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汽車旅ひろば - ひろやすの汽車旅コラム

汽車旅ひろば


  • ひろやすの汽車旅コラム
"鉄道フォーラム"代表の伊藤博康氏による鉄道コラム。
毎回幅広いテーマの中から、「乗ってみたい」「知って良かった」「へぇ~」な汽車旅関連の話題をご紹介します。お楽しみに!

日本最北端の線路は、駅を突き抜ける!? [No.H051]

今年は特に暑い夏となっていますが、みなさんいかがお過ごしでしょうか。この時期には、やはり涼しいところの話題がいいですよね… というわけで、今回は北海道、それも最北端の稚内の話題です。
稚内は、よく知られている通り日本最北端の市で、最北端の鉄道駅が稚内駅です。ここまでくると、さすがに夏でも涼しくて、この執筆時点でお盆休み期間中の稚内の気温予想をみると、最高気温は25℃、最低気温は毎日20℃を下回っています。8月10日は本州と四国の計4個所で40℃を越え、翌11日朝の東京の最低気温は30℃だったと報道されましたが、それと同じ日本とは思えない涼しさです。

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稚内駅ホーム先にある「最北端の線路」の碑
JR最南端の駅「西大山駅」と並んで記されているのは、
途切れることなく線路がつながっているためです。


さて、その稚内駅は行き止まりとなっていて、線路はホームの先で終わっています。宗谷本線は、いわゆる盲腸線ということを目で見て実感できます。途切れた線路の先は駅舎なのですが、ガラス張りとなっています。その駅舎側から線路をみると、右の写真の光景となっています。「最北端の線路」ということを改めて実感させてくれる存在です。
ところが、この立派な碑は、記念撮影をするにはいささか不向きな場所となってしまっています。
そのため…なのかどうか判りませんが、よく見ると駅舎内の床には線路の延長らしきレールを示す線が2本あり、それが駅舎を突き抜けて、駅前広場に続いています。

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稚内駅を突き抜けて続く、線路の終端。
ここが正真正銘、日本最北端の線路。
でも、鉄道車両はぜったいにここまで来ない。


なんだか面白いことをしているな…と駅前に出てみたら、なんと、そこにも線路がありました。その傍らには「日本最北端の線路」の碑も… ちゃんと車止めもあります。
もちろん、鉄道車両がここまで来ることはありません。万一来てしまったら、駅舎は粉々に砕けてしまいます。でも、こういう遊び心はいいですよね。駅舎内で列車待ちをしている方々に迷惑をかけることなく、自由に記念写真を撮ることもできます。





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サハリン(樺太)への鉄道連絡船の記憶を止める、
北防波堤ドームは、稚内の観光名所のひとつ。
ローマ調の造りは、日本ばなれしたデザインだ。
ちなみに、この駅前から北に向かって、以前は線路が続いていました。
稚泊(ちはく)連絡船と呼ばれる、稚内とサハリン(旧・樺太)の大泊(コルサコフ)を結ぶ鉄道連絡船が運行されていたため、その港まで線路が延びていたのです。稚内駅構内の扱いでしたが、稚内桟橋駅があった時代もありました。この航路は、太平洋戦争終結まで運行されていたといいます。わずか400mほどの距離で、いまは線路が撤去されています。その空いた場所には、道の駅「わっかない」ができました。これまた、日本最北の「道の駅」です。
その道の駅の先には海があるわけですが、その境目には右の写真にある立派な建築物があります。昭和6年に着工し昭和11年に完成したという、北防波堤ドームです。先述した稚泊連絡船の発着所として建設されたもので、土木学会により土木遺産に、北海道からも北海道遺産に指定されています。ローマ調の円い柱が並んだ景観は秀逸で、稚内まで行ったらこれも是非見ておきたいところです。
なお、稚内駅のホームには、北緯45度25分03秒と記された看板や、「枕崎駅より3,126.1km」といった主だった地からの鉄道線での距離の書かれた看板などもあります。
日本の鉄道を乗って楽しむ方であれば、一度は必ず行きたい駅ですよね。



掲載日:2013年08月16日


●伊藤 博康(いとう ひろやす)
(有)鉄道フォーラム代表。愛知県犬山市生まれ。パソコン通信NIFTY-Serve草創期から鉄道フォーラムに関わり、1992年から運営責任者。(有)鉄道フォーラムを設立後、独自サーバでサービスを継続中。著書に「日本の “珍々”踏切」(東邦出版)「鉄道ファンのためのトレインビューホテル」「鉄道名所の事典」(東京堂出版)がある。現在、中日新聞社「達人に訊け」でもコラムを連載中。