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汽車旅ひろば - ひろやすの汽車旅コラム

汽車旅ひろば


  • ひろやすの汽車旅コラム
"鉄道フォーラム"代表の伊藤博康氏による鉄道コラム。
毎回幅広いテーマの中から、「乗ってみたい」「知って良かった」「へぇ~」な汽車旅関連の話題をご紹介します。お楽しみに!

最短の鉄道と、もと空港駅のいま [No.H021]

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駐機中の飛行機が間近に見られる芝山鉄道。
芝山千代田駅ホームから撮影したもの。
電車は、京成電鉄の車両が直通している。
日本一営業距離が短い旅客鉄道会社は、どこか知っていますか?
芝山鉄道という、全線わずか2.2kmの鉄道です。
平成14年10月に営業を開始しましたので、開業からまだ10年が経ったところです。
ちなみに、同線開通以前は、2.7kmの紀州鉄道が最短路線でした。

さて、その芝山鉄道ですが、千葉県にあります。
駅は芝山千代田駅・東成田駅の2駅だけで、そのうち芝山千代田駅は行き止まりの高架ホームの駅、東成田駅は京成東成田線と共用しています。
列車は、全て京成成田駅から直通運転をしていて、芝山鉄道線内だけの列車はありません。…ということで、ほとんど京成電鉄の東成田線を延長したような鉄道線です。
ただし、PASMO,Suica等のICカードは使えません。

ところで、芝山鉄道の最大の特徴は、車内からも芝山千代田駅ホームからも飛行機がよく見えることでしょう。
それもそのはず、東成田駅は空港敷地内の地下にあり、芝山千代田駅に面した道路を渡ったところも空港の敷地なのです。芝山鉄道の筆頭株主は成田国際空港(株)で、出資比率が68.4%と圧倒的なことからも、この立地は理解できることでしょう。

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東成田駅では、柱の合間から別のホームが見える
広告看板の上にある駅名標は「なりたくうこう」
古の賑わいは、いまどこへやら…
ところで、芝山鉄道は日中40分に1本というローカル線でありながら、東成田駅は随分と大きな駅設備をもっています。
例えば、使用しているのは1面2線のホームだけなのに、柱の向こう側にはもう一つホームがあります。でも、暗くて使用しているようには見えません。それでありながら、壁面には広告看板があり、ホーム上にはベンチがあったりします。
なんだか変だなと思って駅名標に目をこらすと、そこには「なりたくうこう」と書いてあります…
そうなんです、この東成田駅は成田空港が開港した昭和53年に、成田空港駅として開業した駅なのです。当時は成田空港に新幹線が乗り入れる計画だったため、京成電鉄は旅客ターミナル隣接の駅予定地に乗り入れることができず、代わりに少し離れたこの地に駅を造ったのです。
成田空港が開業したときに初代スカイライナーが乗り入れていたのが、いま暗がりになっているホームなのです。

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東成田駅の改札前にある地上への階段。
横幅の広さが利用車が多かったことを伝えている。
右奥の案内表示から、空港第2ビル駅への通路がある。
東成田駅の改札口を出ると閑散としていて、たいていは誰もいません。それにも関わらず、割と大きな地下空間となっていて、階段も広い横幅があります。エスカレーターもついているのですが、いまは動いていません。
この設備も、成田空港利用者が大勢行き来することを前提に造られています。当時は、この階段を昇ったところから、空港連絡バスに乗り換えて旅客ターミナルにアクセスしていました。
いまも、東成田駅にはバス乗り場があり、第1ターミナルと第2ターミナルを結ぶ無料の連絡バスが巡回しています。また、階段の右奥に見える案内表示のところから地下通路ができていて、500m歩くと第2ターミナルにある空港第2ビル駅に行けるようになっています。

紆余曲折の末にいまがある成田空港は、鉄道アクセスの面でも一筋縄でない歴史があり、その遺構がこのように残されているわけです。
成田に行く機会があれば、日本一短い旅客鉄道線である芝山鉄道に乗るとともに、旧・成田空港駅である東成田駅にも降りてみてはいかがでしょうか。



掲載日:2013年01月18日


●伊藤 博康(いとう ひろやす)
(有)鉄道フォーラム代表。愛知県犬山市生まれ。パソコン通信NIFTY-Serve草創期から鉄道フォーラムに関わり、1992年から運営責任者。(有)鉄道フォーラムを設立後、独自サーバでサービスを継続中。著書に「日本の “珍々”踏切」(東邦出版)「鉄道ファンのためのトレインビューホテル」「鉄道名所の事典」(東京堂出版)がある。現在、中日新聞社「達人に訊け」でもコラムを連載中。