なほど地味で堅実なスタートでした。その様子を見てきましたので、ここにレポートします。


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宮津線を「宮豊線」と「宮舞線」に分離したうえで、結節点となる宮津駅はナンバリングは単なる「14」に。これにも理由が…
北近畿タンゴ鉄道は、福知山~宮津間の宮福線30.4kmを完成させた1988(昭和63)年7月16日に運行をはじめます。その後、国鉄宮津線(西舞鶴~宮津~豊岡間83.6km)の廃止をうけて、1990(平成2)年4月1日から同線も運行することになりました。この関係で、これまで宮福線と宮津線の2線区での運行となっていました。
一方、旅客の流れは宮津を中心に、福知山・西舞鶴・豊岡の3方向となっています。そこで京都丹後鉄道は、運行開始にあたって宮津線を宮津で東西に分けて、西舞鶴側を宮舞線、豊岡側を宮豊線と名づけました。さらに、近年普及著しい駅ナンバリングも採用して、宮福線は「F」、宮舞線は「M」、宮豊線は「T」をつけました。
このとき、福知山駅を「F01」とすると、宮津駅は14駅目なので「F14」となりますが、敢えてFを省いた「14」としました。そのうえで、西舞鶴駅を「M01」ではなく「M08」とすることで、西舞鶴駅からも宮津駅が「14」になるようにしています。さらに、宮豊線は宮舞線からの通番として「T15」からスタート、豊岡駅を「T26」としています。



宮津駅にアルファベットをつけないことで、慣れない利用者にとって、自分がどの辺りにいて目的駅まであと何駅かがより明確になったわけです。素晴らしく柔軟な発想ですよね。
ちなみに、駅名標は全て取り替えられましたが、その横線はウィラーらしくピンク色。左上の略称「丹鉄」の下には、バスで見慣れたウィラーグループのロゴがついています。


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ウィラートレインズ塗装の車両は、いまのところこの1両だけ。「丹鉄」の略称とロゴは、車両正面に。
路線名を見直し、駅ナンバリングも利用者本位のものにした京都丹後鉄道ですが、列車ダイヤはとりあえず北近畿タンゴ鉄道時代のままとし、車両も1両をウィラートレインズ塗装にしただけでのスタートとなりました。京都丹後鉄道のサイトにある「経営ビジョン」をみますと、鉄道単独ではなく駅からのバス・タクシー・レンタサイクル等の接続交通も含めた総合交通体系の確立を目指していることが判ります。そのためには、関係各所に対しての地道な協力体制作りが必要と思われますので、開業初日からの対応とはできなかったようです。
一方、お得な企画乗車券はフリーパスだけでなく、地域のイベント等に合わせた25種類もの切符をいきなり取りそろえました。これらはインターネットで事前予約しておくと割引きになるものも多く、そのネット予約には、ウィラーエクスプレスのバスなどの予約に使うマイページがそのまま利用可能です。きめ細かく、かつ大胆にという京都丹後鉄道の経営方針を感じて、この先の大変革を期待したくなる開業直後の様子でした。


掲載日:2015年04月24日


●伊藤 博康(いとう ひろやす)
(有)鉄道フォーラム代表。愛知県犬山市生まれ。パソコン通信NIFTY-Serve草創期から鉄道フォーラムに関わり、1992年から運営責任者。(有)鉄道フォーラムを設立後、独自サーバでサービスを継続中。著書に「日本の “珍々”踏切」(東邦出版)「鉄道ファンのためのトレインビューホテル」「鉄道名所の事典」(東京堂出版)がある。現在、中日新聞社「達人に訊け」でもコラムを連載中。