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汽車旅ひろば - ひろやすの汽車旅コラム

汽車旅ひろば


  • ひろやすの汽車旅コラム
"鉄道フォーラム"代表の伊藤博康氏による鉄道コラム。
毎回幅広いテーマの中から、「乗ってみたい」「知って良かった」「へぇ~」な汽車旅関連の話題をご紹介します。お楽しみに!

非電化線を走る電車“ACCUM”がダイヤ改正で登場 [No.H082]

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夕日を浴びて、パンタグラフをたたんで走る”電車”。ACCUM(アキュム)の愛称で烏山線を走りはじめた。
右の写真をよく見て下さい。架線がない線路を、パンタグラフをたたんで走っています。でも、試験車とかではありません。れっきとした烏山線の定期旅客列車です。しかも、列車番号は1333Mと末尾に"M"がついているので、電車です。烏山線は、宇都宮から北へ11.7kmのところにある東北本線宝積寺駅から分岐している、20.4kmの非電化線です。そこに電車が走りはじめたのです!?
この電車は、3月15日のダイヤ改正から営業運転をはじめた新車EV-E301系です。見慣れない形式名ですが、EVは Energy storage Vehicle の略だそうです。直訳すると「エネルギーを溜める車両」でしょうか。日本語では蓄電池車と呼ばれる、蓄電池を電源にして走る電車です。国鉄時代から続くキハ、モハといった形式名とは一線を画していますよね。
JR東日本には、同様にHB-E300系という形式名の車両があります。こちらはハイブリッド車で、ディーゼルエンジンで発電してモーターで走る際に蓄電池を併用しています。長野県を走る「リゾートビューふるさと」、五能線の「リゾートしらかみ 青池編成」、青森県内を走る「リゾートあすなろ」などに使われていますが、気動車の扱いでした。しかし、EV-E301系はエンジンを積んでいないので、電車の扱いになったようです。
愛称は「ACCUM」と書いて「アキュム」と読みます。蓄電池の英語「ACCUMULATOR」から名づけられたものです。


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終点の烏山駅で、パンタグラフを上げて充電中の”ACCUM”。同車のために、駅構内に電化施設が作られた。

ACCUMの蓄電池への充電は、パンタグラフを使って行います。運行区間のうち宇都宮~宝積寺間11.7kmは、東北本線なので1500V直流電化されています。その走行中は、パンタグラフを上げて架線から電気を得て走るとともに、蓄電池にも充電します。また、ブレーキをかけたときには、回生制動というエンジンブレーキのような仕組みを使ってブレーキをかけることで、電気を発生させ、その電気も蓄電池に充電します。
宝積寺駅でパンタグラフを降ろすと、その先は非電化の烏山線ですから、蓄電池で走ることになります。同線は盲腸線で、終着駅の烏山駅には停車場所に架線があります。この駅に停車している間に、再びパンタグラフを上げて充電するのです。ただし、走ることはないので、架線は一般的な吊下線ではなく、棒状の鋼体架線となっています。給電性能と保守を考えてのことでしょうね。



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ACCUM車内の客室モニターに表示される電気の流れの図。蓄電池の電力をモーターのほか、空調や照明にも使っている状態。
ACCUMの車内には乗客向けのモニターがあり、右の写真のような図が出ます。この写真は、烏山線内で加速しているときに写したものです。蓄電池からの電気は、モーターを回すとともに、暖冷房や車内照明などにも使用していることを表しています。これが、東北本線を走るときにはパンタグラフから電気が入る流れになりますし、ブレーキをかけたときには、前述の通りモーターが発電するため、モーターから制御装置を通って蓄電池へと電気が流れる図になります。刻々と変化するモニターをみているだけでも面白いですよ。
毎日定期列車で走っていますし、その運転時刻は時刻表の烏山線をみて「M」がついている列車となるわけですが、次の運用となっています。平日も土休日も同じ時刻なので、一度乗ってみてはいかがでしょう。

東北本線・架線集電      烏山線・蓄電池走行
宇都宮駅 矢印 宝積寺駅 矢印 烏山駅
10:03 10:17-22 10:57
13:25 13:10-12 12:29
13:40 13:54-56 14:32
16:11 15:29
16:35 17:11
18:33 18:18-20 17:37

なお、いまのところEV-E301系は写真に写っている2両1編成だけなので、定期検査の際には気動車が代走することになります。



掲載日:2014年04月04日


●伊藤 博康(いとう ひろやす)
(有)鉄道フォーラム代表。愛知県犬山市生まれ。パソコン通信NIFTY-Serve草創期から鉄道フォーラムに関わり、1992年から運営責任者。(有)鉄道フォーラムを設立後、独自サーバでサービスを継続中。著書に「日本の “珍々”踏切」(東邦出版)「鉄道ファンのためのトレインビューホテル」「鉄道名所の事典」(東京堂出版)がある。現在、中日新聞社「達人に訊け」でもコラムを連載中。