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汽車旅ひろば - ひろやすの汽車旅コラム

汽車旅ひろば


  • ひろやすの汽車旅コラム
"鉄道フォーラム"代表の伊藤博康氏による鉄道コラム。
毎回幅広いテーマの中から、「乗ってみたい」「知って良かった」「へぇ~」な汽車旅関連の話題をご紹介します。お楽しみに!

笑顔プロジェクトで駅名変更・えちぜん鉄道の4駅 [No.H237]

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坂井市の笑顔プロジェクトで駅名変更した4駅の駅名標。「笑顔で暮らせるまち」のキャッチフレーズも付記。
福井県坂井市といっても、同市がどこにあるかすぐに判る人は多くないと思います。ところが、東尋坊のある市とか、丸岡城のある市といえば、福井市の北側に位置する市だということに気づく人もきっと多いことでしょう。
このように知名度不足が残念な坂井市ですが、東洋経済新報社による住みよさランキングでは、全国第5位という輝かしい位置づけです。
ところが、ブランド総合研究所による「地域ブランド調査2016」の結果は、1000市区町村のなかで、なんと990位だということです。
   ※坂井市の魅力発信マガジン
   「Sakai City Story」2016年7月18日配信分より
そこで、同市の魅力を発信することで居住者を増やそうとする“笑顔プロジェクト”事業を立ち上げ、その発信媒体として市内を走る「えちぜん鉄道」の駅を使うことになりました。
坂井市内のえちぜん鉄道三国芦原線の駅は、全部で9駅あります。ところが、途中に芦原温泉で知られるあわら市があるため、福井駅寄りの5駅と、終点の三国港側の4駅に分断されています。その9駅すべての駅名標に「笑顔で暮らせるまち」のキャッチフレーズを入れるとともに、福井市に近い側の連続4駅の駅名を変更しました。
新駅名は次の通りです。
   1.太郎丸   エンゼルランド駅
   2.西春江   ハートピア駅
   3.西長田   ゆりの里駅
   4.下兵庫   こうふく駅
いずれも最初の漢字3文字が元からあった駅名で、後半が今年3月25日に付加されました。また、駅名の下には、坂井市の魅力を伝えるイラストが描かれています。


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渋い木造駅舎が健在の、西長田ゆりの里駅。駅名標の建つホームの先から、デマンドバスが発着している。
福井市にもっとも近い太郎丸エンゼルランド駅は、鷲塚針原駅の次の駅です。
鷲塚針原駅でピンと来る方もおいでかと思いますが、2016年4月22日付の当コラムで紹介した、福井鉄道との相互乗入れ「フェニックス田原町ライン」の折返し駅です。
この太郎丸エンゼルランド駅と、隣の西春江ハートピア駅は駅間わずか900mで、どちらの駅からも児童科学館「エンゼルランドふくい」と図書館併設の文化ホール「ハートピア春江」に歩いて行けます。どちらも文化の森公園内にあり、体育館も隣接するなど文教地区となっている一帯です。

続く西長田ゆりの里駅は、ご覧の通り渋い木造駅舎が現役でがんばっています。駅舎の右側のホームには構内踏切があり、渡った先にはデマンドバス「ベンリくん」のバス停があります。同駅から東部地区各事業所への足で、このバスがあるおかげで同駅はビジネス利用者も乗降します。
駅名につけられた「ゆりの里」は、市民の憩いの場であるゆりの里公園の最寄り駅であることに由来します。毎年6月に「ゆりフェスタ」が開催されることから公園名が付いていますが、芝生広場やバーベキュー広場から研修室まである農業関連の施設です。


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下兵庫こうふく駅の駅舎には、奈良興福寺寄贈の銘板「心」がある。右手に広がるのは興福寺への献米田。
下兵庫こうふく駅は、一帯が平安時代から奈良の興福寺の荘園だったことから、「こうふく」の字が付けられました。平仮名なのは、「幸福」につながるという意味も込められてのことです。
駅舎には「心」の銘板が掲げられています。これは、3月25日に駅名が「下兵庫こうふく駅」となったことを祝い、興福寺の教えである「心」を貫首が直筆したものを、坂井市ゆかりの職人が一枚ケヤキに彫ったものだということです。
同駅のホーム向かい側は興福寺への献米田で、駅前には荘園時代から鎮守の森を有する春日大社があります。その境内には、ご神木に並んで千年ケヤキと千年杉があるなど、歴史を感じさせる一帯です。
この境内と、線路を挟んだ東側の一帯を散策する「こうふくロード」が、新駅名の誕生にあわせて登場しています。

以上4駅は、いずれも素朴な無人駅ですが、続く大関駅も無人駅です。
大関駅は駅名改称されませんでしたが、今年3月12日に、駅名由来で駅銘板が相撲文字になっています。昨年6月に、大関小学校の児童が稀勢の里関に寄せ書きの色紙をプレゼントしたところ、当時大関だった稀勢の里関からお礼が届けられたため、横綱昇進時には地元産のコシヒカリを贈るなど交流を続けているとのことです。

駅名変更は観光目的ではなく、坂井市として居住者増加対策として行ったということですが、魅力を発信しようと取り組んでいるのは、その土地に魅力があるためです。散策気分で途中下車をしてみると、楽しめたり、意外な発見があったりすることでしょう。


掲載日:2017年05月19日


●伊藤 博康(いとう ひろやす)
(有)鉄道フォーラム代表。愛知県犬山市生まれ。パソコン通信NIFTY-Serve草創期から鉄道フォーラムに関わり、1992年から運営責任者。(有)鉄道フォーラムを設立後、独自サーバでサービスを継続中。著書に「日本の “珍々”踏切」(東邦出版)「鉄道ファンのためのトレインビューホテル」「鉄道名所の事典」(東京堂出版)がある。現在、中日新聞社「達人に訊け」でもコラムを連載中。