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汽車旅ひろば - ひろやすの汽車旅コラム

汽車旅ひろば


  • ひろやすの汽車旅コラム
"鉄道フォーラム"代表の伊藤博康氏による鉄道コラム。
毎回幅広いテーマの中から、「乗ってみたい」「知って良かった」「へぇ~」な汽車旅関連の話題をご紹介します。お楽しみに!

故・やなせたかし氏の世界が広がる土佐くろしお鉄道 [No.H061]

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あかおか駅の高架下には、
ごめん・なはり線のキャラクターが一堂に会している。
一体一体眺めていると、気持ちがしだいに和んでくる。


「アンパンマン」の作者として知られる、漫画家のやなせたかし氏が、去る10月13日に亡くなられました。
同氏の出身地である高知県を走る第三セクター、土佐くろしお鉄道には「ごめん・なはり線」と「中村線・宿毛線」の2路線がありますが、それぞれのキャラクターは、やなせたかし氏作のものです。特に出身地に近い「ごめん・なはり線」は、全20駅の一駅ごとに同氏考案の駅キャラクターがあり、訪れる人を楽しませています。
たとえば、JRとの乗り換え駅「御免」のキャラクターは「ごめんえきお君」。その隣駅で、路面電車の土佐電鉄と乗り換えられる駅「御免町」のキャラクターは「ごめんまちこさん」…といった具合に、終着駅「奈半利」の「なはりこちゃん」まで、個性豊かなやなせワールドが続くわけです。
これらが一堂に会しているのが、後免駅から5駅目となるあかおか駅の高架下です。高架上のホームから降りたところに、ズラッと20体が並んでいます。なかなか壮観ですが、その一体一体をゆっくり眺めていると、次第に気持ちが和んでくるところは、流石にやなせ氏の作品ならではでしょう。ちなみに、同駅のキャラクターは「あかおかえきんさん」です。赤岡町にお住まいだった絵師の弘瀬金蔵が"絵金"と呼ばれていたことから、このキャラクター名になったそうです。


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駅キャラクターは、駅名標にも描かれているほか、
列車のヘッドマークにもなっている。
ヘッドマークのキャラクターは、車両により異なる。
各駅のキャラクターは、各駅の目立つところに使用されています。その多くは、駅名標の下に描かれていますが、なかには、あかおか駅のキャラクター群と同じように、立体キャラクターがホームや駅前などに置かれていたりします。また、各列車のヘッドマークとしてもキャラクターが活躍していて、一目で土佐くろしお鉄道の車両だということがわかります。
ところで、ごめん・なはり線は、かつて高知鉄道が開設し、後に土佐電鉄となった安芸線の御免~安芸間26.8kmが元になっています。同線は、国鉄阿佐線が建設されることになって、1974(昭和49)年に廃止となりました。ところが、国鉄の赤字線廃止の方針から建設は中断され、そのまま放置されかけました。そこで第三セクター鉄道として建設を継続することとし、2002(平成14)年7月1日に開業にこぎ着けた路線です。いまも同線の山側には、安芸線だった頃の廃線跡があちこちに見られます。左の写真の車両に記されている「10TH ANNIVERSARY」は、その開業10周年を祝うものです。
やなせたかし氏は、御免~御免町間のすぐ線路脇にある御免野田小学校の卒業生で、高校は高知市内まで通ったとのことですので、1947(昭和22)年に上京されるまで、安芸線は身近な存在だったはずです。それだけに、ごめん・なはり線開業の報には、さぞ喜ばれたことと思います。


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「手のひらを太陽に号」は、
車体側窓の下にキャラクターがビッシリ!
右上は、一部を拡大したところ。
右の写真は、「手のひらを太陽に号」です。カッコ書きで(略称:太陽号)とも記してあります。「手のひらを太陽に」は有名な歌ですが、この作詞者もやなせたかし氏なのです。1962(昭和37)年にNHK「みんなのうた」の放送でヒットしたもので、「アンパンマン」が世に出る10年以上前のことです。しかし、その歌詞には「アンパンマン」にも通じる、同氏の人生観を感じられますよね。
ところで、右の写真をもう一度ご覧下さい。車体側面にある客室窓の下に、三色の帯があります。その部分を拡大したのが右上です。ぜひ、画像をクリックし、拡大してご覧下さい。駅のキャラクターが、これでもかというほどたくさん描かれているのです。この車両を実見しての感想は、ただひとこと"お見事!"でした。

末尾となりましたが、やなせたかし氏のご冥福をお祈り致します。


掲載日:2013年10月25日


●伊藤 博康(いとう ひろやす)
(有)鉄道フォーラム代表。愛知県犬山市生まれ。パソコン通信NIFTY-Serve草創期から鉄道フォーラムに関わり、1992年から運営責任者。(有)鉄道フォーラムを設立後、独自サーバでサービスを継続中。著書に「日本の “珍々”踏切」(東邦出版)「鉄道ファンのためのトレインビューホテル」「鉄道名所の事典」(東京堂出版)がある。現在、中日新聞社「達人に訊け」でもコラムを連載中。