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汽車旅ひろば - ひろやすの汽車旅コラム

汽車旅ひろば


  • ひろやすの汽車旅コラム
"鉄道フォーラム"代表の伊藤博康氏による鉄道コラム。
毎回幅広いテーマの中から、「乗ってみたい」「知って良かった」「へぇ~」な汽車旅関連の話題をご紹介します。お楽しみに!

京急大師線港町駅が、音楽の駅に… [No.H034]

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港町駅南口改札前にある、港町十三番地の歌碑
美空ひばりさんの写真は、原寸大の148cmとか。
改札機の右上にチラと見える茶色い部分が、
階段側面にとりつけられた音符のオブジェ。
京浜急行電鉄(京急)の発祥は大師線ということをご存知でしょうか? 川崎大師への参詣客輸送を目的に設立された鉄道が発展して、いまの京急になったのです。当時は、大師電気鉄道という社名でした。
大師線は京急川崎駅で京急本線から分岐する盲腸線ですが、10分毎に電車があり便利です。その最初の停車駅は、京急川崎駅から1.2kmの距離にある港町駅です。「みなとちょう」と読みます。
戦前、この駅は「コロムビア前駅」と名乗っていました。日本コロムビア川崎工場がこの駅すぐ北側にあったのです。同工場は日本のレコード発祥の地としても知られています。昭和時代のヒット曲の多くが、この工場でプレスされて全国に出荷されていたのでした。そのなかには、昭和32年に発売された美空ひばりさんのヒット曲「港町十三番地」がありました。
当時の日本コロムビア本社は港町九番地にあり、歌詞の内容は川崎工場があった五番地付近らしいのですが、ゴロの良さから十三番地にしたといわれているそうです。このような背景がある駅のため、京急と日本コロムビア、それに地元の川崎市が参加して、今年3月2日に港町駅を一新しました。

港町駅南口の改札機横には、美空ひばりさんの等身大写真とともに、港町十三番地の歌詞が飾られています。美空ひばりさんの手形とサインも入っています。その下には、同歌のレコードジャケットのイラスト、上には当時の日本コロムビア川崎工場の俯瞰写真があります。これらの歌碑の中にボタンがあり、押すと美空ひばりさんの歌声が流れるようにもなっています。
改札口を入ると京急川崎方面のホームに続きますが、その手前には川崎大師方面へのホームに行くための跨線橋への階段があります。この階段の側面には音符のオブジェがつけられています。また、改札口から真っ直ぐに進んだエレベーターホールには、

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川崎大師方面のホーム壁面に描かれた楽譜。
港町十三番地の音符だ。背景色とイラストは、
同曲のレコードジャケットをイメージしている。
    音楽のまち・かわさき
    レコード発祥の地
    アナログからデジタルへ

と記したパネルがあり、それぞれに、日本コロムビアが排出してきたアーティスト、シングルレコードのジャケット、SPレコードのレーベル面など、昭和世代には懐かしい内容が飾られています。
さらに、川崎大師方面のホームの壁には、港町十三番地の楽譜が描かれています。約19mもの長さの楽譜で、背景の水色や一緒に描かれている船とカモメは、港町十三番地のレコードジャケットをイメージしたものだそうです。


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マンションの一室を使用しているDAISHIめぐりうむ
大師線ゆかりの3社に関する歴史などを展示している。
港町駅北口からすぐの場所で入場無料。
港町駅北口を出ると、そこが日本コロムビア川崎工場の跡地です。いまは京急電鉄が建てた高層マンション「Riverie(リヴァリエ)」が立ち並んでいます。その一棟に、昨年3月からマンションギャラリー「DAISHI めぐりうむ」ができています。副題は、『大師線を巡る3社の歴史みゅうじあむ」です。
3社というのは、京急電鉄と日本コロムビア、それに隣接地にある味の素です。港町駅の隣駅となる鈴木駅は、味の素の創業者の名前をつけた駅で、鈴木駅になる前は味の素前駅という駅名だったといいます。
完成前のマンションの一室をミュージアムとして公開しているようで、中央に京急電鉄、その周りを味の素と日本コロムビアの展示パネルが並び、日本コロムビアのコーナーには、世界初のCDや大正時代の蓄音機なども展示されています。入場無料で毎日11~17時の開設。毎週火曜日と水曜日が定休日となっています。港町駅まで行ったら、ついでに寄ってみるとよいでしょう。


掲載日:2013年04月19日


●伊藤 博康(いとう ひろやす)
(有)鉄道フォーラム代表。愛知県犬山市生まれ。パソコン通信NIFTY-Serve草創期から鉄道フォーラムに関わり、1992年から運営責任者。(有)鉄道フォーラムを設立後、独自サーバでサービスを継続中。著書に「日本の “珍々”踏切」(東邦出版)「鉄道ファンのためのトレインビューホテル」「鉄道名所の事典」(東京堂出版)がある。現在、中日新聞社「達人に訊け」でもコラムを連載中。