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"鉄道フォーラム"代表の伊藤博康氏による鉄道コラム。
毎回幅広いテーマの中から、「乗ってみたい」「知って良かった」「へぇ~」な汽車旅関連の話題をご紹介します。お楽しみに!
毎回幅広いテーマの中から、「乗ってみたい」「知って良かった」「へぇ~」な汽車旅関連の話題をご紹介します。お楽しみに!
出雲へ行くなら、トロッコ列車も楽しもう [No.H046]
今年60年ぶりの遷宮をした出雲大社。その足である一畑電車について、5月31日、6月14日、6月28日とこれまでに3回紹介してきました。これだけ楽しみ、さらに松江市内の観光をすれば十分堪能できます。でも、せっかく出雲まで来たなら、さらに欲張って楽しみたいところ。それも、今度は中国山地のある奥出雲はいかがでしょう。
山陰本線の松江駅と出雲市駅のあいだに、宍道(しんじ)駅があります。宍道湖の南に位置していますので、北岸を走る一畑電車とは反対側になります。その宍道駅から、中国山地を越えて広島県に入ったところにある備後落合(びんごおちあい)駅まで、木次(きすき)線という81.9kmのローカル線があります。以前は急行も走っていたのですが、いまでは直通の普通列車はわずかに1往復。途中の木次駅から豊後落合駅の区間列車でも1日わずかに3往復という、超ローカル線です。それだけに、乗るのは大変ですが、気持ちの良い山間部を縫って走るところを楽しめます。
この木次線木次~備後落合に、トロッコ列車「奥出雲おろち号」が走っています。
春から秋にかけての週末を中心に運転していますが、夏休み中は毎日運転となるうえ、週末には出雲市発となるので、さらに乗りやすいのです。主要駅の時刻は次の通りです。
※( )内は特定日だけ
木次始発の日は、出雲市駅から宍道駅で乗り換えて木次駅まで行きます。
出雲市8:40→8:59宍道9:10→9:43木次。
今年で運転開始から15年となる「奥出雲おろち号」は、機関車が2両の12系客車を牽引します。その備後落合側の客車が、風を受けて乗ることができるトロッコ車両となっています。全車指定席ですので、事前に「みどりの窓口」で乗車券とともに指定席券510円を買う必要があります。なお、夏休み時期であれば、乗車券を「青春18きっぷ」にすることも可能です。ちなみに、出雲市~宍道~備後落合の片道切符は1,890円ですから、往復するなら5回(人)で11,500円(2,300円/日)の「青春18きっぷ」を利用した方がお得になるわけです。
さて、この「奥出雲おろち号」の一番の見どころは、出雲坂根(いずもさかね)の三段スイッチバックです。坂を登ってきた出雲坂根駅は行き止まりで、ここから後進してさらに坂を登ります。延々1kmほど後進すると、また行き止まりとなります。ここで再び前進してさらに坂を登るという具合です。3段階全てが坂道という本来の意味での三段スイッチバックは、日本ではこの出雲坂根とJR九州豊肥線立野、それに箱根登山鉄道にあるだけです。
ちなみに、出雲坂根駅の次の三井野原駅が木次線でもっとも高いところに位置する駅で、標高は726mです。その駅間の営業距離は6.4kmですが、地図上で両駅間の直線距離を測ると、わずか1.3kmです。これほど大回りをして標高差を克服しているわけです。並行する道路ももちろん真っ直ぐには登れず、国道314号線は2重ループを描いてこの標高差を克服しています。車窓から見えるこの国道のループは、奥出雲おろちループと名づけられています。
ところで、出雲坂根駅には、延命水と呼ばれるわき水があります。「奥出雲おろち号」は上下列車とも同駅で8分停車しますので、ここで持参のペットボトルに延命水を汲んだりできますよ。
さて、木次線沿線には、もう一つよく知られた名物があります。それが、亀嵩(かめだけ)駅にある扇屋の亀嵩そば。店主こだわりの手打ち出雲そばです。駅舎内の旧駅長室が店舗なのですが、この駅舎が松本清張作の小説「砂の器」に登場し、さらに同映画のロケ地にもなっています。店内に入ると、天井に色紙がズラリと並んでいます。もちろん、味もバツグン。筆者は10年ほど前に一度食べ、今年改めて食べたのですが、その美味しさには参りました…はい。できれば、途中下車をして食べていきたい名品です。でも、1日3往復、「奥出雲おろち号」が走る日でも1日4往復しか列車が無い駅ですから、なかなかお店で食べることもできません。そんなときに嬉しいのは、「弁当そば」です。亀嵩駅に停車する1時間以上前に予約しておくと、ホームに持ってきて下さるのです。1人前500円です。お店で食べる割子そばは3段重ねで680円ですから、それと比べても量は決して多くありません。それだけに、食事時間ではなくても、間食としてその味を楽しめます。詳しくは、扇屋そば公式サイト内の左下にある「弁当そばの注文について」をご参照下さい。
掲載日:2013年07月12日
山陰本線の松江駅と出雲市駅のあいだに、宍道(しんじ)駅があります。宍道湖の南に位置していますので、北岸を走る一畑電車とは反対側になります。その宍道駅から、中国山地を越えて広島県に入ったところにある備後落合(びんごおちあい)駅まで、木次(きすき)線という81.9kmのローカル線があります。以前は急行も走っていたのですが、いまでは直通の普通列車はわずかに1往復。途中の木次駅から豊後落合駅の区間列車でも1日わずかに3往復という、超ローカル線です。それだけに、乗るのは大変ですが、気持ちの良い山間部を縫って走るところを楽しめます。
この木次線木次~備後落合に、トロッコ列車「奥出雲おろち号」が走っています。
春から秋にかけての週末を中心に運転していますが、夏休み中は毎日運転となるうえ、週末には出雲市発となるので、さらに乗りやすいのです。主要駅の時刻は次の通りです。
(出雲市) | 木 次 | 備後落合 | |
(8:45→) | 10:07 | → | 12:24 |
15:02 | ← | 12:45 |
木次始発の日は、出雲市駅から宍道駅で乗り換えて木次駅まで行きます。
出雲市8:40→8:59宍道9:10→9:43木次。
今年で運転開始から15年となる「奥出雲おろち号」は、機関車が2両の12系客車を牽引します。その備後落合側の客車が、風を受けて乗ることができるトロッコ車両となっています。全車指定席ですので、事前に「みどりの窓口」で乗車券とともに指定席券510円を買う必要があります。なお、夏休み時期であれば、乗車券を「青春18きっぷ」にすることも可能です。ちなみに、出雲市~宍道~備後落合の片道切符は1,890円ですから、往復するなら5回(人)で11,500円(2,300円/日)の「青春18きっぷ」を利用した方がお得になるわけです。
さて、この「奥出雲おろち号」の一番の見どころは、出雲坂根(いずもさかね)の三段スイッチバックです。坂を登ってきた出雲坂根駅は行き止まりで、ここから後進してさらに坂を登ります。延々1kmほど後進すると、また行き止まりとなります。ここで再び前進してさらに坂を登るという具合です。3段階全てが坂道という本来の意味での三段スイッチバックは、日本ではこの出雲坂根とJR九州豊肥線立野、それに箱根登山鉄道にあるだけです。
ちなみに、出雲坂根駅の次の三井野原駅が木次線でもっとも高いところに位置する駅で、標高は726mです。その駅間の営業距離は6.4kmですが、地図上で両駅間の直線距離を測ると、わずか1.3kmです。これほど大回りをして標高差を克服しているわけです。並行する道路ももちろん真っ直ぐには登れず、国道314号線は2重ループを描いてこの標高差を克服しています。車窓から見えるこの国道のループは、奥出雲おろちループと名づけられています。
ところで、出雲坂根駅には、延命水と呼ばれるわき水があります。「奥出雲おろち号」は上下列車とも同駅で8分停車しますので、ここで持参のペットボトルに延命水を汲んだりできますよ。
さて、木次線沿線には、もう一つよく知られた名物があります。それが、亀嵩(かめだけ)駅にある扇屋の亀嵩そば。店主こだわりの手打ち出雲そばです。駅舎内の旧駅長室が店舗なのですが、この駅舎が松本清張作の小説「砂の器」に登場し、さらに同映画のロケ地にもなっています。店内に入ると、天井に色紙がズラリと並んでいます。もちろん、味もバツグン。筆者は10年ほど前に一度食べ、今年改めて食べたのですが、その美味しさには参りました…はい。できれば、途中下車をして食べていきたい名品です。でも、1日3往復、「奥出雲おろち号」が走る日でも1日4往復しか列車が無い駅ですから、なかなかお店で食べることもできません。そんなときに嬉しいのは、「弁当そば」です。亀嵩駅に停車する1時間以上前に予約しておくと、ホームに持ってきて下さるのです。1人前500円です。お店で食べる割子そばは3段重ねで680円ですから、それと比べても量は決して多くありません。それだけに、食事時間ではなくても、間食としてその味を楽しめます。詳しくは、扇屋そば公式サイト内の左下にある「弁当そばの注文について」をご参照下さい。
掲載日:2013年07月12日
●伊藤 博康(いとう ひろやす)
(有)鉄道フォーラム代表。愛知県犬山市生まれ。パソコン通信NIFTY-Serve草創期から鉄道フォーラムに関わり、1992年から運営責任者。(有)鉄道フォーラムを設立後、独自サーバでサービスを継続中。著書に「日本の “珍々”踏切」(東邦出版)「鉄道ファンのためのトレインビューホテル」「鉄道名所の事典」(東京堂出版)がある。現在、中日新聞社「達人に訊け」でもコラムを連載中。
(有)鉄道フォーラム代表。愛知県犬山市生まれ。パソコン通信NIFTY-Serve草創期から鉄道フォーラムに関わり、1992年から運営責任者。(有)鉄道フォーラムを設立後、独自サーバでサービスを継続中。著書に「日本の “珍々”踏切」(東邦出版)「鉄道ファンのためのトレインビューホテル」「鉄道名所の事典」(東京堂出版)がある。現在、中日新聞社「達人に訊け」でもコラムを連載中。
備後落合側(写真手前)が窓のないトロッコ車。
15周年のテールマークが右側につけられている。