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汽車旅ひろば - ひろやすの汽車旅コラム

汽車旅ひろば


  • ひろやすの汽車旅コラム
"鉄道フォーラム"代表の伊藤博康氏による鉄道コラム。
毎回幅広いテーマの中から、「乗ってみたい」「知って良かった」「へぇ~」な汽車旅関連の話題をご紹介します。お楽しみに!

福井鉄道とえちぜん鉄道が相互乗り入れを開始 [No.H185]

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田原町でえちぜん鉄道に乗り入れる、福井鉄道の超低床車“FUKURAM”。右側の線路は、田原町折り返し列車用の福井鉄道線。
福井県の県庁所在地である福井市には、JRのほかにえちぜん鉄道と福井鉄道が走っています。えちぜん鉄道は福井駅東口から北陸本線に沿って北へ進み、2駅先の福井口で東西に分岐して、東は勝山へ、西は三国港へと進みます。その三国港への路線は、福井口から3駅目の田原町駅で福井鉄道と連絡しています。
福井鉄道は、田原町から福井市内の繁華街を路面電車として南へ進み、町の南に位置する赤十字前から鉄道線となって越前武生に至ります。路面電車区間にはヒゲ線と呼ばれる支線があり、福井駅西口にもアクセスできます。
…文章だとまどろっこしいですが、要は福井駅の東と西に駅・電停があるえちぜん鉄道と福井鉄道は、市街地の北にある田原町で再度合流するわけです。
えちぜん鉄道の沿線には高校や大学が複数あります。一方、福井鉄道の沿線には、福井の繁華街に続いて県立音楽堂「ハーモニーホール」、イベント会場の「サンドーム福井」があります。買い物やコンサートに行くのに、田原町で乗り換えずに済むのであれば便利ですよね。 そこで、去る3月27日から福井鉄道とえちぜん鉄道が相互乗り入れを始めました。


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えちぜん鉄道の鷲塚針原駅に停まるえちぜん鉄道の電車(左)と、福井鉄道の超低床車“FUKURAM”(右)。ホーム高さが異なる。
相互乗り入れはえちぜん鉄道の鷲塚針原~田原町間6. 0kmと、福井鉄道の田原町~越前武生間20. 9kmで、「フェニックス田原町ライン」と名づけられました。田原町基準で朝7時台から18時台まで、日中は1時間に1本の運行です。福井鉄道線内は急行としての運転ですが、福井駅に近い市役所前で、普通列車と緩急接続しています。

福井鉄道は近年、車両を大幅に入れ換えて、鉄道用車両から路面電車用の低床車を基本にしました。乗り入れも超低床車“FUKURAM”使用が基本となっています。
一方、えちぜん鉄道は全車が高床の鉄道線用電車です。左の写真をみると、乗り入れ用の超低床車“FUKURAM”(右)の運転席窓の下は、えちぜん鉄道の電車(左)の乗降ドアの下辺と同じくらいの位置ですよね? それだけに、ホームの高さもまるで違います。これでは、ホームを共用できないわけです。
そこでえちぜん鉄道では、田原町以外の6駅のうち利用が少ない中角駅を通過扱いとし、除く5駅に新たな低床ホームを用意しました。従来の高床ホームを延長する形だったり、線路の反対側に新設したりと、工夫の跡が見られます。


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相互乗り入れと同時にデビューした、フェニックス田原町ラインのアイドル?“ki-bo(キーボ)”。
「フェニックス田原町ライン」は、相互乗り入れです。ですから、福井鉄道のFUKURAMに相当する、えちぜん鉄道の低床車両が必要になります。
それが、右の写真のL形キーボ(ki-bo)です。2車体連接で、FUKURAMの3車体連接に比べると小柄です。そのうえ、前照灯がなんとも可愛らしいですよね。口も付いているようです。前後の降車用扉の運転席側には、縦に4つの赤いランプがついていて、これまた可愛いアクセントとなっています。
えちぜん鉄道では、このキーボの前照灯と“口”のあたりをデザイン化したものを広告に使ったり、相互直通運転開業記念共通1日フリー乗車券の図柄に使ったり、缶バッチを作って売ったりしているそうです。まさにアイドル化計画真っ最中という様子です。

「フェニックス田原町ライン」の急行運用は、基本的にFUKURAMが2編成とキーボ1編成の計3編成で回しているようです。ただし、検査の都合などで名鉄岐阜市内線からやってきた770形が入ることがあります。
土休日と年末年始には、福井鉄道とえちぜん鉄道共通の1日フリーきっぷが発売されます。大人1,400円、こども700円で両鉄道を一日乗り放題のお得な企画きっぷです。駅のほか、車内でも乗務員から購入できますので、この発売日に行って両鉄道を楽しむのがお勧めです。


掲載日:2016年04月22日


●伊藤 博康(いとう ひろやす)
(有)鉄道フォーラム代表。愛知県犬山市生まれ。パソコン通信NIFTY-Serve草創期から鉄道フォーラムに関わり、1992年から運営責任者。(有)鉄道フォーラムを設立後、独自サーバでサービスを継続中。著書に「日本の “珍々”踏切」(東邦出版)「鉄道ファンのためのトレインビューホテル」「鉄道名所の事典」(東京堂出版)がある。現在、中日新聞社「達人に訊け」でもコラムを連載中。