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汽車旅ひろば - ひろやすの汽車旅コラム

汽車旅ひろば


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"鉄道フォーラム"代表の伊藤博康氏による鉄道コラム。
毎回幅広いテーマの中から、「乗ってみたい」「知って良かった」「へぇ~」な汽車旅関連の話題をご紹介します。お楽しみに!

横浜市地下鉄で快速運転がはじまる [No.H153]

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快速運転をはじめた横浜市地下鉄。快速列車は、「Rapid」の「R」が列車番号についている。
地下鉄というと、都心部で頻繁運転をする便利な乗りものだけど、どの列車も全駅に止まる…という印象がありませんか? 実際、国内に数多くある地下鉄でも、快速運転をしているのは、東京メトロ東西線くらいです。以前、神戸市地下鉄に快速運転がありましたが、いまは廃止されています。
そのようななかで、横浜市地下鉄が7月18日から快速運転を始めました。

横浜市地下鉄には、ブルーラインとグリーンラインの2路線がありますが、快速運転を始めたのはブルーラインです。
ブルーラインの路線は、東急田園都市線のあざみ野駅から新幹線の新横浜駅を通り、横浜駅・桜木町駅・関内駅といった横浜の中心街を抜けて、京急本線の上大岡駅、東海道本線の戸塚駅を経て、小田急江ノ島線の湘南台駅に至る40.4kmです。
全線の所要時間は1時間8分ですが、円弧を描くような線形ですから、区間利用が基本となっていて、全線に乗車するような利用は想定されていません。それだけに、快速運転の効果はいかほどかと思ったのですが、そこは実によく考えられています。


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快速は赤地で表示、普通は緑地で表示として、判りやすい旅客案内にしています。
快速運転をするのは、平日10-16時と土休日の9-16時の、いわゆる日中時間帯です。通勤時間帯は列車本数を増やすために、快速運転は難しいようです。
その快速区間ですが、新羽~戸塚間24.4kmですから、全線のほぼ6割になります。停車駅は、新羽(にっぱ)・新横浜・横浜・桜木町・関内・上大岡・上永谷(かみながや)・戸塚の8駅で、途中14駅を通過します。駅での案内表示は、快速に赤色を使い、普通は緑色と、見分けやすくなっています。
注目すべきは、快速運転をはじめるにあたり、普通列車の運転本数を1時間8本とダイヤ改正前と同じにしていることです。そのうえで、快速列車を30分に1本の割合で増発したのです。
このため、緩急接続をする新羽駅と上永谷駅では、快速列車が発車するとすぐに普通列車が発車するダイヤとしました。一方、普通列車は6-7分間隔で走っていますが、快速列車の前後だけ最大11分の間隔としています。ただし、これも途中駅での停車時間見直しにより、駅を進むにつれて普通列車の運転間隔が均等になるように工夫されています。


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快速運転開始を案内する天井の案内板が、戸塚駅ではJR改札口の真ん前に!
横浜市地下鉄が快速列車を運転する目的は、

・横浜~新横浜
・戸塚~関内

の利用者増であることが、右の写真をみると明らかです。
これは、JR戸塚駅の地下改札付近の様子を撮ったものです。同改札の前には、地下鉄への階段とエスカレーターがあるのです。ここで快速運転をはじめることを大きくPRしていますが、その右端の赤い丸の中には、

横浜駅から新横浜駅 8分
戸塚駅から関内駅 17分

と書いてあるのです。
横浜駅~新横浜駅は、新幹線を200km以上利用する場合、乗車券が横浜市内駅発着になるため、横浜駅~新横浜駅を追加運賃なしで利用できます。しかし、横浜線直通列車は日中10分に1本の割合で、所要11-14分です。さらに、横浜線の列車は桜木町駅発着なので、関内駅からだと途中で乗換が必要になります。この点、新横浜駅まで直通する地下鉄は、所要時間において有利なわけです。
一方の戸塚駅~関内駅ですが、JRだと横浜駅乗換で所要17-22分、運賃302円(ICカード利用)です。地下鉄は快速18分・普通22分ですが、乗り換えなしで運賃も299円(ICカード利用)ですから、優位に立てると判断したようです。

この横浜市とJR東日本の横浜アクセスの争いは、今後、利用者がどう判断するのか。夏休み後の利用状況が気になるところです。


掲載日:2015年08月28日


●伊藤 博康(いとう ひろやす)
(有)鉄道フォーラム代表。愛知県犬山市生まれ。パソコン通信NIFTY-Serve草創期から鉄道フォーラムに関わり、1992年から運営責任者。(有)鉄道フォーラムを設立後、独自サーバでサービスを継続中。著書に「日本の “珍々”踏切」(東邦出版)「鉄道ファンのためのトレインビューホテル」「鉄道名所の事典」(東京堂出版)がある。現在、中日新聞社「達人に訊け」でもコラムを連載中。