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汽車旅ひろば - ひろやすの汽車旅コラム

汽車旅ひろば


  • ひろやすの汽車旅コラム
"鉄道フォーラム"代表の伊藤博康氏による鉄道コラム。
毎回幅広いテーマの中から、「乗ってみたい」「知って良かった」「へぇ~」な汽車旅関連の話題をご紹介します。お楽しみに!

横浜の廃線跡「東横フラワー緑道」を歩く [No.H039]

東急東横線は、渋谷で東京メトロ副都心線と直結されて大いに注目されていますよね。その東横線の横浜側は、2004(平成16)年2月1日からみなとみらい21線に乗り入れています。それ以前は、東横線横浜駅が地上にあり、桜木町まで根岸線と併走する高架線だったことを覚えている方も多いと思います。では、その廃線跡はどうなっているのでしょう?

横浜~桜木町はまだ整備中です。一方、横浜~反町~東白楽は、2011(平成23)年4月16日に「東横フラワー緑道」として遊歩道となりました。この区間は、横浜駅の地下化にあわせて地下線になった区間です。京急神奈川駅から西に向かう旧東海道に足を踏み入れると、すぐに交差する遊歩道があります。これが「東横フラワー緑道」で、地下を東横線が走っています。JR横浜駅の"きた西口"からでも500m弱のところで、歩いても10分かかりません。
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高島山トンネルは、横浜駅近くの地上トンネル。
複線の廃線跡なので、歩道としては十二分に広い。
意外なほど多くの方々が行き来している。
では、「東横フラワー緑道」を反町側に歩きましょう。ちょっとした坂になっていて、その先にはトンネルの入口が見えます。高島山トンネルという、横浜駅から一番近い地上の鉄道トンネルでした。いまは内部に照明が入り、舗装もされて安全に歩けます。ただし、6:00~21:30だけ通行ができ、夜間は前後にある柵が閉められます。複線の廃線跡トンネルですから、幅が広いです。そこを意外なほど多くの方々が歩いています。東横線が走っていた頃に、これらの方々は山の端を迂回されていたのでしょうか…? なにはともあれ、廃線跡初心者でも気軽に、かつ安全に訪ねることができる都会の廃線跡トンネルです。


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反町駅の瀟洒な駅舎と、現存する元東横線の高架橋。
ガッチリとした橋桁と橋脚に圧倒される。
しかし、橋の上は人が歩くだけ…
高島山トンネルを過ぎると短い堀割があり、すぐに反町駅に着きます。いまは地下駅となった反町駅ですが、瀟洒な地上駅舎が建っています。その東白楽側は土地が低くなっていて、すぐ下を国道1号線が横切っています。東横線はそこを立派な高架橋で跨いでいたのですが、なんと、その高架橋がそのまま残されています。「東横フラワー緑道」の一部として、陸橋として活用されているわけです。すぐ西側に並行する陸橋があるのですが、その構造の差は歴然としています。撤去費用は相当額になるでしょうが、よくぞ残してくれたと思わず拍手したくなります。とはいえ、拍手を送る相手はそこにいないのですが…

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美しい花が咲き誇る、春先の「東横フラワー緑道」。
線路をイメージしたオブジェクトも所々にある。
ゆったりした右カーブが、いかにも廃線跡だ。

反町を過ぎると、廃線跡は緩やかな右カーブを描いた遊歩道となっています。ここから遊歩道は地上となっているため、交差する道路がいくつかあります。しかし、さほど交通量が多いわけではないので、歩く分には十分に安全です。フラワー緑道と名づけられただけあって、木々や花壇などが整備され、線路をイメージしたオブジェクトもあります。三々五々と散策したり、子どもを遊ばせるお母さんがいたり、花壇の縁に腰掛けてちょっと一休みというOL風の方がいたりと、みなさん気ままに利用しています。
この先、上り坂の左カーブとなって「東横フラワー緑道」はお終いです。坂になっているのは、すぐ下が地上に出てくる現役の東横線だからです。地上駅のままの東白楽駅はここから300mくらいで、もう目と鼻の先です。「東横フラワー緑道」を含む横浜駅~東白楽駅間は、東横線で2.1kmです。夕方に、ちょっと寄り道する感覚で楽しめる廃線跡として、また散歩コースとしてもお勧めです。




掲載日:2013年05月24日


●伊藤 博康(いとう ひろやす)
(有)鉄道フォーラム代表。愛知県犬山市生まれ。パソコン通信NIFTY-Serve草創期から鉄道フォーラムに関わり、1992年から運営責任者。(有)鉄道フォーラムを設立後、独自サーバでサービスを継続中。著書に「日本の “珍々”踏切」(東邦出版)「鉄道ファンのためのトレインビューホテル」「鉄道名所の事典」(東京堂出版)がある。現在、中日新聞社「達人に訊け」でもコラムを連載中。