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汽車旅ひろば - ひろやすの汽車旅コラム

汽車旅ひろば


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"鉄道フォーラム"代表の伊藤博康氏による鉄道コラム。
毎回幅広いテーマの中から、「乗ってみたい」「知って良かった」「へぇ~」な汽車旅関連の話題をご紹介します。お楽しみに!

日本三大車窓の絶景を楽しむ姨捨駅 [No.H075]

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長野行と松本行が交換する電車。ところが、
どちらも画面の奥へ向かって発車!左側ホ
ームのベンチはホーム外に向いている…!?
右の写真をみて、なんか変だな? と思った方がおいででしたら、その方はとても感性の鋭い方だと思います。
何の変哲もない駅での電車の交換風景のように見えますが、なぜか右側の長野行電車の乗務員はホーム反対側から顔を出しています。発車の際の安全確認であれば、ホーム側の窓から顔を出すはずですよね。また、左側のホームの座席は、よくみると電車側に背もたれが見えています。つまり、ホーム外に向かって設置されています。
いずれも、常識で考えると変ですよね?
この駅は、スイッチバックで入線する篠ノ井線の姨捨駅です。その駅ホームが途切れた先にある踏切から写しています。ですから、どちらの電車も撮影している方向には向かってこないで、画面の奥の方に発車していきます。この時は松本行が先発でしたので、長野行の乗務員は松本行電車の様子を確認するために、ホームと反対側の窓から顔を出していたのでしょう。
ちなみに、松本行はまっすぐ本線に出て行きますが、長野行はいったん奥の方まで後退したあと停止し、やがて前進して画面左下へと続く本線にでます。松本行電車の左側に踏切警報機が見えますが、その左側の少し低くなったところに本線の長野方面の線路があります。
そこまでは判りましたが、ホームの外に向かって設置されたベンチは? これは、次の写真を見て下さい。


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姨捨駅松本方面のホームからは、かつて日本
三大車窓と呼ばれた絶景が楽しめる。ベンチ
はそのための造りとなっている。

左の写真が、松本方面のホームの様子です。ホーム上にベンチが並び、ホーム端の柵の先には絶景が広がっています。これが、かつて日本鉄道三大車窓と称された絶景のひとつです。写真を拡大すると、ホーム端の柵のなかに、手すりと並行する白い線があるのが判りますよね。これが長野方面への線路の電化線です。つまり、線路はホーム外側の真下にあるのです。それほど、ホーム端からここまでに坂を下っているので、列車を水平に停めるための設備として、この姨捨駅がスイッチバック方式で作られたわけです。
ところで、電化線と手すりの間に、小さく棚田が写っているのですが、判りますでしょうか。これが「田毎(たごと)の月」として知られる姨捨の棚田の一部です。国の重要文化的景観にも指定されている国内を代表する棚田の一つが、このホームから気軽に眺められるのです。
棚田がなくなる低地に流れるのは千曲川で、あんずの里として知られる千曲市のあるあたりとなります。そこから視線を左手に移すと、千曲川の下流の先には晴れた日に、長野から戸隠高原にいたるあたりまでが見通せます。これだけの絶景が一望だからこそ、ベンチをホームの外側に向けて設置してあるわけです。


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スイッチバック駅を表現している姨捨駅の駅
名標。普通列車はこの通りに走るので、判り
やすい案内といえよう。
いまや、観光地となっている姨捨駅松本方面ホームですが、リゾートトレインとして長野~松本~信濃大町を週末中心に走る「リゾートビューふるさと」は、午前の長野発が同駅で15分停車となっています。松本方面のホームから絶景を楽しむための停車です。また、季節の良い頃には、日が暮れてから同じ編成を使って長野~姨捨を往復する「ナイトビュー姨捨」という観光列車も走ります。この姨捨駅松本方面ホームからの夜景を楽しむための列車です。そんな観光客にとっても、実際の利用者にとっても判りやすくて楽しい駅名標が登場しました。右の写真です。姨捨駅がスイッチバックになっていることを、実に判りやすく表示してありますよね。ちなみに、冠着(かむりき)が松本方面、稲荷山が長野方面です。レトロ調な姨捨駅舎も残されていますので、姨捨駅に行ったら、景色だけでなく駅舎や駅名標もあわせて楽しんでくださいね。



掲載日:2014年02月14日


●伊藤 博康(いとう ひろやす)
(有)鉄道フォーラム代表。愛知県犬山市生まれ。パソコン通信NIFTY-Serve草創期から鉄道フォーラムに関わり、1992年から運営責任者。(有)鉄道フォーラムを設立後、独自サーバでサービスを継続中。著書に「日本の “珍々”踏切」(東邦出版)「鉄道ファンのためのトレインビューホテル」「鉄道名所の事典」(東京堂出版)がある。現在、中日新聞社「達人に訊け」でもコラムを連載中。