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汽車旅ひろば - ひろやすの汽車旅コラム

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"鉄道フォーラム"代表の伊藤博康氏による鉄道コラム。
毎回幅広いテーマの中から、「乗ってみたい」「知って良かった」「へぇ~」な汽車旅関連の話題をご紹介します。お楽しみに!

3月16日ダイヤ改正で消える国鉄車両2形式 [No.H027]

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登場当時の塗装にもどって人気の200系K47編成
外見は0系に似ているが、
仕様をみると、多くの新機軸を取り入れている
2月8日付当コラムから、3月16日のJRグループダイヤ改正で消え去る車両を紹介してきました。今回は、その最終回となります。
2月8日付コラムでは、JR東日本初の特急電車が消えるということを記しましたが、同時に、国鉄時代に製造されてJR東日本に引き継がれた車両も消えていきます。
それが、新幹線200系とクモハ123-1です。

新幹線200系は、かつて東海道新幹線を走っていた0系を彷彿させる団子っ鼻のような先頭形状がユニークな車両です。東海道新幹線が青色をシンボルカラーにしているのに対して、200系は初の東北・上越新幹線用車両として緑色をシンボルカラーにしました。これは、国鉄として新製したときからの色です。
JRになって塗装変更されていましたが、ここでご覧いただくK47編成は再び登場当時の塗装に戻っていて、いま人気です。

外見は0系そっくりですが、鋼製の0系に対して200系はアルミ車体であり、その後に登場するJR製新幹線車両の先駆的存在といえます。また、雪の多い地域を走ることから、ボディマウント構造という床下にもカバーをかけたような構造にして、雪の付着を減らす対応をしました。これらの点を考えると、0系と似ているのは外観だけといって良いかも知れません。
200系は、東北・上越新幹線が開業した1982年に両線唯一の形式として営業をはじめて30年あまり、バブル期も含めて活躍してきました。しかし、後継となるE2系・E5系等の増備が進み、ついにこのダイヤ改正で定期列車から消えることになったわけです。
なお、ダイヤ改正後も「さよなら200系」など名残を惜しむ臨時列車がしばらく走るようです。

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「ミニエコー」のヘッドマークも誇らしげに、
塩尻~辰野を単行で往復しているクモハ123-1
もとは特急「あずさ」も走っていた線路だ
もう一形式、3月16日のダイヤ改正で消えるのは、クモハ123-1という、前述の200系に比べると知名度の低い車両です。
123系という形式は、国鉄からJRになる頃に余剰となっていた荷物電車などを改造した、両運転台の直流近郊形電車の総称で、種車はいろいろとあります。JR西日本は宇部・小野田線等で運転していて、JR東海もかつて身延線で運転していました。
しかし、JR東日本に属する123系は、もともとクモハ123-1がたった1両だけです。その1両が活躍しているのは、中央本線の塩尻~辰野間18.2kmです。この区間だけを専門に往復することから、「ミニエコー」の愛称がつけられています。
この区間は中央本線なのですが、日中はこの電車が2時間に1本程度単行で走る閑散線区です。しかし、途中にある小野駅・信濃川島駅ともに、ホームの長さはかなり長くなっています。線形もなかなかのものです。それでありながら、滅多に列車が走らないのは、塩尻~岡谷間に塩嶺(えんれい)トンネルができて、ほとんどの列車はそちらを抜けるようになったためです。なにせ、塩尻~岡谷間は塩嶺トンネル経由だと11.7kmなのに対して、塩尻~辰野~岡谷間は27.7kmもあります。いかに大回りをしているかが判りますよね。でも、明治期に開通した中央本線だけに、当時の技術では塩嶺トンネルの掘削は厳しかったのでした。
なお、辰野~岡谷は飯田線からJR東海の列車がそのまま乗り入れています。JR東日本の列車も、松本から塩尻・岡谷経由で辰野にいたり、飯田線に直通しています。つまり、塩尻~辰野間だけが取り残されてしまった感じで、わずか1両でも輸送できる程度の利用者数となってしまったわけです。

新幹線200系とクモハ123-1、華々しさは全く違いますが、それぞれに使命を全うして消えていくダイヤ改正となります。



掲載日:2013年03月01日


●伊藤 博康(いとう ひろやす)
(有)鉄道フォーラム代表。愛知県犬山市生まれ。パソコン通信NIFTY-Serve草創期から鉄道フォーラムに関わり、1992年から運営責任者。(有)鉄道フォーラムを設立後、独自サーバでサービスを継続中。著書に「日本の “珍々”踏切」(東邦出版)「鉄道ファンのためのトレインビューホテル」「鉄道名所の事典」(東京堂出版)がある。現在、中日新聞社「達人に訊け」でもコラムを連載中。