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"鉄道フォーラム"代表の伊藤博康氏による鉄道コラム。
毎回幅広いテーマの中から、「乗ってみたい」「知って良かった」「へぇ~」な汽車旅関連の話題をご紹介します。お楽しみに!
毎回幅広いテーマの中から、「乗ってみたい」「知って良かった」「へぇ~」な汽車旅関連の話題をご紹介します。お楽しみに!
新たなホームドアの現地試験を各地で実施中 [No.H072]
うっかりホーム端を歩いていて、通過する列車に驚いたとか、ほろ酔い気分でホーム端を歩いてしまったというような経験はありませんか? そんなちょっとしたことで命を失う方が後を絶ちません。まして、視覚障害者等にとっての駅ホームは、とても危険な場所となっています。その対応策として注目されているのが、ホームドアと可動式ホーム柵です。ここでは、両者をまとめて「ホームドア」と記すことにします。
国土交通省は、一日の利用者数が5000人以上の駅にホームドアを設置すべく、新設ホームには設置を義務づけ、既設ホームにも設置努力義務を課しています。しかし現実には、次々にくる車両のドア位置が同じという駅は多くないため、これがホームドア導入のネックとなっています。
そこで、国土交通省は、2013年3月5日付で次のリリース文を出しました。
車両扉位置の相違やコスト低減等の課題に対応可能な
新たなホームドアの現地試験の実施について
今回は、この現地試験をしている3駅の様子をご紹介します。
まず向かったのは、西武鉄道新宿線の新所沢駅です。本川越方面の副本線にあたる1番線の後方に、神戸製鋼所製の「戸袋移動型」が設置されていました。このホーム端は日中使用しないところですが、筆者が訪れたときにはちょうど関係者がテストを行っているところでした。
3ドア車と4ドア車で異なる扉位置に対して、ホームドアを収めている戸袋部分も動くようになっています。右の写真では、足元が緑の4ドア車位置にホームドアがあり、足元が青の3ドア車部分に戸袋があることが判ると思います。
次に3ドア車がくるとなると、戸袋部分が点灯して注意を喚起しながら移動します。1つの戸袋には左右2つの扉が入っているので、戸袋が移動してもホームと線路の間には必ず扉か戸袋があるように工夫されています。しっかりとした扉で、安全性が高そうですね。列車の停車位置が大きくずれたときにも対応できるそうです。
次に向かったのは、東京急行電鉄の田園都市線つきみ野駅です。中央林間方面のホーム全体に日本信号製の「昇降ロープ式」が設置されていました。この駅は、もともと最後部1両分だけ設置されたのですが、その効果が大きいと判断して、ホーム全体に試験を拡大したものです。その関係で、筆者が訪れたときには動作調整前のため、動いているところが見られませんでした。残念!
上の写真をみると判るとおり、門型の柵があり、そこにロープが前後2段についています。
柱部分には3つのスリットがついていることが判ります。線路側の2つはロープを昇降させるもので、ロープが2段になっているのは、停まる位置を上下分けることで倍の高さにするためです。その手前のスリットは、障害物検知装置で、ロープに近付くと警告音が鳴るようです。
扉の位置に関わらず、同じ位置で動作させる点が便利そうです。また、動作部分が少ないため保守も容易そうに見えます。
最後に訪れたのが、相模鉄道いずみ野線のいずみ野駅です。湘南台方面のホーム後方に高見沢サイバネティックス製の「昇降バー式」が設置されていました。同駅では、全ての列車の最後尾車両で実際に使用していたので、その状況をよく知ることができました。
考え方は先のつきみ野駅と同じで、ホームに設置する柱は固定してあります。そこに3本のバーを通してあるのですが、バーを支持する柱は、ホームに設置した柱からさらに上にでています。ところが、電車が扉を閉めると、このバーを支持する柱が下がってきます。同時に、3本のバーの間隔も広がっていきます。これで、ガッチリと乗降客と電車を離すとともに、上に上がったときには乗降する人の頭がバーに当たらないようにしているわけです。
扉位置にかかわらず、同じ位置で動作させる点はつきみ野駅と同じですが、ロープではなくバーであるため強度が強い半面、動作はやや複雑という感じです。
さて、それぞれに一長一短がありそうな国土交通省の試験システムですが、これとは別に、独自試験をしているところが大阪にあります。こちらも見てきたのでご紹介しましょう。
大阪で独自に試験をしているのは、JR西日本ゆめ咲線(桜島線)の桜島駅です。ユニバーサル・スタジオ・ジャパンへの足となる同線の終点駅です。ホーム全体に設置したのは「昇降式ホーム柵」と呼ぶもので、2013年12月から試験を続けています。
方式は、弥生台駅の「昇降バー式」のバーを、つきみ野駅のロープにした感じです。ただし、ロープは二重になっておらず、代わりに昇降する際にロープの幅が変わります。間隔が変わる点は、弥生台駅と同じですが、ホームに設置された柱部分は、よりガッチリとした感じです。
以上4方式を見てきたわけですが、今後、使用実績とともにメンテナンスなども含めた費用面も含めた改良がされ、いずれ主要駅から順次導入されるようになるのでしょうね。これらの結果、駅ホームがより安全になることが期待されます。
掲載日:2014年01月24日
国土交通省は、一日の利用者数が5000人以上の駅にホームドアを設置すべく、新設ホームには設置を義務づけ、既設ホームにも設置努力義務を課しています。しかし現実には、次々にくる車両のドア位置が同じという駅は多くないため、これがホームドア導入のネックとなっています。
そこで、国土交通省は、2013年3月5日付で次のリリース文を出しました。
車両扉位置の相違やコスト低減等の課題に対応可能な
新たなホームドアの現地試験の実施について
今回は、この現地試験をしている3駅の様子をご紹介します。
まず向かったのは、西武鉄道新宿線の新所沢駅です。本川越方面の副本線にあたる1番線の後方に、神戸製鋼所製の「戸袋移動型」が設置されていました。このホーム端は日中使用しないところですが、筆者が訪れたときにはちょうど関係者がテストを行っているところでした。
3ドア車と4ドア車で異なる扉位置に対して、ホームドアを収めている戸袋部分も動くようになっています。右の写真では、足元が緑の4ドア車位置にホームドアがあり、足元が青の3ドア車部分に戸袋があることが判ると思います。
次に3ドア車がくるとなると、戸袋部分が点灯して注意を喚起しながら移動します。1つの戸袋には左右2つの扉が入っているので、戸袋が移動してもホームと線路の間には必ず扉か戸袋があるように工夫されています。しっかりとした扉で、安全性が高そうですね。列車の停車位置が大きくずれたときにも対応できるそうです。
次に向かったのは、東京急行電鉄の田園都市線つきみ野駅です。中央林間方面のホーム全体に日本信号製の「昇降ロープ式」が設置されていました。この駅は、もともと最後部1両分だけ設置されたのですが、その効果が大きいと判断して、ホーム全体に試験を拡大したものです。その関係で、筆者が訪れたときには動作調整前のため、動いているところが見られませんでした。残念!
上の写真をみると判るとおり、門型の柵があり、そこにロープが前後2段についています。
柱部分には3つのスリットがついていることが判ります。線路側の2つはロープを昇降させるもので、ロープが2段になっているのは、停まる位置を上下分けることで倍の高さにするためです。その手前のスリットは、障害物検知装置で、ロープに近付くと警告音が鳴るようです。
扉の位置に関わらず、同じ位置で動作させる点が便利そうです。また、動作部分が少ないため保守も容易そうに見えます。
最後に訪れたのが、相模鉄道いずみ野線のいずみ野駅です。湘南台方面のホーム後方に高見沢サイバネティックス製の「昇降バー式」が設置されていました。同駅では、全ての列車の最後尾車両で実際に使用していたので、その状況をよく知ることができました。
考え方は先のつきみ野駅と同じで、ホームに設置する柱は固定してあります。そこに3本のバーを通してあるのですが、バーを支持する柱は、ホームに設置した柱からさらに上にでています。ところが、電車が扉を閉めると、このバーを支持する柱が下がってきます。同時に、3本のバーの間隔も広がっていきます。これで、ガッチリと乗降客と電車を離すとともに、上に上がったときには乗降する人の頭がバーに当たらないようにしているわけです。
扉位置にかかわらず、同じ位置で動作させる点はつきみ野駅と同じですが、ロープではなくバーであるため強度が強い半面、動作はやや複雑という感じです。
さて、それぞれに一長一短がありそうな国土交通省の試験システムですが、これとは別に、独自試験をしているところが大阪にあります。こちらも見てきたのでご紹介しましょう。
大阪で独自に試験をしているのは、JR西日本ゆめ咲線(桜島線)の桜島駅です。ユニバーサル・スタジオ・ジャパンへの足となる同線の終点駅です。ホーム全体に設置したのは「昇降式ホーム柵」と呼ぶもので、2013年12月から試験を続けています。
方式は、弥生台駅の「昇降バー式」のバーを、つきみ野駅のロープにした感じです。ただし、ロープは二重になっておらず、代わりに昇降する際にロープの幅が変わります。間隔が変わる点は、弥生台駅と同じですが、ホームに設置された柱部分は、よりガッチリとした感じです。
以上4方式を見てきたわけですが、今後、使用実績とともにメンテナンスなども含めた費用面も含めた改良がされ、いずれ主要駅から順次導入されるようになるのでしょうね。これらの結果、駅ホームがより安全になることが期待されます。
掲載日:2014年01月24日
●伊藤 博康(いとう ひろやす)
(有)鉄道フォーラム代表。愛知県犬山市生まれ。パソコン通信NIFTY-Serve草創期から鉄道フォーラムに関わり、1992年から運営責任者。(有)鉄道フォーラムを設立後、独自サーバでサービスを継続中。著書に「日本の “珍々”踏切」(東邦出版)「鉄道ファンのためのトレインビューホテル」「鉄道名所の事典」(東京堂出版)がある。現在、中日新聞社「達人に訊け」でもコラムを連載中。
(有)鉄道フォーラム代表。愛知県犬山市生まれ。パソコン通信NIFTY-Serve草創期から鉄道フォーラムに関わり、1992年から運営責任者。(有)鉄道フォーラムを設立後、独自サーバでサービスを継続中。著書に「日本の “珍々”踏切」(東邦出版)「鉄道ファンのためのトレインビューホテル」「鉄道名所の事典」(東京堂出版)がある。現在、中日新聞社「達人に訊け」でもコラムを連載中。
ホームドアだけでなく、その戸袋も動くことで、
3ドア車と4ドア車の両方に対応するシステム。