大学生の旅行と情報探索に関する定性調査
大学生の「旅行に行きたい」をアシストするためのアプローチ方法について
- ①検索ワードで大事なのは「旅行」ではなく、「観光」!
- ②「 旅の目的」→「情報探索」のプロセスに即した商品の提案を!
- ③「 人の写った」・「写真や映像」で旅の楽しさが喚起される構造を!
1.調査目的
日本旅行総研では、このたび、山梨学院大学現代ビジネス学部日高優一郎ゼミと共同で、「大学生の旅行と情報探索に関する定性調査」を実施しました。大学生を中心として若者の旅行離れが進んでいるといわれる一方、若者の旅行意欲は高いことを伺わせる調査結果もあります。本調査は、大学生へのアプローチ方法を再検討することで、彼らの旅行への意欲を刺激することにつながるのではないか、彼らの旅行に関する意思決定プロセスに注目することで、その手がかりを得ることができるのではないかと考え、インタビュー調査をもとに大学生の旅行への意欲を高めるプロモーション策を考察したものです。
2.分析結果
本調査では、大学生が、どのような旅行をしているのかだけでなく、①どのように情報探索を行っているのか―どのような媒体をどのように使い分けているのか―、②どのような点を重視しているのか、③彼らが惹かれる情報とはどのような情報かという3つの点について、計20件の旅行案件に関する半構造化インタビューを行い検討した。
テーマ1-1大学生は、雑誌・スマホ・PC、それぞれの媒体の用途や順番を使い分けている!
インタビューの結果から、各媒体の用途に一定のパターンがあることが分かった。雑誌は旅行の目的を決める際に、スマホは例えば検索キーワードの発見など、詳しく情報探索するきっかけを提供するちょっと明確な情報取得のため、PCは雑誌、スマホで分からなかったことを調べたり、申込みや最終確認を正確に行うために使うことが明らかになった。
同時に、各媒体を使用する順番にも一定のパターンが見出された。①スマホ→PC→雑誌というパターンでは、スマホは調べる入り口、PCで詳しく、深く調べ、雑誌を旅行の決め手として使っていた。②スマホ→PCというパターンでは、スマホは調べるためだけに用い、予約の手続きを間違いなく済ませるためにPCを用いていた。③雑誌→スマホというパターンでは、検索ワード発見のために雑誌を参考にしてスマホで検討を行っていた。
テーマ1-2旅行目的を喚起している観光情報サイトは頻繁に閲覧されている!
閲覧したサイト、使った雑誌名についてインタビューを行ったところ、日本旅行等々旅行会社系のサイトはあまり見ていないものの、「るるぶ」や「じゃらん」、「まっぷる」などのサイトは頻繁に閲覧されていることが分かった。
考えられる理由のひとつとしては、ツアーやホテルの予約しかできないサイトの場合、旅の目的が喚起されるわけではなく、他のサイトで観光地やグルメの情報を調べた上で、改めて旅行会社のサイトに戻って予約しなければならず、どうしても二度手間になる。つまり、情報探索から意思決定に至るプロセスが途切れてしまう。これが、観光情報サイトの閲覧頻度が高い理由になっているのではないかと考えられる。
テーマ2検索ワードで大事なのは「旅行」ではなく、「観光」!
インタビューの結果から、ほとんどの事案で地名が検索ワードになり、宿泊先、ご当地グルメが検索ワードとして使われることが分かった。検索に際して、「旅行」で検索する事案は少ない一方で、「観光」が検索ワードとして高い頻度で使われていることが明らかになった。
テーマ3大学生はたしかに「価格」重視。しかしそれだけでは「旅行に行こう」にはならない!
どのような点に惹かれるのかという点に関する項目では、やはり「価格」を重視する姿勢が伺えた。その一方で、価格だけで旅行に行くというわけではないことも浮き彫りにされた。「写真や画像」に惹かれている人が多く、特に、「人が写っている」ものであれば伝わる旅の楽しさは高くなり、更に、それが「知人や友人のもの」の場合にはより一層高まることが伺えた。夏場の花火などの「限定」にも惹かれることが分かった。他方、「文字説明」や、写真や画像でも「人の写っていないもの」の場合には、旅の楽しさの伝達能力に欠けるため、「自由度が低い」「堅苦しい」というイメージにつながってしまうことが示された。
3.提言
①検索ワードは「観光」でHIT!
旅行に行こうという大学生がネット検索する際には「旅行」ではなく「観光」で多く検索しているため、観光と検索してヒットするようなSEO対策を行うことで、大学生の旅行に対する意欲を捉えることにつながるのではないかと考える。
②「旅の目的」→「検索」のプロセスに即した商品の提案を!
商品の説明や検索だけができても、大学生の旅行の意欲を刺激することにはつながらず、結果として認知されずに機会ロスになる。旅行情報サイトが多くアクセスされているのは、これらのサイトが、大学生が旅への目的を形成しやすい構造になっているからだと思われる。大学生は、媒体やサイトの使い分けを行って情報探索しているという結果から、旅の目的から情報探索までのプロセスに即したサイトやアプリの構造を構築することで、意思決定のプロセスを途切れさせることなくアシストすることになるものと思われる。好例としては、http://www.rikkadokka.com/(リッカドッカ)が挙げられよう。
③「人の写った」・「写真や映像」で旅の楽しさが喚起される構造を!
大学生が惹かれる情報とは、文字情報や商品説明ではなく、写真や映像、特に人の写った写真であることが示された。人が写った写真が掲載されていないと楽しさが伝わりにくい。例えば、実際に旅行に行った人の写真が掲載されていれば楽しさの伝達は飛躍的に向上し、また、さまざまなパターンごとに掲載されていることで、どのような旅行なのかイメージが容易になり、「旅行に行きたい」気持ちをアシストすることにつながるのではないかと思われる。
- ○方法:対面式、またはメールを用いた半構造化インタビュー調査
- ○対象:合計16名の大学生(合計20件の旅行事案)
- ○時期:2014年11月
- ○資料1:大学生の旅行と情報探索に関する定性調査
大学生の「旅行に行きたい」をアシストするため のアプローチ方法について(PDF:888KB)