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汽車旅ひろば - ひろやすの汽車旅コラム

汽車旅ひろば


  • ひろやすの汽車旅コラム
"鉄道フォーラム"代表の伊藤博康氏による鉄道コラム。
毎回幅広いテーマの中から、「乗ってみたい」「知って良かった」「へぇ~」な汽車旅関連の話題をご紹介します。お楽しみに!

熊本電鉄の楽しみ方…併用軌道・地下鉄車両・青ガエル [No.H164]

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道路の端を遠慮がちに走る、熊本電鉄の併用軌道区間。車両は、都営地下鉄三田線で走っていた6000形。
熊本電気鉄道は、文字どおり熊本を走る電化された鉄道です。熊本駅の北隣となるJR上熊本駅前から北熊本駅を経て御代志駅までの10. 8kmの菊池線と、北熊本駅から市中心街に近い藤崎宮前駅までの藤崎線2. 3kmの2路線をもっています。
ただし、運行系統は上熊本駅~北熊本駅間と、藤崎宮前駅~北熊本駅~御代志駅があり、後者がメインルートとなっています。やはり、JR線の駅に行くより、市中心街に向かう利用の方が多いようです。

さて、この市中心街に近い藤崎宮前駅~黒髪町駅間1. 1kmには、右上の写真のとおり、一般道路の端を走る併用軌道区間があります。もともと、路面電車として開業した路線であることを感じさせる光景です。たとえば、電車の正面右側は、あきらかに民家の玄関ですよね?
この併用軌道はわずか150mくらいですけど、日本中から同様な区間が激減した今日では、貴重な光景です。しかも、そこを走っているのは、もと東京都営地下鉄三田線を走っていた6000形電車です。ものすごいミスマッチ感がありますよね。
ちなみに、2014年6月20日付当コラムで紹介した「くまモン電車」も、ここにやってきます。


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上熊本駅~北熊本駅を走る、もと東京メトロ01形。
一方、運行上は支線区扱いとなっている上熊本駅~北熊本駅間3. 4kmには、もと東京メトロ銀座線を走っていた01形が走っています。わずか3. 4kmの区間にもかかわらず、途中に4駅もある路線ですから、平均駅間距離はわずか680m。路面電車なみの駅間距離ですね。それだけに、もと地下鉄車両とは思えないほど、のんびりと往復しています。
この01形が北熊本駅に着くと、藤崎宮前駅~御代志駅間の上下列車と接続しています。つまり、ここで元都営地下鉄車と東京メトメ車が顔を合わせるわけです。ときには、そのうちの1本が「くまモン電車」だったりするわけです。


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もと東急5000系「青ガエル」も、日曜日に上熊本駅~北熊本駅間で運転されている。
上熊本駅~北熊本駅間は、ながらく「青ガエル」の愛称があるもと東急の5000形が走っていました。右の写真がその5000形ですが、下ぶくれの「顔」に緑色の塗装が、いかにもカエルですよね? そこから付けられた愛称です。
ところが、昭和32(1957)年製とすでに半世紀以上も走っている車両ですので、昨年、上に記した東京メトロ01形が入線したのです。これによって、右写真の5102Aは廃車となり、いまは片割れの5101Aが1両だけ生き残っています。
登場当時に話題となった名車で、いまも人気のある5000形ですので、いまは原則として日曜日に上熊本駅~北熊本駅で走っています。ただし、車両に不具合があった場合には、通常通り01形の運行となってしまいます。

ところで、熊本電気鉄道のオンラインショップ「くまでんSHOP」では、「さよなら青ガエルDVD」や「青ガエル引退記念限定3点セット」などが売られはじめました。
一方、01形はもう一編成が今年熊本電気鉄道にやってきていて、いま同鉄道線で走ることができるように改造されているようです。つまり、名車「青ガエル」も今年度中でその動く様子がみられなくなるようで、事実その旨がマスコミ報道されています。

路線・車両ともに見どころが多い熊本電気鉄道ですが、訪れるなら今年度中の日曜日が特にお勧めです。

掲載日:2015年11月20日


●伊藤 博康(いとう ひろやす)
(有)鉄道フォーラム代表。愛知県犬山市生まれ。パソコン通信NIFTY-Serve草創期から鉄道フォーラムに関わり、1992年から運営責任者。(有)鉄道フォーラムを設立後、独自サーバでサービスを継続中。著書に「日本の “珍々”踏切」(東邦出版)「鉄道ファンのためのトレインビューホテル」「鉄道名所の事典」(東京堂出版)がある。現在、中日新聞社「達人に訊け」でもコラムを連載中。