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汽車旅ひろば - ひろやすの汽車旅コラム

汽車旅ひろば


  • ひろやすの汽車旅コラム
"鉄道フォーラム"代表の伊藤博康氏による鉄道コラム。
毎回幅広いテーマの中から、「乗ってみたい」「知って良かった」「へぇ~」な汽車旅関連の話題をご紹介します。お楽しみに!

JR北海道の夕張支線廃止は、来年4月1日と決定 [No.H283]

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今後の夕張市の交通結節点となる拠点複合施設の建設が予定されている、南清水沢駅。
夕張市が財政破綻した際に、東京都から支援のため派遣された都職員は、その後に都を辞職して夕張市長となりました。その鈴木市長は現在2期目ですが、まだ30代の若い方です。
同市長は一昨年、夕張支線を廃止する代わりに、廃線後の市内交通整備にJR北海道が協力するよう要請しました。道内では、廃止反対が当たり前とする首長が多い中、先手を打って好条件を引き出そうとした同市長の手腕は高く評価されるべきと思います。
その代替交通整備の核が、ここ南清水沢駅付近です。
同市長が挙げた条件は、この南清水沢駅付近に拠点複合施設を整備するために、鉄道用地の一部を譲渡すること。さらに、その整備のための費用7億5千万円の拠出と人材を派遣することでした。
同拠点複合施設には、夕張市の機能、医療機関、それにバス路線の結節点の機能などを持たせるとしています。夕張市民は、市内各地から同地へのバス網が整備されるうえ、バスで同地に行けば夕張市が市民向けに提供するサービスをまとめて利用できるという構想です。
この条件に対して、JR北海道も北海道も賛同する形で、廃止が決まったようです。

南清水沢駅は、上の写真をみても、現地に行っても、そのような場所とは思えません。しかし、駅舎の前には、夕張市を貫く幹線道路の国道452号線が通り、スーパーが2件、幼稚園から高校までの学校も徒歩圏内です。そのうえ平坦地ですので、山あいの狭い土地が多い夕張市において、拠点施設を作るのに適していることが感じられます。


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沼ノ沢駅は、レストラン併設の駅舎。線路の先にやや広い敷地があるのは、かつて北炭真谷地炭鉱専用線があったため。
南清水沢駅から4. 0キロで沼ノ沢駅があります。夕張支線の5駅目で、次の駅は石勝線の本線との分岐駅となります。
駅舎には、本格派と思われる洋食レストランが併設されています。
駅舎を抜けると、ホームまで少し間があります。その間には家庭菜園のような畑があり、かつて貨車を留置していたホーム跡もあります。ホームの先にも空き地があります。
このように、小駅にもかかわらず駅構内が広いのは、かつてこの駅から北炭真谷地専用炭鉱線がでていたためです。4. 5キロ先の真谷地炭鉱までを結んでいた路線で、昭和41(1966)年までは旅客営業をしていたものの、その後は昭和62(1987)年の廃止まで貨物専用線となっていました。

以上、前回と今回でみてきたように、5駅のうち3駅はかつて石炭のための専用線があった駅でした。さらに、かつての夕張駅は炭鉱から専用鉄道を使うことなく直接出荷する駅でした。つまり、純粋な旅客駅は、南清水沢駅だけという路線でした。夕張炭鉱とともに栄枯盛衰を歩んだ路線ということが理解できます。


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夕張支線が分岐する新夕張駅は、かつて紅葉山駅だったことから、駅前に当時の駅名標が建っている。
最後は、石勝線の特急列車が停まる新夕張駅です。
かつて、国鉄夕張線だった時代には紅葉山駅という駅名で、いまの夕張支線が本線でした。また、この駅から2駅だけの登川支線もありました。その支線の中間駅の駅名は「楓」だったので、紅葉山~楓は日本一美しい隣接駅名ともいわれていました。
その後、道東への短絡線として石勝線が造られた際、駅は一段高いところに移設されています。かつての紅葉山駅の跡はいま「道の駅 夕張メロード」となり、駅前すぐのところにあります。「紅葉山」時代の駅名標はいま、新夕張駅前の広場の一角に建っています。
夕張市が南清水沢駅付近に拠点複合施設をつくり、交通の結節点とする構想は前述しましたが、同所からのバスが新夕張駅前に入ることができるよう、駅前広場への取付道路をバス対応に改良するそうです。

廃止まで1年をきった石勝線新夕張~夕張間…通称・夕張支線を、ザッと見てきました。一日わずか5往復の列車ですので、各駅をめぐるのはなかなか大変です。でも、それぞれに特徴ある駅ということがご理解いただけたのではないでしょうか。
この区間には、石勝線からのアクセスのほか、札幌から夕張への高速バス「ゆうばり号」も一日3往復あります。これがなかなか良い時間に設定されていますので、駅舎めぐりには列車で往復するのではなく、片道でバスを利用することも検討すると良いでしょう。


掲載日:2018年04月27日


●伊藤 博康(いとう ひろやす)
(有)鉄道フォーラム代表。愛知県犬山市生まれ。パソコン通信NIFTY-Serve草創期から鉄道フォーラムに関わり、1992年から運営責任者。(有)鉄道フォーラムを設立後、独自サーバでサービスを継続中。著書に「日本の “珍々”踏切」(東邦出版)「鉄道ファンのためのトレインビューホテル」「鉄道名所の事典」(東京堂出版)がある。現在、中日新聞社「達人に訊け」でもコラムを連載中。