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汽車旅ひろば - ひろやすの汽車旅コラム

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"鉄道フォーラム"代表の伊藤博康氏による鉄道コラム。
毎回幅広いテーマの中から、「乗ってみたい」「知って良かった」「へぇ〜」な汽車旅関連の話題をご紹介します。お楽しみに!

鉄道日本一(7) 最短営業距離のモノレールと地下鉄 [No.H293]

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営業距離が日本最短の鉄道は、鞍馬寺のケーブルカー。鞍馬山鋼索鉄道という線名で、営業距離はわずか0. 2km。
先月、日本最短の普通鉄道は千葉県の芝山鉄道だと記しました。
その際「普通鉄道」と耳慣れない単語を使用しています。
ということは、それ以外の鉄道にはさらに短い営業距離があるということが予想できますよね。そんな鉄道を、今回紹介します。
営業距離が日本最短の鉄道は、右の写真にある鞍馬寺のケーブルカーです。国土交通省鉄道局が監修する「鉄道要覧」には、鞍馬寺(宗教法人)と記してあります。つまり、お寺さんが運行しているケーブルカーです。
わずか200mの路線ですが、ケーブルカーですので高低差があります。参拝者が本堂を訪れる際の手助けをしている鉄道です。
詳しくは、2016年11月18日に公開した「国内最短の鉄道に乗る…京都・鞍馬山ケーブル [No.H214]」に記してありますので、ご覧下さい。


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「上野動物園のモノレール」もれっきとした鉄道で、モノレール最短の営業距離となる0. 3km。
左の写真は、「上野動物園のモノレール」です。動物園内なので遊戯施設かと思いがちですが、これがれっきとした鉄道なのです。しかも、東京都交通局が運行しています。
昭和32年から走りはじめている「上野懸垂線」という線名のモノレールで、営業距離は0. 3km…つまり300mです。前記、鞍馬寺よりは長いものの、平坦な土地ですから歩いてもさほど大変ではありません。そんなところに何故、東京都交通局が路線を持っているのでしょうか。開業年度にその秘密があります。
戦後、高度経済成長が続くと、次第に道路に自動車が増えていきました。それまで、大都市の大きな道路には路面電車が走っていて、まさに庶民の足として活躍していました。
ところが、新進気鋭の自動車からみると、路面電車は渋滞を起こす元凶と受け取られてしまいます。そこで、大都市では路面を使わない近未来の公共交通手段を模索しました。その有力候補とみられていたのがモノレールだったのです。
ところが、道路行政とモノレール建設についてなかなか折り合いが付きません。その間に地下鉄網が次第に充実していったことから、東京・横浜・名古屋・大阪などでは路面電車が順次撤退することになり、モノレールも陽の目を見なかったのでした。
当時、将来の有力候補として実験線が造られたのが、東京では上野動物園、名古屋では東山動植物園でした。東山動植物園も懸垂式でしたが、昭和39年から10年間営業しただけで廃止され、いまは園内に車両が保存されています。一方、上野動物園ではそのまま今日まで、車両更新もしつつ運行が続けられているというわけです。
ちなみに、れっきとした鉄道だけに、鉄道線の乗り潰しを目指す人の中には、このモノレールに乗るだけのために上野動物園に入園する人もいるようです。


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広島の新交通システム「アストラムライン」は、市街地の一区間だけが地下鉄で、日本最短の地下鉄営業線となっている。
右の写真は、広島市の中心部に地下駅をもつ新交通システム「アストラムライン」の始発となる本通駅です。次は県庁前駅となっていますが、その駅間0. 3kmだけが地下鉄の扱いとなっています。
広島新交通1号線という線名ですが、同線名はその先の地上部分も同じです。ところが、前述の「鉄道要覧」をみると、この1区間だけは「鉄道(案内軌条式鉄道)」の部に掲載されていて、他の18. 1kmは「軌道(案内軌条式)」の部に記載されています。
つまり、一駅間0. 3kmだけは鉄道線で、他の18. 1kmは軌道線…つまり路面電車の扱いなのです。ただし(案内軌条式)となっているところから、路面電車ではなく新交通システムであることがわかります。
これは、おそらく補助金の関係で別々の申請がされたものと思われ、実際には何の区別もなく全線18. 4kmが一体的に運営されています。運賃も距離で決められていますので、利用者にとっては鉄道でも軌道でも関係ありません。
でも、許認可としては日本最短の地下鉄という、いささか得心しかねるところがある日本一の鉄道となっているのです。


掲載日:2018年07月13日


●伊藤 博康(いとう ひろやす)
(有)鉄道フォーラム代表。愛知県犬山市生まれ。パソコン通信NIFTY-Serve草創期から鉄道フォーラムに関わり、1992年から運営責任者。(有)鉄道フォーラムを設立後、独自サーバでサービスを継続中。著書に「日本の “珍々”踏切」(東邦出版)「鉄道ファンのためのトレインビューホテル」「鉄道名所の事典」(東京堂出版)がある。現在、中日新聞社「達人に訊け」でもコラムを連載中。