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汽車旅ひろば - ひろやすの汽車旅コラム

汽車旅ひろば


  • ひろやすの汽車旅コラム
"鉄道フォーラム"代表の伊藤博康氏による鉄道コラム。
毎回幅広いテーマの中から、「乗ってみたい」「知って良かった」「へぇ〜」な汽車旅関連の話題をご紹介します。お楽しみに!

鉄道の父「井上勝」像でつながる山陰本線萩駅と東京駅 [No.H290]

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観光列車「○○のはなし」の着発時には、萩市観光案内所の方々のお見送りがある。
先週、山陰本線萩駅を取り上げました。
その際、萩駅の様子について「普通列車が思いだした頃にやってくるだけ」と記しました。実際、定期列車は普通列車が一日8往復あるだけ。しかも、9時43分発の上り萩行が行ってしまうと、次の列車は13時24分発の下り長門市駅行まで列車がありません。
このような駅だけに、多くの時間はひっそりと静まりかえっていますが、週末に走る観光列車「○○のはなし」がやってくるときには、一瞬だけ華やいだ雰囲気になります。観光列車ですから車内は華やいでいますし、乗降客もいます。さらに、駅の管理をしている観光案内所の方々が見送りのためにホームに出て、手旗を振ってくれるのです。

ちなみに、「○○のはなし」は「まるまるのはなし」と読みます。珍しい列車名ですが、萩〜下関・新下関間を走る列車のため、代表的な都市の最初の読みである萩(は)・長門(な)・下関(し)を組み合わせての命名だそうです。
快速列車ですが全車指定席で、列車内は観光列車用に改造されたやや広めの座席は快適です。車窓からは日本海の絶景が楽しめ、車内のカウンターでは沿線の名産品やお酒などが売られていて、気軽にのんびりと汽車旅を楽しむことができる列車です。


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萩駅舎内にある「鉄道の父・井上勝」記念室には、井上勝に関する資料などが展示されている。
萩駅舎内は「萩市自然と歴史の展示館」になっていることを前回記しましたが、そのうち玄関を入って左側の部屋は「鉄道の父・井上勝」記念室になっています。
井上勝に関する資料が展示されているほか、閉塞器などの鉄道関連機器が展示され、萩駅開業時と山陰本線全通時の貴重な映像もモニターで放映されています。
その入口すぐ右手、左の写真では右下に4つの円筒形のものがあり、なにやら飾りが掘られています。これは何かと思ったら、かつて東京駅前に建っていた「鉄道の父・井上勝銅像」の台座に使われていた飾り石だそうです。
この銅像は、東京駅の開業に合わせて大正3(1914)年に建立されたそうです。しかし、戦時中に金属供出のため撤去されたあと、台座の飾り石6つが東京・神田にあった交通博物館に保管されたそうです。その交通博物館が閉館となることが決まった際に、これらの飾り石を萩市が譲り受け、いまは萩駅舎で展示しているということです。
ちなみに、写真で見えるのは4つだけですが、その先に直方体の外縁飾り石があり、駅舎玄関脇にほぼ立方体の外縁飾り石があります。


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東京駅前に改めて設置された二代目の銅像「正二位勲一等子爵井上勝君像」は、東京駅丸の内駅前広場の北西端にある。
東京駅前の井上勝像は、終戦間近の昭和19(1944)年に撤去されたのですが、それから15年を経た昭和34(1959)年に、没後50年を記念して二代目が建立されました。
その後、昭和から平成にかけて東京駅前に建っていました。しかし、戦時中の空襲で2階建てになった東京駅舎を、再び創建当時の3階建ての姿に復元工事することが決まった平成19(2007)年にまたまた撤去されました。
その東京駅舎復元工事が無事完成し、丸の内駅前整備も進んだ平成29(2017)年12月に、二代目の銅像が駅前に戻ってきました。なんと、10年ぶりのことです。

右の写真は、戻ってきてから写した写真です。
東京駅丸の内北口を出て、まっすぐに地上を進んだ先、駅前広場と新丸ビルの間を通る道の手前の角に建っています。そこには「正二位勲一等子爵井上勝君像」と記されています。
初代銅像の台座飾り石は萩駅舎に、二代目銅像は東京駅丸の内側駅前広場にそれぞれ展示され、いつでも自由に見られるようになったのです。どちらも観光客が次々にやってくるところではなく、落ち着いた一角となっています。
それぞれの駅に行く機会に、是非見てきて下さいね。


掲載日:2018年06月22日


●伊藤 博康(いとう ひろやす)
(有)鉄道フォーラム代表。愛知県犬山市生まれ。パソコン通信NIFTY-Serve草創期から鉄道フォーラムに関わり、1992年から運営責任者。(有)鉄道フォーラムを設立後、独自サーバでサービスを継続中。著書に「日本の “珍々”踏切」(東邦出版)「鉄道ファンのためのトレインビューホテル」「鉄道名所の事典」(東京堂出版)がある。現在、中日新聞社「達人に訊け」でもコラムを連載中。