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"鉄道フォーラム"代表の伊藤博康氏による鉄道コラム。
毎回幅広いテーマの中から、「乗ってみたい」「知って良かった」「へぇ~」な汽車旅関連の話題をご紹介します。お楽しみに!
毎回幅広いテーマの中から、「乗ってみたい」「知って良かった」「へぇ~」な汽車旅関連の話題をご紹介します。お楽しみに!
松山市駅前電停で、「坊っちゃん列車」の方向転換を楽しむ [No.H118]
前回は、伊予鉄道の郊外線を取りあげました。その伊予鉄道は、市内にも軌道線(路面電車)網を有しています。JR松山駅や、郊外線との乗り換え駅となる松山市駅をはじめ、繁華街の大街道や松山城・道後温泉などを結ぶ松山市内の観光に便利な乗り物です。そんな観光客を相手にしたユニークな列車が走っているのも、伊予鉄道市内線の特徴です。それが、右の写真に写っている"坊っちゃん列車"です。
前回、"坊っちゃん列車"の本物を紹介しましたが、こちらは観光用に復元したものです。
ご覧の通り、機関車と客車を連結している、路面電車としては異色の存在です。後方にいる通常の路面電車との違いが明らかですよね。この"坊っちゃん列車"は客車が2両の編成もあり、この写真の編成との2編成が道後温泉から、JR松山駅前を経て古町駅までと松山市駅前までの2系統を走っています。
料金は乗車距離に関係なく大人300円、小児200円で、他の路面電車が大人160円(ICカード140円)、小児80円(ICカード70円)なのに比べてほぼ倍の金額です。でも、1Dayチケット大人400円、小児200円なら、100円追加するだけで"坊っちゃん列車"に乗ることができます。観光で利用するなら、この1Dayチケットがだんぜんお得です。
ところで、機関車は客車の前についていますので、終点についてもそのまま折り返すことができません。路面電車なら、反対側の運転台を使うことで折り返すことができるのですが… では、どうするのでしょう? その様子を見るには、松山市駅前電停が適しています。
松山市駅前電停にやってきた"坊っちゃん列車"は、電停の端の方に停まったかと思うと、連結器を外して機関車だけが前進します。行き止まりまで行ったあと、バックして反対方向への線路に行くための渡り線にくると、停まってしまいます。あれ? と思ったら、乗務員がなんと手で機関車を押しはじめました! それも、押して進めるのではなく、押すと機関車が回転するのです。
これには仕掛けがあります。機関車の中央部分の床下に、ジャッキがついているのです。自らのジャッキで機関車全体を持ち上げて、車輪が浮いたところで端の方を押すと、クルクルと回転するのです。これは、鉄道線の保線用車などで使われている技術ですが、営業用車両で実用に使っているのは、日本中でこの"坊っちゃん列車"用機関車だけです。
機関車を半回転させると、ジャッキを縮めて再び車輪がレールに載ります。あとは機関車を動かせばよいだけ… ではありません。後方に、置き去りにしてきた客車があるではないですか。
さて、客車はどうするのかな? と思ったら、機関車を停めたあと、乗務員が客車に走り寄りました。そこでブレーキを弛めたと思ったら、なんと人力で動かしはじめました。これまた意外! 機関車と同様に、終端部まで移動させたら、またまた手動で戻ってきて、さきほど機関車が転回した渡り線を過ぎ、その先に停まっている機関車に連結します。
これで、機関車の方向が逆さになった編成ができあがりました。今度は、機関車の動力を使ってバックすると、そこが坊っちゃん列車専用の乗り場です。
この一連の作業は、衆目の前で次々に進められます。さすがに手慣れたもので、乗務員さん達に無駄な動きは見られません。一見の価値がありますよ。
なお、道後温泉電停と古町駅電停でも同じような転回作業をしますが、道後温泉電停は、ホームを過ぎた先の折り返し線を使いますので、多くの観光客はその様子に気付かないようです。古町駅は、観光ルートから外れているので、行く方は多くないようです。
松山に行くなら、この"坊っちゃん列車"の方向転換の様子も、ぜひ見てきて下さいね。
掲載日:2014年12月12日
前回、"坊っちゃん列車"の本物を紹介しましたが、こちらは観光用に復元したものです。
ご覧の通り、機関車と客車を連結している、路面電車としては異色の存在です。後方にいる通常の路面電車との違いが明らかですよね。この"坊っちゃん列車"は客車が2両の編成もあり、この写真の編成との2編成が道後温泉から、JR松山駅前を経て古町駅までと松山市駅前までの2系統を走っています。
料金は乗車距離に関係なく大人300円、小児200円で、他の路面電車が大人160円(ICカード140円)、小児80円(ICカード70円)なのに比べてほぼ倍の金額です。でも、1Dayチケット大人400円、小児200円なら、100円追加するだけで"坊っちゃん列車"に乗ることができます。観光で利用するなら、この1Dayチケットがだんぜんお得です。
ところで、機関車は客車の前についていますので、終点についてもそのまま折り返すことができません。路面電車なら、反対側の運転台を使うことで折り返すことができるのですが… では、どうするのでしょう? その様子を見るには、松山市駅前電停が適しています。
松山市駅前電停にやってきた"坊っちゃん列車"は、電停の端の方に停まったかと思うと、連結器を外して機関車だけが前進します。行き止まりまで行ったあと、バックして反対方向への線路に行くための渡り線にくると、停まってしまいます。あれ? と思ったら、乗務員がなんと手で機関車を押しはじめました! それも、押して進めるのではなく、押すと機関車が回転するのです。
これには仕掛けがあります。機関車の中央部分の床下に、ジャッキがついているのです。自らのジャッキで機関車全体を持ち上げて、車輪が浮いたところで端の方を押すと、クルクルと回転するのです。これは、鉄道線の保線用車などで使われている技術ですが、営業用車両で実用に使っているのは、日本中でこの"坊っちゃん列車"用機関車だけです。
機関車を半回転させると、ジャッキを縮めて再び車輪がレールに載ります。あとは機関車を動かせばよいだけ… ではありません。後方に、置き去りにしてきた客車があるではないですか。
さて、客車はどうするのかな? と思ったら、機関車を停めたあと、乗務員が客車に走り寄りました。そこでブレーキを弛めたと思ったら、なんと人力で動かしはじめました。これまた意外! 機関車と同様に、終端部まで移動させたら、またまた手動で戻ってきて、さきほど機関車が転回した渡り線を過ぎ、その先に停まっている機関車に連結します。
これで、機関車の方向が逆さになった編成ができあがりました。今度は、機関車の動力を使ってバックすると、そこが坊っちゃん列車専用の乗り場です。
この一連の作業は、衆目の前で次々に進められます。さすがに手慣れたもので、乗務員さん達に無駄な動きは見られません。一見の価値がありますよ。
なお、道後温泉電停と古町駅電停でも同じような転回作業をしますが、道後温泉電停は、ホームを過ぎた先の折り返し線を使いますので、多くの観光客はその様子に気付かないようです。古町駅は、観光ルートから外れているので、行く方は多くないようです。
松山に行くなら、この"坊っちゃん列車"の方向転換の様子も、ぜひ見てきて下さいね。
掲載日:2014年12月12日
●伊藤 博康(いとう ひろやす)
(有)鉄道フォーラム代表。愛知県犬山市生まれ。パソコン通信NIFTY-Serve草創期から鉄道フォーラムに関わり、1992年から運営責任者。(有)鉄道フォーラムを設立後、独自サーバでサービスを継続中。著書に「日本の “珍々”踏切」(東邦出版)「鉄道ファンのためのトレインビューホテル」「鉄道名所の事典」(東京堂出版)がある。現在、中日新聞社「達人に訊け」でもコラムを連載中。
(有)鉄道フォーラム代表。愛知県犬山市生まれ。パソコン通信NIFTY-Serve草創期から鉄道フォーラムに関わり、1992年から運営責任者。(有)鉄道フォーラムを設立後、独自サーバでサービスを継続中。著書に「日本の “珍々”踏切」(東邦出版)「鉄道ファンのためのトレインビューホテル」「鉄道名所の事典」(東京堂出版)がある。現在、中日新聞社「達人に訊け」でもコラムを連載中。