モロッコ周遊紀行 ー 五感を揺さぶる色彩の迷宮へ <前編>

「モロッコ」と聞いて何を思い浮かべるだろうか。砂漠や路地が入り組んだ迷路のような市場、色とりどりの雑貨やスパイス。いつかは訪れてみたい憧れの地とする人も多いだろう。 2030年のワールド杯開催を控え、ますます注目の集まるモロッコ。はじめて訪れたモロッコは、エキゾチックな魅力と温かなおもてなしの心、そして色彩に溢れた国であった。 視界を埋め尽くす幻想的な青、どこまでも続く黄金の砂丘、そして夕日に燃える赤い都。五感を揺さぶる感動の旅路を、前編・後編にわたり皆さまと分かち合いたい。

2026年2月27日 更新 766 view Clip追加

※情報は記事公開時点のものです。営業時間や休業日など掲載情報から変更になる可能性があるため、お出かけの際は事前に公式HPなどでご確認ください。

モロッコへの旅路

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地図を広げると、スペインの真下、アフリカ北西端にモロッコは位置している。地中海と大西洋、そして広大なサハラ砂漠に囲まれており、多様な自然に富む国だということがわかる。現在、日本からの直行便の運航がないため、乗り継ぎを含め20時間以上の長旅となる。行き方は中東経由やヨーロッパ経由など様々なルートがあるが、今回はエミレーツ航空でドバイにて乗り継ぎをし、カサブランカに降り立った。

出発前にモロッコの事を色々調べた。産業面では、世界シェアトップを誇るリン鉱石の生産のほか、豊かな農業や漁業、そして世界中の旅人を魅了する観光業が経済を支えている。アラブ、ベルベル、そしてフランスの文化が混ざり合い、多様で奥深い魅力がある。

【モロッコ基本情報】
• 面積:710,850 ㎢(日本の約2倍)
• 人口:約3,682万人
• 首都:ラバト
• 時差:日本より-8時間(ラマダン時は-9時間)
• 通貨:モロッコディルハム(MAD)
• 公用語:アラビア語、ベルベル語
(都市部では第二公用語としてフランス語もよく使われ、観光地では英語も使用される。)
• 国教:イスラム教

ラバト

王宮の街で感じた、モロッコの“静”

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モロッコの玄関口であるカサブランカ・ムハンマド5世国際空港から車を1時間30分ほど走らせると、首都ラバトへたどり着く。大西洋を臨むこの街には、長距離フライトの疲れを忘れさせてくれるような、心地よい開放感があった。
驚くことに、ラバトは都市全体が世界遺産に登録されている。政治の中心地でありながら喧騒はなく、街には穏やかな風が流れていた。
ブーレグレグ川を往来する伝統的なボートに揺られれば、水上から「ウダイヤのカスバ(城塞)」を眺めることができる。
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モロッコでは旧市街のことを「メディナ」と呼ぶ。他都市と比べて小規模なラバトのメディナは、モロッコ初心者が歩くのにちょうどいい。地元の人々で賑わうスーク(市場)には、新鮮な果物から絨毯、日用品までが並び、現地の日常が色濃く溶け込んでいた。
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12世紀に世界最大のモスクを目指しながら、王の急逝により未完成のまま残されたハッサンの塔。塔の前に並ぶ無数の石柱は、かつての壮大な夢の跡を今に伝えている。完成されることのなかったその姿は、かえって完璧な造形物よりも深く、この国の長い歴史を静かに語りかけてくるようだった。
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歴史の重みに触れた後は、マリーナにあるシーフードレストランへ。新鮮な海鮮料理とともに、モロッコ産の「グレーワイン(白とロゼの中間色)」を。その繊細なマリアージュは、旅の始まりを優雅に彩ってくれた。

シャウエン

青に包まれる、山あいの街

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山道を越えて辿り着いたシャウエンは、一転して別世界だった。 壁も、階段も、扉も。視界のすべてが「青」に染まっている。
なぜこの街が青くなったのか、その理由は諸説ありはっきりとは分かっていない。「スペインの宗教運動から逃れたユダヤ人が、神聖な色として青く塗った」という説もあれば、「虫除けのため」、あるいは「主婦の思いつきが広まっただけ」という説まで。しかし、この「シャウエンブルー」が、今も世界中の人々を魅了してやまないのは紛れもない事実だ。
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ハマン広場にあるカフェの屋上テラスから眺める夕暮れ。街が青からオレンジへと表情を変えていく様は、息をのむ美しさであった。
日中は映え写真を求める観光客で溢れるメディナも、早朝は驚くほど静かだ。迷路のような路地を歩くたび、時間がゆっくりと流れていくのを感じる。
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宿泊したのは、伝統的な邸宅を再現したリアド風のホテル。細部にまで装飾が施された空間は、どこか温かみに満ちていた。ここではスパイス香るタジン料理と名物のヤギのチーズを。全く臭みのないチーズの美味しさに、思わず翌朝もリピートしてしまったほどだ。

フェズ

迷宮都市で、職人の手仕事に触れる

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フェズのメディナに入ると、空気が一変した。 9世紀から続く「世界最大級の迷宮都市」。そこには車両が入れないほど細い路地が網の目のように張り巡らされ、人々の熱気、音、そして独特の匂いが混じり合っていた。
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「タンネリ(皮なめし工場)」では、中世から変わらない製法が今も息づいている。そこは観光用に整えられた場所ではない、泥臭い“本物”の現場であった。牛やラクダの皮を天然素材で色付けする様子を屋上から見学する。漂う強烈な匂いに思わず顔をしかめてしまうが、入口で手渡されたミントの葉を鼻に詰め、爽やかな香りで紛らわす。その姿は実に滑稽だが、これこそが五感で楽しむモロッコの洗礼とも言えるだろう。
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路地を進めば、カンカンと金属を叩く音が響く。11世紀から続く銅細工の技術。後継者不足により消滅の危機にあるというが、職人の情熱が紡ぐ伝統をいつまでも応援したいと願わずにいられない。
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この街では、200年前の邸宅を改装した「リアド」にも立ち寄った。ミントティーの歓迎を受け一歩足を踏み入れれば、豪華なタイルや噴水が広がる別世界に圧倒される。屋上テラスから一望するフェズの街並みは圧巻だ。もともと3軒だったものを1つにつなげた建物だそうで、壁に刻まれた異なる家紋を辿れば、かつての住人たちの記憶が鮮やかによみがえるようだ。
時を止めたような邸宅リアドで、王族の気分に浸る至福のひとときだった。
迷い込んでしまいそうなこの街では、むしろ迷うこと自体が正しい過ごし方なのかもしれない。フェズで私は、モロッコという国の深い奥行きを知った。
👉 後編では、旅はいよいよサハラへ。風景も、心も、大きく変わっていく。
― Morocco Concierge N

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