日本旅行 トップ > JR・新幹線+宿泊 > 鉄道の旅 > 汽車旅ひろば > ひろやすの汽車旅コラム 「復興が続く仙石線・石巻線の現状 1/2」

[ ここから本文です ]

汽車旅ひろば - ひろやすの汽車旅コラム

汽車旅ひろば


  • ひろやすの汽車旅コラム
"鉄道フォーラム"代表の伊藤博康氏による鉄道コラム。
毎回幅広いテーマの中から、「乗ってみたい」「知って良かった」「へぇ~」な汽車旅関連の話題をご紹介します。お楽しみに!

復興が続く仙石線・石巻線の現状 1/2 [No.H150]

東日本大震災から間もなく4年半となります。
未曾有の災害で東北地方は大きくダメージを受けましたが、その後の不断の努力により、少しずつ、でも着実に復興を遂げています。昨年7月~8月に4回にわたって記した、岩手県の三陸鉄道と大船渡線BRTは、そんな復興の一つの姿でした。
「あまちゃん」のロケ地、三陸鉄道をめぐる旅 1
「あまちゃん」のロケ地、三陸鉄道をめぐる旅 2
「あまちゃん」のロケ地、三陸鉄道をめぐる旅 3
JR東日本の大船渡線BRTに乗る
同じく津波の大きな被害を受けた宮城県の鉄道のうち、石巻線は今年3月21日に、仙石線は5月31日に、それぞれ全線で運行を再開しました。その現状を見てきましたので、2回に分けてご紹介します。

イメージ
クリックして拡大
仙石東北ラインの快速列車は、専用のHB-E210系を使用し、2両もしくは4両編成で運転。
まずは仙石線です。
同線は、高城町(たかぎまち)~陸前小野間11.7kmを長らく運休していました。その運行再開に際して、仙台~高城町間で東北本線を走る快速列車を新設しました。この新ルートは、仙石東北ラインと名づけられています。
地図をみると判るのですが、東北本線と仙石線は、仙台~松島・高城町間でほぼ並行しています。特に、塩釜~松島・下馬~高城町間の10km強は、海岸線と山に挟まれた地形から、ほとんど同じ所を走っています。なかには、海沿いを走るはずの仙石線が、東北本線より山側を走っている区間もあるほどです。
その中でも両線が接近しているところが、仙石線の松島海岸~高城町間にあり、両線の間は空き地となっていました。ここに、東北本線の仙石線接続線を新設したのです。
その結果、仙石線の仙台~高城町間は25.0kmなのに対して、東北本線経由だと23.7kmと1.3kmも短くなりました。さらに、このルートを通る列車を快速として、途中、塩釜駅に停車するだけとしました。すると、仙石線では43-45分を要していたのに対して、快速は30分で走るようになったのです。
ところで、東北本線は交流2万ボルト、仙石線は直流1500ボルトの電化線です。つまり、交直両用車か非電化線用の気動車等を使わなければ、直通運転ができません。そこで、JR東日本は仙石東北ラインの快速用ハイブリッド車HB-E210系を新造しました。エンジンで発電し、モーターで走る車両です。自動車のハイブリッド車と同じく、発電して余った電気や、ブレーキ時に発生する電気は蓄電池に貯めたうえで、改めて使う省エネ車です。


イメージ
クリックして拡大
左の2本が東北本線。中央が新設された仙石線接続線と安全側線。右端に、この先で合流する仙石線が見える。
さて、仙石東北ラインの快速列車に乗ってみましょう。
仙台駅を発車すると、軽快に走り続けます。さすがに東北本線だけあって線形が良く、途中駅も塩釜駅を除いて通過ですから速いです。それが、塩釜駅を発車して、何度かトンネルを抜けると、減速し始めました。
やがて、東北本線下り線から上り線への渡り線に入り、その上り線からさらに右に分かれる仙石線接続線へと進みます。仙石東北ラインのために新設された300mの新線です。分岐部は松島駅構内の扱いですが、新線をゆっくりと進行すると、第一場内信号機を経て仙石線に入ります。第一場内信号機…つまり、ここから高城町駅の構内の扱いなのです。高城町駅までは約1.5kmあるので、随分と長い構内ですが、単線で列車がすれ違うことはないので、現実的な扱いでしょう。


イメージ
クリックして拡大
石巻駅の駅名標には「萬画の国・いしのまき」の標語が記されている。後ろに停まっているのは、マンガッタンライナー。
仙石線の終点であり、石巻線との乗換駅となるのは石巻駅です。石巻市は、漫画家として知られる故・石ノ森章太郎氏の遺志を継いだ「萬画の国・いしのまき」をスローガンにしたまちづくりをしています。
その核は、駅から1km強のところにある旧北上川の中州に建つ、石ノ森萬画館です。同館は東日本大震災による津波被害で1階の展示物が全て流されるなど、大きな被害を被りましたが、幸い、地震後の迅速な避難により、人的被害はでませんでした。営業再開までに1年8か月を要しましたが、いまも大勢の観光客が集う石巻観光の核の一つです。
その旧北上川の中州を、ニューヨークのマンハッタン島に似た形だとして、石ノ森章太郎氏はマンガッタンと名づけました。その石巻へ行く仙石線の列車には、「マンガッタンライナー」も走っています。石ノ森章太郎氏の萬画キャラクターがラッピングされた編成です。
石巻へ行くなら、片道で仙石東北ラインの快速を利用し、片道はマンガッタンライナーに乗るのも楽しいでしょう。


掲載日:2015年08月07日


●伊藤 博康(いとう ひろやす)
(有)鉄道フォーラム代表。愛知県犬山市生まれ。パソコン通信NIFTY-Serve草創期から鉄道フォーラムに関わり、1992年から運営責任者。(有)鉄道フォーラムを設立後、独自サーバでサービスを継続中。著書に「日本の “珍々”踏切」(東邦出版)「鉄道ファンのためのトレインビューホテル」「鉄道名所の事典」(東京堂出版)がある。現在、中日新聞社「達人に訊け」でもコラムを連載中。