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汽車旅ひろば - ひろやすの汽車旅コラム

汽車旅ひろば


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"鉄道フォーラム"代表の伊藤博康氏による鉄道コラム。
毎回幅広いテーマの中から、「乗ってみたい」「知って良かった」「へぇ~」な汽車旅関連の話題をご紹介します。お楽しみに!

北陸新幹線開業に合わせて、フィーダー交通も大きく変化 [No.H133]

当コラムの今年2月6日付と同13日付で北陸新幹線の新駅を紹介致しました。
2月 6日 北陸新幹線の新駅…3月14日を目指して準備着々 1/2
2月13日 北陸新幹線の新駅…3月14日を目指して準備着々 2/2
その際、各駅で接続するフィーダー交通についても触れました。
今回は、そのフィーダー交通の興味深い点について、ご紹介します。


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富山駅舎に直接乗り入れをはじめた、富山地方鉄道の市内線。
まずは、北陸新幹線金沢延伸でもっとも注目を浴びるフィーダー交通・富山地方鉄道市内線です。
富山地方鉄道の市内線は、これまで富山駅前の道路上に電停がありました。それが、北陸新幹線富山駅の完成と同時に、富山駅舎に直接乗り入れることになりました。あいの風とやま鉄道(旧JR北陸本線)も新幹線も改札口は地上にあります。ですから、富山駅舎に入ると、左手に市内線乗り場、正面にあいの風とやま鉄道の改札口、右手に新幹線改札口となっていて、いずれも段差がなく平面でつながっています。
路面電車が、LRTと呼ばれる次世代型に進化している国では、鉄道と路面電車を簡単に乗り換えられるケースが珍しくないのですが、日本では初めてのケースです。路面電車後進国の日本において、相変わらず、富山市は一等地抜きんでた先進性を発揮し、世界と互角に張り合えるシステムを導入したとも言えましょう。


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新幹線改札からまっすぐに進むと南富山駅方面乗り場、その先が同降り場と、大学前行・環状線の乗り場。
市内線電停をもう少し詳しく見てみましょう。あいの風とやま鉄道や新幹線の改札を出て、まっすぐに進むと南富山駅前行の電停です。もっとも利用者が多い、町中へ直通する系統です。その先に、同降車ホームと大学前行・環状線の乗車ホームがあり、さらに先に同降車ホームという2線3面の電停です。電停には、前後どちらにも緩いスロープがついています。
いまは、すべての電車がここで折り返し運転をしていますが、あいの風とやま鉄道の高架化工事が完成すると、駅北側まできている富山ライトレールが乗り入れてくる予定です。つまり、富山ライトレール沿線の方々は、乗り換えなしで富山市中心街まで直行できるようになるのです。単に、富山駅での乗換の便利さを求めただけでなく、線路が隔てていた市北部と市中心街を結ぶという役目も、この新電停は担っているわけです。これまた、日本で初の大胆な試みとなります。


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城端線の新高岡駅には、上部に跨線橋が設けられ、駅西側の住宅街からも新幹線駅にアクセスできる。
北陸新幹線で富山駅の下り側にある次駅は、新高岡駅です。同駅の西には在来線のJR城端(じょうはな)線があり、ここにも同名の新高岡駅が開業しました。1面1線の無人駅ですが、ホーム上にはなにやら巨大な跨線橋ができています。城端線の西側にある住宅地から新幹線駅に行くためのもので、安全に線路を越えられます。冬季の雪を考慮して、跨線橋全体が天井と壁で覆われているのも、利用する方にとっては安心でしょう。ただし、設置費用は相当かかっていることが見て判ります。
ちなみに、新高岡駅は従来の高岡駅から2km弱南にあります。市街地は高岡駅の北にあるので、両駅間を結ぶ公共交通が必要ですが、それは地元の加越能バスが担当します。前述の城端線は1時間に1本程度の列車本数ですが、加越能バスは10分に1本の高頻度運転です。しかも、新幹線の新高岡駅をでたすぐの場所にある1番乗り場からの発着ですので、実に便利です。
高岡駅の北には万葉線という路面電車がありますので、高岡駅改修の際に高架駅となった同駅に乗り入れ、そのまま新高岡駅まで延伸することがより望ましかったことでしょう。しかし、費用面で高岡駅1階に乗り入れるのが精一杯だったようです。


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富山地方鉄道の新黒部駅は、ホームから駅西へスロープと踏切で行くことができる。右手は新幹線駅につながる。
新高岡駅の跨線橋とは対照的なのが、北陸新幹線で富山駅の上り側次駅となる黒部宇奈月温泉駅の接続駅です。同駅西に富山地方鉄道の線路があり、新黒部駅ができました。富山地方鉄道には電鉄黒部駅と宇奈月温泉駅の両方があるため、新幹線駅と同じ駅名にはできなかったようです。
この新黒部駅も城端線の新高岡駅と同じく1面1線の無人駅ですが、駅ホームからスロープを降りたところに踏切が新設され、駅西にある住宅地に行けるようになっています。わざわざ跨線橋を上り下りする必要はありません。経済的で人に優しい造りですよね。ちなみに、写真上部に写っているのは、跨線橋ではなく新幹線の駅ホームです。


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「あいの風とやま鉄道」と「えちごトキめき鉄道」は、同一ホームの前後に停まった列車間を歩いて乗り換える。
最後に、北陸新幹線の並行在来線として第三セクター鉄道となった、「あいの風とやま鉄道」と「えちごトキめき鉄道」の乗換風景をご紹介します。
社名から判るように、前者は富山県、後者は新潟県が出資した第三セクター鉄道です。県境に近い駅は富山県が越中宮崎駅、新潟県が市振(いちぶり)駅で、実際、両鉄道の管轄はこれらの駅までとなっていますが、両鉄道の乗り換え駅は越中宮崎駅の一つ富山駅寄りにある泊(とまり)駅です。折り返し設備の関係で、この泊駅が両鉄道の接続駅となったようです。
通常、列車の乗り換えは島式ホームの両側に停まった車両間を行き来しますが、この泊駅では、列車が同じホーム上に停車します。そのため、後から入線する列車は誘導信号機に従ってゆっくりと進入してきます。乗客は、1車両分ほどある両列車の間を、ホーム上を移動して乗り換えるわけです。JR四国の松山駅では見られますが、珍しい方式ですよね。


掲載日:2015年04月03日


●伊藤 博康(いとう ひろやす)
(有)鉄道フォーラム代表。愛知県犬山市生まれ。パソコン通信NIFTY-Serve草創期から鉄道フォーラムに関わり、1992年から運営責任者。(有)鉄道フォーラムを設立後、独自サーバでサービスを継続中。著書に「日本の “珍々”踏切」(東邦出版)「鉄道ファンのためのトレインビューホテル」「鉄道名所の事典」(東京堂出版)がある。現在、中日新聞社「達人に訊け」でもコラムを連載中。