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"鉄道フォーラム"代表の伊藤博康氏による鉄道コラム。
毎回幅広いテーマの中から、「乗ってみたい」「知って良かった」「へぇ~」な汽車旅関連の話題をご紹介します。お楽しみに!
毎回幅広いテーマの中から、「乗ってみたい」「知って良かった」「へぇ~」な汽車旅関連の話題をご紹介します。お楽しみに!
国内最短の鉄道に乗る…京都・鞍馬山ケーブル [No.H214]
日本には多くの鉄道がありますが、そのなかで、もっとも営業距離が短いのは、京都市北部に位置する鞍馬寺のケーブルカーです。
ケーブルカーは鋼索鉄道という鉄道の一種です。いま、全国に22社のケーブルカー運行事業者があります。その中でも、最も短いケーブルカーということになります。その営業距離は、山門~多宝塔間わずか200メートル。東海道新幹線は16両編成で約400mですから、新幹線ホームの先端から中ほどまでの距離ということになります。
それくらい歩けば…と思いますよね。実際、鞍馬寺のケーブルカーのりばにも、歩くことを勧める案内がされています。とはいえ、ご覧の通りの急斜面を登るので、両駅間の高低差は90メートルもあります。建物1階の高さが3mとすると、30階建てのビルに登る計算になるわけです。
鞍馬寺は、その名の通り寺院です。かつて、幼名・牛若丸と名乗っていた頃の源義経が修行に励んだところであり、鞍馬天狗でも知られているところです。かなり急峻な山全体が信仰の対象となっていて、本殿も山の中腹にあります。このような場所に立地するため、足腰が弱い方でもお参りしていただけるようにと、1957(昭和32)年に造られたものです。
実際、ケーブルカー区間は九十九折参道と呼ばれる、急斜面を折り返し折り返し登っていくようなところですので、若い方でも息を切らして登っています。これに対して、ケーブルカー経由は新参道と呼ばれていて、足で登る高さがかなり少なくっています。なお、両参道は本殿金堂の少し手前で合流します。
この鞍馬寺のケーブルカーは、鞍馬寺という宗教法人が運行しています。それも、前述の通り参詣者の便を図るための乗りものですから、運賃は無料です。
ただし、のりば前の待合室には左写真の券売機があり、一人200円、小学生100円を入れることになっています。これは寄進であり、鞍馬山内の諸堂・施設の維持に使用するとしています。このため、券売機が発券するのは「御寄進票」で、寄進したことを証明するこの票を持っていると、お礼としてケーブルカーに片道乗車できるという仕組みです。
このようなことから、券売機から出てくる「御寄進票」はケーブルカーに乗る際に回収されますが別途、紙製の「花びら」が置いてあり、こちらを乗車記念として持ち帰ることができるようにしてあります。
ケーブルカーは通常20分間隔で運転されていて、所要はわずか2分です。山の麓にある山門駅側を基準に運転していて、始発は山門駅8時40分発、最終は山門駅16時30分発ですが、陽の長い6-8月は17時00分発が最終となります。山上側の多宝塔駅は、山門駅発車の5分後が発車時刻となっています。
改札が始まり、ケーブルカーに乗るためにホームへ行くと、思ったよりも急な傾斜なことに驚きます。そのホームの先に聳えるように伸びる線路敷きの先には、山上側の多宝塔駅が見えています。200メートル全体が直線なので、見えて当たり前なのですが、なんだかとても近い感じがします。しかし、平行する九十九折参道を登ると、直線200メートルという距離が、急斜面では如何に遠いかがよく判るのです。
右の写真をクリックして大きくしたうえで見なおすと、線路にレールがないことがわかります。鉄輪ではなく、ゴムタイヤ式の車両なのです。また、その軌道敷きが新しいことも見て取れることでしょう。2015年のゴールデンウィーク後から運行をやめて施設を改修し、今年(2016年)5月20日から運転を再開したためです。
車両に「牛若號IV」と記してあるのですが、今回が3回目の改修で車両としては4代目ということを示しています。
険しい山のなかに造られた寺院ですので、訪れるには暖かい時期よりも、涼しくなった今ごろからが良いでしょう。ただし、京都市内よりさらに冷え込む地で、厳寒期には雪も積もりますので、物見遊山で行くと思わぬ目にあう可能性があります。その点に、ご注意下さいね。
場所は、叡山電鉄鞍馬駅から徒歩約5分と便利です。入山には、ケーブルカーとは別に300円が必要です。ケーブルカーを降りて本殿金堂に参ったら、そのまま奥の院へと進んで西門に抜けると、貴船神社の近くです。この場合、帰路は叡山電鉄の貴船口からが便利です。これだけ歩くと、しっかりと足腰が鍛えられますが…
掲載日:2016年11月18日
ケーブルカーは鋼索鉄道という鉄道の一種です。いま、全国に22社のケーブルカー運行事業者があります。その中でも、最も短いケーブルカーということになります。その営業距離は、山門~多宝塔間わずか200メートル。東海道新幹線は16両編成で約400mですから、新幹線ホームの先端から中ほどまでの距離ということになります。
それくらい歩けば…と思いますよね。実際、鞍馬寺のケーブルカーのりばにも、歩くことを勧める案内がされています。とはいえ、ご覧の通りの急斜面を登るので、両駅間の高低差は90メートルもあります。建物1階の高さが3mとすると、30階建てのビルに登る計算になるわけです。
鞍馬寺は、その名の通り寺院です。かつて、幼名・牛若丸と名乗っていた頃の源義経が修行に励んだところであり、鞍馬天狗でも知られているところです。かなり急峻な山全体が信仰の対象となっていて、本殿も山の中腹にあります。このような場所に立地するため、足腰が弱い方でもお参りしていただけるようにと、1957(昭和32)年に造られたものです。
実際、ケーブルカー区間は九十九折参道と呼ばれる、急斜面を折り返し折り返し登っていくようなところですので、若い方でも息を切らして登っています。これに対して、ケーブルカー経由は新参道と呼ばれていて、足で登る高さがかなり少なくっています。なお、両参道は本殿金堂の少し手前で合流します。
この鞍馬寺のケーブルカーは、鞍馬寺という宗教法人が運行しています。それも、前述の通り参詣者の便を図るための乗りものですから、運賃は無料です。
ただし、のりば前の待合室には左写真の券売機があり、一人200円、小学生100円を入れることになっています。これは寄進であり、鞍馬山内の諸堂・施設の維持に使用するとしています。このため、券売機が発券するのは「御寄進票」で、寄進したことを証明するこの票を持っていると、お礼としてケーブルカーに片道乗車できるという仕組みです。
このようなことから、券売機から出てくる「御寄進票」はケーブルカーに乗る際に回収されますが別途、紙製の「花びら」が置いてあり、こちらを乗車記念として持ち帰ることができるようにしてあります。
ケーブルカーは通常20分間隔で運転されていて、所要はわずか2分です。山の麓にある山門駅側を基準に運転していて、始発は山門駅8時40分発、最終は山門駅16時30分発ですが、陽の長い6-8月は17時00分発が最終となります。山上側の多宝塔駅は、山門駅発車の5分後が発車時刻となっています。
改札が始まり、ケーブルカーに乗るためにホームへ行くと、思ったよりも急な傾斜なことに驚きます。そのホームの先に聳えるように伸びる線路敷きの先には、山上側の多宝塔駅が見えています。200メートル全体が直線なので、見えて当たり前なのですが、なんだかとても近い感じがします。しかし、平行する九十九折参道を登ると、直線200メートルという距離が、急斜面では如何に遠いかがよく判るのです。
右の写真をクリックして大きくしたうえで見なおすと、線路にレールがないことがわかります。鉄輪ではなく、ゴムタイヤ式の車両なのです。また、その軌道敷きが新しいことも見て取れることでしょう。2015年のゴールデンウィーク後から運行をやめて施設を改修し、今年(2016年)5月20日から運転を再開したためです。
車両に「牛若號IV」と記してあるのですが、今回が3回目の改修で車両としては4代目ということを示しています。
険しい山のなかに造られた寺院ですので、訪れるには暖かい時期よりも、涼しくなった今ごろからが良いでしょう。ただし、京都市内よりさらに冷え込む地で、厳寒期には雪も積もりますので、物見遊山で行くと思わぬ目にあう可能性があります。その点に、ご注意下さいね。
場所は、叡山電鉄鞍馬駅から徒歩約5分と便利です。入山には、ケーブルカーとは別に300円が必要です。ケーブルカーを降りて本殿金堂に参ったら、そのまま奥の院へと進んで西門に抜けると、貴船神社の近くです。この場合、帰路は叡山電鉄の貴船口からが便利です。これだけ歩くと、しっかりと足腰が鍛えられますが…
掲載日:2016年11月18日
●伊藤 博康(いとう ひろやす)
(有)鉄道フォーラム代表。愛知県犬山市生まれ。パソコン通信NIFTY-Serve草創期から鉄道フォーラムに関わり、1992年から運営責任者。(有)鉄道フォーラムを設立後、独自サーバでサービスを継続中。著書に「日本の “珍々”踏切」(東邦出版)「鉄道ファンのためのトレインビューホテル」「鉄道名所の事典」(東京堂出版)がある。現在、中日新聞社「達人に訊け」でもコラムを連載中。
(有)鉄道フォーラム代表。愛知県犬山市生まれ。パソコン通信NIFTY-Serve草創期から鉄道フォーラムに関わり、1992年から運営責任者。(有)鉄道フォーラムを設立後、独自サーバでサービスを継続中。著書に「日本の “珍々”踏切」(東邦出版)「鉄道ファンのためのトレインビューホテル」「鉄道名所の事典」(東京堂出版)がある。現在、中日新聞社「達人に訊け」でもコラムを連載中。