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汽車旅ひろば - ひろやすの汽車旅コラム

汽車旅ひろば


  • ひろやすの汽車旅コラム
"鉄道フォーラム"代表の伊藤博康氏による鉄道コラム。
毎回幅広いテーマの中から、「乗ってみたい」「知って良かった」「へぇ~」な汽車旅関連の話題をご紹介します。お楽しみに!

北関東から東海地方への楽でお得な汽車旅 [No.H171]

JRグループの普通列車に乗り放題のきっぷとして人気の「青春18きっぷ」が、今年も発売されることになりました。
北海道新幹線の開業で、北海道へ乗り継いで行けなくなるのか、「青春18きっぷ」そのものが廃止になる…といった噂がまことしやかに流れていました。しかし、「青春18きっぷ北海道新幹線オプション券」を発売することで、引き続き「青春18きっぷ」で全国のJR普通列車を乗り継いでの汽車旅を楽しめるようになったのです。
その新たな制度を含む「青春18きっぷ」については、3月からの有効期間になる前に、改めて記そうと思っています。


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上野東京ラインの開業で、常磐線から東海道本線へとグリーン車の乗り継ぎができるようになった。
さて今回は、「青春18きっぷ」が発売されているか否かにかかわらず、北関東から東海地方への楽でお得な汽車旅を紹介します。ちなみに以下の内容は、年始に「青春18きっぷ」を使って筆者が実際に乗り継いだものです。しかし、同きっぷがないときでも、普通乗車券を購入すれば同じことができます。

早朝に都内を出発し、上野駅から常磐線勝田行に乗ります。その際、ホームでSuicaを使って事前にグリーン券を購入します。グリーン料金980円ですが、車内でグリーン券を購入すると1,240円ですから、事前購入しておくのが鉄則です。なお、土休日だと事前料金が780円、車内料金が1,040円と、それぞれ200円安くなります。
乗車したら空いている席に行き、席上にあるセンサーに先ほどのSuicaをタッチすれば、赤いランプが緑色に変わります。グリーン券購入済であることを示しているので、車内検札をされることもなくゆっくりできるわけです。早起きをしてきたので、リクライニングシートを倒して眠ることにします。
勝田行普通列車は1時間に2本ありますが、たいていグリーン車はさほど混んでいません。まして、早朝の列車であればガラガラです。特急を利用すると、特急券1,550円で所要約1時間15分のところを、グリーン券980円で所要2時間強ですので、特急を選択する人が多いということでしょう。なお、勝田の一つ手前となる水戸駅まででも、乗車券の金額が異なる以外は同じ条件となります。例年2月下旬から3月末にかけて見頃を迎える偕楽園の梅を楽しむなら、3月1日から有効の「青春18きっぷ」を使うと経済的です。
冬の寒い時期、一般車は乗客の乗降とともに冷たい空気が車内に入ってきますが、グリーン車はデッキがついているため保温性が高く、その点でもゆっくりと寝ることができます。


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上野駅で乗り換えるついでに、間もなく廃止となる寝台特急「カシオペア」入線の様子を眺める。
勝田でひたちなか海浜鉄道を楽しんだら、また常磐線を戻ります。同じく普通列車のグリーン車利用ですが、今度は乗車区間を熱海までと指定しました。常磐線の普通列車は上野東京ラインの開通で品川まで行くようになりましたが、熱海行はありません。でも大丈夫。JR東日本の首都圏を走る普通列車は、目的地までに乗換があっても通算でグリーン券を利用できるのです。
ですから、勝田までは上野から123. 3kmに対してグリーン料金980円(土休日なら780円)だったのが、今度は勝田から熱海まで延々231. 5km乗っても、グリーン料金は51km以上ということで、同額なのです。とってもお得ですよね。
ただし、改札口を出ないこと、同一方向に乗り継ぐことという制限があります。でも、乗り継ぎ時間については特に規定がないので、乗換駅のエキナカで買い物をして、お茶を飲んでから次の列車に乗るということもできます。
私はこの制度を利用して、今度のダイヤ改正で廃止される、寝台特急「カシオペア」の入線の様子を見に行きました。さすがに人気の列車で、1月上旬の平日にもかかわらず、入線時には乗客も含めて13番線ホームの突端部分には人垣ができました。
昨年廃止となった札幌行のトワイライトエクスプレスと同様に、すでに寝台券の入手は困難な状態が続いているようです。そのプラチナチケットをもって乗り込む方々を羨ましく眺めながら、上野東京ラインのホームに戻ったのでした。


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沼津からは「ホームライナー静岡」に乗車。320円のライナー券で特急形車両に乗れるので、これまた快適だ。
上野から熱海までの普通列車は、所要時間が2時間弱です。東京・新橋・品川と次第に混んでいきますが、それも大船あたりまで。その後は次第にすいてきて、小田原を過ぎるとかなり余裕ができます。とはいえ、基本的に皆さん着席していますので、ざわついた感じがないところが、立ち席者多数の普通車との大きな違いでしょう。
熱海で乗り換えるとJR東海となります。3駅先の沼津まではロングシートとなりますが、約20分ですから、座り疲れた体をほぐすくらいの気持ちで乗ることができます。

沼津からは、お勧めの列車「ホームライナー浜松」に乗ります。
特急「ふじかわ」「伊那路」などに使われる373系特急電車を使用していますので、熱海まで乗ってきたJR東日本普通列車のグリーン車と同等以上の座席です。さらに、ホームライナーですので乗車整理券320円とグリーン券に比べてグッと安く、130. 9kmの所要1時間39分という点でもお得感十分です。沼津駅のホームには乗車整理券を発売する専用の自動券売機がありますので、その点でも便利です。
   ホームライナー浜松3号   沼津18:32→20:11浜松
   ホームライナー浜松5号   沼津19:32→21:11浜松
の2本がありますが、土休日は5号の運転がなく3号だけですので、注意が必要です。
さらに、この列車が嬉しいのは、3号は浜松到着後そのまま豊橋行となり、豊橋ですぐの乗継ぎが大垣行ということ。5号は浜松で乗り換えると大垣行ということで、いずれも、沼津から1度の乗換で、名古屋・岐阜まで転換クロスシートで行けてしまうのです。

陽が傾く頃に常磐線・東北本線・高崎線といった北関東をでれば、普通車グリーン券と乗車整理券だけで、東海地方まで快適に移動ができます。
翌朝一番から東海地方で動きたいときに、この乗り継ぎは経済的でお勧めです。

なお、上り列車は浜松~沼津間を直通するホームライナーがなく、浜松~静岡の「ホームライナー静岡」と、静岡~沼津の「ホームライナー沼津」となります。これらも、使いようによっては快適な汽車旅を提供してくれます。


掲載日:2016年01月15日


●伊藤 博康(いとう ひろやす)
(有)鉄道フォーラム代表。愛知県犬山市生まれ。パソコン通信NIFTY-Serve草創期から鉄道フォーラムに関わり、1992年から運営責任者。(有)鉄道フォーラムを設立後、独自サーバでサービスを継続中。著書に「日本の “珍々”踏切」(東邦出版)「鉄道ファンのためのトレインビューホテル」「鉄道名所の事典」(東京堂出版)がある。現在、中日新聞社「達人に訊け」でもコラムを連載中。