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汽車旅ひろば - ひろやすの汽車旅コラム

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"鉄道フォーラム"代表の伊藤博康氏による鉄道コラム。
毎回幅広いテーマの中から、「乗ってみたい」「知って良かった」「へぇ~」な汽車旅関連の話題をご紹介します。お楽しみに!

JR東日本から振り子車両がなくなる…その先は? [No.H281]

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JR東日本唯一の振り子車両で、3月改正で定期運用がなくなった中央本線のE351系。
日本の在来線は複雑な地形を走ることから急カーブが多く、幹線系といえどもスピードアップに不利な線形となっているところが多いのが実状です。特に山間部を走る線区にその傾向が強いことから、国鉄時代に世界初の自然振り子式電車381系が開発され、1973年7月から中央西線の特急「しなの」として走りはじめました。
381系はさらに紀勢西線と伯備線に投入され、伯備線ではいまも381系が特急「やくも」として運転されています。

その後、技術改良が重ねられ、JRになるとJR四国が先導する形で制御付き自然振り子車がぞくぞくと登場しました。
そうした流れの中で、JR東日本は中央東線の特急「あずさ」用としてE351系振り子車をデビューさせました。1993年12月のことで、中央東線の特急「しなの」に381系振り子車が投入されてから20年が経っていました。
他の振り子車と異なり、E351系はパンタグラフを台車に直結することで、振り子作用によるパンタグラフと架線との位置ズレを防ぐ画期的な方法を採用しています。この方式がJR東日本の主流になるかと思われましたが、その後、振り子車両が製造されることはなく、E351系も去る3月17日のダイヤ改正で定期列車から引退。4月7日には「ありがとうE351系」が走りました。
これで、JR東日本の振り子車両は全廃となりました。


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新たに走りはじめたE353系「あずさ」。振り子制御に代わって、車体傾斜装置を採用している。
E351系の後継を任されたのは、E353系です。
E351系と同じく特急「あずさ」用として作られた車両ですが、振り子制御機能は持っていません。代わって、車体傾斜装置を装備しました。
車体傾斜装置は、台車の空気バネが左右二つあることを利用して、カーブに差しかかると空気バネに空気を入れたり抜いたりすることで車体の傾斜角度を変える装置です。
振り子制御に比べると傾斜角度が小さく、反応もやや鈍いものの、構造が簡単で地上側設備に大きな対応がいらないといった利点があります。このため、近年では車体傾斜装置が主流となっていて、制御付き自然振り子装置を開発したJR四国はもとより、新幹線の最新車両であるJR東日本のE5系やJR東海のN700Aなどにも採用されています。

ところで、E351系は基本的に特急「スーパーあずさ」に使われていました。今年3月17日のダイヤ改正ではE353系がその後任となったわけですが、E353系はさらに増備される計画です。
増備されると「あずさ」もE353系になることは明らかですし。その先では、竜王・甲府~新宿・東京間を結ぶ「かいじ」もE353系になることが予想されます。
JR東日本は、常磐線でも特急「スーパーひたち」用651系、特急「フレッシュひたち」用E653系という2種類の特急車を登場させ、列車毎に使い分けていました。それを、いまでは特急「ひたち」「ときわ」という2つの列車名にしたうえで、E657系という新製車を投入して車両を統一しました。
中央東線でも、同じように特急「あずさ」と特急「かいじ」という2つの列車名にしたうえで、E353系に車両統一することが予想されますよね。


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特急「あずさ」「かいじ」に使用されているE257系は、国鉄型185系の置き換え用に転用を予定
では、いま特急「あずさ」と特急「かいじ」に使用されているE257系は、E353系が増備されたときにどうなるのでしょう? この点については、昨春報道がありました。伊豆半島への特急「踊り子」に使用している185系の後継車として、中央東線からE257系を転用するということです。
185系は国鉄時代の車両です。国鉄分割民営化からすでに30年以上経っていますので、特急車としてはすでに置換え時期になっています。それだけに、この報道については、なるほどというのが多くの趣味者の反応でした。

ところで、特急「踊り子」と同じ行程には特急「スーパービュー踊り子」も走っています。こちらはJR東日本になってからの新製車ですが、251系と形式名の頭に「E」がついていません。JR東日本になってから新製された車両でも、初期に登場した車両は「E」がついていないのです。
251系の場合、登場は1990年で、それ以前に登場したのは前述した特急「スーパーひたち」に使用していた1989年登場の651系だけでした。651系は常磐線を離れて、編成を短くしたうえで改造を受けて余命を過ごしている状態です。
251系の翌年となる1991年に登場した初代・特急「成田エクスプレス」253系も、既に後継となるE259系に役割を委譲して、東武線乗り入れ特急「日光」「きぬがわ」用に改造されたり、長野電鉄に譲渡されたりしています。
そう考えると、E353系の増備で転属するE257系により、特急「踊り子」用185系の淘汰は当然のことながら、251系特急「スーパービュー踊り子」の行方も気になるところですよね。
これらの車両が好きな方は、早めに乗っておいた方が良いかも知れません。


掲載日:2018年04月13日


●伊藤 博康(いとう ひろやす)
(有)鉄道フォーラム代表。愛知県犬山市生まれ。パソコン通信NIFTY-Serve草創期から鉄道フォーラムに関わり、1992年から運営責任者。(有)鉄道フォーラムを設立後、独自サーバでサービスを継続中。著書に「日本の “珍々”踏切」(東邦出版)「鉄道ファンのためのトレインビューホテル」「鉄道名所の事典」(東京堂出版)がある。現在、中日新聞社「達人に訊け」でもコラムを連載中。