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汽車旅ひろば - ひろやすの汽車旅コラム

汽車旅ひろば


  • ひろやすの汽車旅コラム
"鉄道フォーラム"代表の伊藤博康氏による鉄道コラム。
毎回幅広いテーマの中から、「乗ってみたい」「知って良かった」「へぇ~」な汽車旅関連の話題をご紹介します。お楽しみに!

房総半島で、SL風トロッコ列車の運転がはじまる [No.H184]

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小湊鐵道で走りはじめた“里山トロッコ”。先頭は蒸気機関車に見えるが、実はディーゼル機関車。
千葉県の房総半島といえば、国鉄形ディーゼルカーが走るいすみ鉄道が知られています。当汽車旅コラムでも、2013年5月2日に「蘇った昭和の急行 キハ28+キハ52」として紹介しました。
そのいすみ鉄道の終点・上総中野駅で接続して、東京湾岸にある内房線五井駅まで39. 1kmを結んでいるのが小湊鐵道です。

その小湊鐵道に、今春、右の写真の列車が走りはじめました。「里山トロッコ」と名づけられた列車で、4両の客車を機関車が牽引します。トロッコ客車のうち2両は窓が開閉できますが、中間の2両は窓ガラスそのものがなく、自然の風を楽しみながら進みます。
先頭が蒸気機関車なので、煙たいのではと思いますが、安心して下さい。形こそ蒸気機関車ですが、実はディーゼル機関車なのです。
蒸気機関車の形をしていながら、中身がディーゼル機関車というのは、当汽車旅コラム2014年12月12日に紹介した「松山市駅前電停で、「坊っちゃん列車」の方向転換を楽しむ」の機関車と同じです。外観だけでも、雰囲気が出るのが蒸気機関車ですよね。


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なにか変… 乗務員が後ろを向いているし、動輪につながる主連棒や連結棒がない!
左の写真は、その機関車を真横から写したものですが、なにか変だと思いませんか?
乗務員が後ろを向いているのは、左側に向かって走っているためです。この件については、後述します。
もう一点、変なのは、3つある動輪がピストンとつながっていないことです。通常、蒸気機関車は煙突の真下にあるピストンに蒸気を送り、そのピストンが前後する力を動輪に伝えて動かすために、主連棒という棒が出ています。さらに、主連棒は一つの動輪にだけ力を伝えるため、他の動輪も同じように力を出せるよう、連結棒で結ばれています。子どもが“汽車ごっこ”をするときに、両手を突き出してグルグルと回転させる、あれです。そのどちらもこの機関車にはありませんよね?
前述のとおりディーゼル機関車なので、主連棒も連結棒もなくても動くのですが、蒸気機関車としてみると、やはりなにか変… なわけです。実は、昨秋にこの「里山トロッコ」が走りはじめたときには、主連棒も連結棒もついていました。ところが、11月15日(日)に運転を始めたものの、2日目の運転日となる11月20日(金)に破損してしまったそうです。
そこで、昨年の運転はわずか2日間で打ち切って検討したところ、これらの棒を外して運転することと決定。今春3月18日から改めて走りはじめたのです。


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トロッコ客車の上り方先頭部には運転席があり、上り列車はこの客車で運転している。最後尾の機関車が遠隔制御で推進している。
右の写真は、「里山トロッコ」の最後尾を先頭にして走っている様子です。ヘッドマークの右上に運転士さんがいますよね。
この「里山トロッコ」の編成は、機関車が先頭のときにはディーゼル機関車が牽引します。しかし、戻るときには客車の運転席から最後尾となる機関車を遠隔操作して走るのです。国内では大井川鐵道の井川線で同様な運転を行っていますが、珍しい運転方式です。これも、ディーゼル機関車だからできることで、蒸気機関車ではできない芸当です。

「里山トロッコ」は、3月中旬から12月中旬までの土休日と、多くの金曜日、それに夏休みには月曜日と木曜日にも運転します。小湊鐵道のなかでも里山の風景が美しい上総牛久~養老渓谷間18. 5kmを平日は4往復、土休日は6往復します。所要は約1時間です。
乗車には、乗車券のほかにトロッコ料金500円が必要となります。その予約は、受付専用電話で行います。
詳しくは、小湊鐵道の里山トロッコ専用ホームページをご覧下さい。


掲載日:2016年04月15日


●伊藤 博康(いとう ひろやす)
(有)鉄道フォーラム代表。愛知県犬山市生まれ。パソコン通信NIFTY-Serve草創期から鉄道フォーラムに関わり、1992年から運営責任者。(有)鉄道フォーラムを設立後、独自サーバでサービスを継続中。著書に「日本の “珍々”踏切」(東邦出版)「鉄道ファンのためのトレインビューホテル」「鉄道名所の事典」(東京堂出版)がある。現在、中日新聞社「達人に訊け」でもコラムを連載中。