エルフード
何億年も前の「海」に触れる
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フェズから砂漠へ向かう道中、北アフリカの屋根とも称される「アトラス山脈」を越えていく。車窓にはグランドキャニオンを彷彿とさせるジズ渓谷が広がる。数万年の歳月が刻んだ地層と、オアシスの緑。その鮮やかな対比には、モロッコの自然が持つ多様性を改めて教えられる。 乾いた大地に広がるエルフードは、サハラ砂漠への入り口であり、かつて海だった場所。
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ハンマーを片手に道端に転がる石を割れば、何億年も前のアンモナイトの化石が驚くほど簡単に姿を現し、遠い地球の記憶を呼び覚ましてくれる。
メルズーガ砂漠
サハラ砂漠で過ごす、忘れられない一夜
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エルフードで4WDに乗り換え、地平線を追いかけること約1時間。ついに、待ち焦がれたメルズーガ砂漠がその姿を現した。ゴツゴツとした岩の世界は終わりを告げ、視界はどこまでも続く柔らかくさらさらとした砂の丘へと変わった。
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サハラが黄金色に染まる黄昏時。かつての旅人たちがそうしたようにラクダの背に跨り、砂丘を進んでいく。聞こえてくるのは、ラクダが砂を踏みしめる規則正しい足音と、乾いた風の音だけ。文明の音から完全に切り離された静寂の中、揺れるリズムに身を任せていると、まるで時間という概念が消えてしまったかのような神聖な感覚に包まれる。
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夕日に照らされ、風紋がくっきりと浮かび上がる砂の波。その圧倒的な美しさを前にして、ただ言葉を失い、自然が描く芸術に見惚れるしかなかった。
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日が沈み、あたりが深い藍色に包まれる頃、今夜の宿となるキャンプテントに到着した。
しかし、そこには「砂漠=過酷」という先入観を鮮やかに覆す、ラグジュアリーな別世界が待っていた。
しかし、そこには「砂漠=過酷」という先入観を鮮やかに覆す、ラグジュアリーな別世界が待っていた。
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テント内には、ふかふかのベッドに電気、暖房、さらにはお湯の出るシャワーまで完備されている。まさに、砂漠の真ん中に突如現れた宮殿だ。
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ベルベル民族の力強い音楽に迎えられ、アラビアンナイトの宴が始まる。スパイスの香る豪華なフルコースを堪能した後は、満月の光に照らされた砂漠へと繰り出した。パチパチとはぜる焚き火の炎を見つめながら過ごす、至福の月光浴。人工の光が一切ないこの世界では、夜空が驚くほど近く、まるで月や星々が自分を包み込んでくれるかのような錯覚に陥る。
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そして翌朝。水平線から昇る朝日が砂の世界を一気にオレンジ色に染め上げた瞬間。旅の疲れさえも光に溶けていくような、静かで贅沢な感動が胸に押し寄せた。
マラケシュ
五感が目覚める、赤い都
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旅の終盤、たどり着いたマラケシュは、再び活気と刺激に満ちた街であった。街の景観を守るために街全体が淡いサーモンピンクに統一されているマラケシュは、その美しさから「Red City(赤い街)」と呼ばれている。
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メディナの路地は、ランプや絨毯の色、スパイスの香り、行き交う人々の熱気で溢れていた。砂漠で“整った”感覚が、この喧騒によって再び目覚め、ゆっくりと日常へと引き戻されていくのを感じる。
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路地の先には、世界遺産ジャマ・エル・フナ広場が広がる。無数の屋台から立ち上る煙と喧騒。クスクスや壺煮込み料理「タンジーヤ」、搾りたてのフルーツジュース。ここには、モロッコで味わいたい食のすべてが揃っている。
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街歩きに疲れたら、1910年の面影を宿す「バシャコーヒー(Bacha Coffee)」で一息つきたい。宮殿を彷彿とさせる豪華絢爛な空間で、200種類を超える豆の中からその日の気分にあわせて選ぶ一杯。それはまさに『究極の非日常』を味わう贅沢なひとときだ。
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そして、マジョレル庭園も忘れられない場所のひとつ。天を突くヤシの木やサボテンの緑と、世界中から集められた植物。その色彩に映える建物の群青色は、画家ジャック・マジョレルが考案し、今も愛され続ける「マジョレル・ブルー」だ。ここが『美の聖域』と呼ばれるのは、単なる庭園を超えた物語があるからだろう。
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庭園に溢れる光と色彩を堪能した後は、庭園に併設する「イブ・サンローラン・マラケシュ美術館」へ。一転して静寂と暗闇に包まれた空間には、モードの帝王が人生をかけて生み出した作品が浮かび上がり、至高の輝きを放っていた。彼がいかにモロッコを愛していたか。その熱量が静かに、けれど力強く伝わってくる。彼の美意識に触れるひとときは、私の感性を心地よく刺激してくれた。
エピローグ:旅を終えて
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振り返れば、ラバトの静かな風、シャウエンの幻想的な青、フェズの職人の手仕事、サハラ砂漠の神聖な静寂、そしてマラケシュの赤い熱気……。モロッコという国が見せてくれたのは、想像をはるかに超える多様な色彩の世界だった。
刺激的な喧騒と、心洗われる静寂。その両極端な魅力が、不思議とひとつの記憶として心地よく調和している。 「エキゾチック」という言葉だけでは語り尽くせない、この国の奥行き。 そのすべてが日常に戻った今も、私の感性を鮮やかに彩り続けている。
次の休暇、まだ見ぬ自分に出会うために。あなたも色彩の国・モロッコの扉を叩いてみてはいかがだろうか。
刺激的な喧騒と、心洗われる静寂。その両極端な魅力が、不思議とひとつの記憶として心地よく調和している。 「エキゾチック」という言葉だけでは語り尽くせない、この国の奥行き。 そのすべてが日常に戻った今も、私の感性を鮮やかに彩り続けている。
次の休暇、まだ見ぬ自分に出会うために。あなたも色彩の国・モロッコの扉を叩いてみてはいかがだろうか。
― Morocco Concierge N
↓前編はこちら↓
モロッコ周遊紀行 ー 五感を揺さぶる色彩の迷宮へ<前編>
「モロッコ」と聞いて何を思い浮かべるだろうか。砂漠や路地が入り組んだ迷路のような市場、色とりどりの雑貨やスパイス。いつかは訪れてみたい憧れの地とする人も多いだろう。 2030年のワールド杯開催を控え、ますます注目の集まるモロッコ。はじめて訪れたモロッコは、エキゾチックな魅力と温かなおもてなしの心、そして色彩に溢れた国であった。 視界を埋め尽くす幻想的な青、どこまでも続く黄金の砂丘、そして夕日に燃える赤い都。五感を揺さぶる感動の旅路を、前編・後編にわたり皆さまと分かち合いたい。