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汽車旅ひろば - ひろやすの汽車旅コラム

汽車旅ひろば


  • ひろやすの汽車旅コラム
"鉄道フォーラム"代表の伊藤博康氏による鉄道コラム。
毎回幅広いテーマの中から、「乗ってみたい」「知って良かった」「へぇ~」な汽車旅関連の話題をご紹介します。お楽しみに!

交流電化発祥地で地道な活動を続ける東北福祉大 [No.H223]

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東北福祉大学のキャンパス内にある鉄道交流ステーション。企画展「東北・北海道を走ったブルートレイン」を開催中。
鉄道の電化方式には3つあります。
(1) 直流電化
(2) 交流電化
(3) 蓄電池駆動電車による電化
このうち(1)は明治時代から実用化され、(3)は近年の技術発達で実用化が始まったところです。
では、(2)は日本の場合いつどこからはじまったのでしょう。
それは、昭和29(1954)年から宮城県を走る、仙山線の北仙台~作並間ではじめた交流電化試験であり、その成果をもとに、昭和32(1957)年9月5日から仙台~作並間ではじめた交流電気機関車による営業運転です。

その最初の試験交流区間内に、ちょうど10年前となる2007年3月18日、東北福祉大前駅ができました。駅名の通り、東北福祉大学ステーションキャンパスの最寄り駅です。
このような立地にあることから、同大学の一角には「鉄道交流ステーション」が作られ、交流電化に関する資料の収集を行っています。
また、年に3回程度の企画展を行っていて、いまは

   第29回企画展「東北・北海道を走ったブルートレイン」

という、仙台ゆかりのブルートレインを対象とした展示を3月4日(土)まで行っています。同企画展では、鉄道博物館やJR東日本・JR北海道などの協力を得て、実際にブルートレインで使われていたヘッドマークやナンバープレート、乗務行路表などが展示されています。


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鉄道交流ステーションで販売・配布されている資料類。交流電化に関するものは、特に資料的価値が高い。
鉄道交流ステーションでは、企画展の展示目録などとともに、独自出版した鉄道資料類の販売も行っています。
なかでも「鉄道交流ブックレット」と名づけられた資料のうち、次の2冊は秀逸な内容です。

   ブックレット01号   『交流電化と鉄道の発展~仙山線での試作電気機関車性能試験~』[改訂版]
   ブックレット03号   『図録 仙山線交流電化試験』

どちらも仙山線で行われた交流電化試験に関するもので、01号は、交流電化開業50周年記念として10年前の鉄道交流ステーション開設年に開催された記念講演を基本とした内容です。講演者は、国鉄技術者として若き日に交流電化試験を担当された松野匡雄氏で、当事者しか知り得ない内容が多く盛り込まれています。また、同氏の撮影された試験車両は、当時貴重だったカラーフィルムで撮ったものが掲載されています。
03号は、3年前に開催された第22回企画展「仙山線交流電化試験-日本の鉄道を新幹線へと導いた開発秘話-」の展示図録です。01号をカバーする資料性豊かな内容となっています。
公表されている資料類が限られている交流電化試験について、これだけまとまった書が発刊されているのは、鉄道史ならびに電気技術史において貴重なことといえましょう。
01号は定価1,000円、02号は定価1,300円ですが、鉄道交流ステーションまで出向いて購入すると1冊200円の割引価格で入手できます。一方、遠方の方は、郵送対応もしていただけます。詳しくは、「鉄道交流ステーション」のサイト内「ニュース」にある2015.07.03「鉄道交流ブックレット03『図録 仙山線交流電化試験』を発行いたしました。」をクリックしてください。


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「鉄道交流ステーション」は、東北福祉大前駅の改札を出たすぐ前の建物の入口部分にある。
鉄道交流ステーションの場所は、仙山線の東北福祉大前駅を降りるとすぐに判ります。
同駅改札を出ると、正面に東北福祉大学ステーションキャンパスが建っているのです。その入口の横には455系クモハ455-4の動台車が展示してあります。その台車の背後が鉄道交流ステーションとなっているのです。
毎週火曜日~土曜日の10:00~16:00に開館で、入場無料です。ただし、祝日や大学の試験等でお休みとなる日がありますので、事前に同サイトをチェックしていくとよいでしょう。
また、土曜日には11:00~16:00に鉄道模型館「TFUスカイトレイン」がオープンし、ドイツ製メルクリンと国産HOゲージの模型運転が行われます。こちらも入場無料ですが、土曜日でも開催されないときがあるので、事前にサイトで開館日を確認されることをお勧めします。

仙石線は、仙台に近いところで通勤通学輸送路線となっていますが、昭和30年代にはそれほど重要な路線ではなく、かつ峠越えが続く勾配路線でした。さらに路線中ほどに位置する作並に機関区があったので、ここを拠点にして技術試験が行われました。そのため、作並駅のホームには「交流電化発祥地」の碑があります。
鉄道交流ステーションに行ったら、ついでに作並駅にも寄ってみると良いのではないでしょうか。

まお、仙山線にはそのほかにも見どころが多くありますので、それらについては改めてご紹介しようと思っています。

掲載日:2017年02月03日


●伊藤 博康(いとう ひろやす)
(有)鉄道フォーラム代表。愛知県犬山市生まれ。パソコン通信NIFTY-Serve草創期から鉄道フォーラムに関わり、1992年から運営責任者。(有)鉄道フォーラムを設立後、独自サーバでサービスを継続中。著書に「日本の “珍々”踏切」(東邦出版)「鉄道ファンのためのトレインビューホテル」「鉄道名所の事典」(東京堂出版)がある。現在、中日新聞社「達人に訊け」でもコラムを連載中。