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"鉄道フォーラム"代表の伊藤博康氏による鉄道コラム。
毎回幅広いテーマの中から、「乗ってみたい」「知って良かった」「へぇ~」な汽車旅関連の話題をご紹介します。お楽しみに!
毎回幅広いテーマの中から、「乗ってみたい」「知って良かった」「へぇ~」な汽車旅関連の話題をご紹介します。お楽しみに!
21年間放置されたSLを、50万円でピカピカに [No.H189]
現役の蒸気機関車が続々と廃止になっていた1970年代半ば、全国でその保存活動が活発になりました。多くは自治体が費用を出し、旧国鉄から貸与の形で、引退した機関車を譲り受けて地元の公園などに静態保存するというものでした。
ところが、保存はしたものの、その後にメンテナンスがされず放置されるケースが、残念ながら目立ちました。そのため、すでに解体されてしまった機関車も少なくありません。
北海道の札幌から東へ約30キロ、長沼町のコミュニティ公園に静態保存されている、夕張鉄道25号機も、そんな静態保存機でした。当初こそ手入れがされていたものの、平成6年の再塗装を最後に放置されていたのです。
その結果、赤さびだらけとなり、炭水車の側面は腐蝕して一部に穴が空くような状態となっていました。
休日に遊びにきた公園に、このような荒れ果てた展示物があるのは、好ましくないですよね。かといって、20年以上放置したものを元通りにするには、膨大な費用がかかります。そこで、町は解体しようとしたそうですが、アスベスト除去も必要とあって、これまた膨大な予算が必要ということが判りました。
そこで、昨年『北海道初の電車711系を保存している「大地のテラス」』で紹介した、北海道鉄道観光資源研究会の永山代表に相談があったそうです。
永山さんは、日本旅行の社員であり、関連会社でバスツアーを実施する「ほっとバス[北海道オプショナルツアーズ(株)]」の役員もされています。
その「ほっとバス」で、早速、左の写真にあるチラシを作りました。名づけて
長沼町保存蒸機ペンキ塗りツアー
日本旅行の鉄道プロジェクトでは、当サイトをはじめ様々な鉄道に関する取り組みをしていますが、その中に、雑巾をもって参加しようというツアーがありました。保存車両を掃除し、その後に乗って楽しもうというツアーです。これが好評だったと聞いて、ペンキ塗りツアーを発案したそうです。
昨年(2015年)10月3日~4日の1泊2日で募集したところ、老若男女の参加者が集まりました。さらに、地元の長沼町青年団体協議会も地元のことだからと全面応援してくれることになりました。また、三菱大夕張鉄道が夕張市内に保存した車両などを維持管理している、三菱大夕張鉄道保存会の協力も得ることができて当日を迎えました。
その当日の作業の様子が、最初に紹介した写真です。
まずは古い塗装をはがし、その後にペンキを塗るわけですが、手間暇がかかるので、まずは片面だけできればよいと考えていたそうです。
ところが、写真をみての通りの好天。さらに、参加者みなが作業を進めるうちにどんどん楽しくなってきたそうで、このまま一気にやってしまえ! とばかりに、ツアーの2日間で機関車全体を塗り直してしまったそうです。
かかった費用は、ペンキ代と参加者の昼食弁当代だけで、総額約50万円! 長沼町としては、解体するにしても保存を続けるにしても、最低数百万円は必要との見積りだっただけに、大いに喜ばれたということです。
この話を聞き、同車を見てみたいと思った筆者は、過日、現地に案内してもらいました。
右の写真が、その時に撮ったものです。
きれいになってますでしょ?
近付いて細かく見ると、サビ取りしたあとにパテで埋めることをしていないため、平面のはずのところが凸凹になっているなど、もちろん完璧ではありません。
しかし、機関車全体をくまなくペンキ塗りしたため、風雨にさらされてもこれ以上劣化しない状態にまでなっています。もちろん、素人目には十分にきれいで、この状態であれば町民からみっともないので撤去しろというような要望もでるはずがありません。
北海道鉄道観光資源研究会の永山代表によると、このペンキ塗りの成果は4つあるそうです。
1.機関車を守ることができた。
2.参加者が楽しむことができた。
3.長沼町の負担がとても少なくて済んだ。
4.長沼町青年団体協議会の若いメンバーが、機関車に愛着をもつようになった。
地元の若者にとって、この機関車は生まれたときからここにあるもので、それがどういう意味をもっているのかなど、さほど考える機会もなかったことでしょう。しかし、合宿形式での作業をするにつれ、かつて地元を走っていた機関車に愛着が湧いてきたのであれば、これは何物にも代えがたい成果でしょう。
その結果、今年から毎年9月を「長沼SLの日」とすることになり、毎年合宿形式でこの機関車のメンテナンスを続けようという話しになっているそうです。また、今年の作業では、運転室まわりと炭水車を中心とした補修をすることで打合せを進めているとのことです。
今後、さらに状態が良くなっていくことが期待される夕張25号機ですね。
※2016年6月10日 一部修正・更新しました。
掲載日:2016年05月27日
ところが、保存はしたものの、その後にメンテナンスがされず放置されるケースが、残念ながら目立ちました。そのため、すでに解体されてしまった機関車も少なくありません。
北海道の札幌から東へ約30キロ、長沼町のコミュニティ公園に静態保存されている、夕張鉄道25号機も、そんな静態保存機でした。当初こそ手入れがされていたものの、平成6年の再塗装を最後に放置されていたのです。
その結果、赤さびだらけとなり、炭水車の側面は腐蝕して一部に穴が空くような状態となっていました。
休日に遊びにきた公園に、このような荒れ果てた展示物があるのは、好ましくないですよね。かといって、20年以上放置したものを元通りにするには、膨大な費用がかかります。そこで、町は解体しようとしたそうですが、アスベスト除去も必要とあって、これまた膨大な予算が必要ということが判りました。
そこで、昨年『北海道初の電車711系を保存している「大地のテラス」』で紹介した、北海道鉄道観光資源研究会の永山代表に相談があったそうです。
永山さんは、日本旅行の社員であり、関連会社でバスツアーを実施する「ほっとバス[北海道オプショナルツアーズ(株)]」の役員もされています。
その「ほっとバス」で、早速、左の写真にあるチラシを作りました。名づけて
長沼町保存蒸機ペンキ塗りツアー
日本旅行の鉄道プロジェクトでは、当サイトをはじめ様々な鉄道に関する取り組みをしていますが、その中に、雑巾をもって参加しようというツアーがありました。保存車両を掃除し、その後に乗って楽しもうというツアーです。これが好評だったと聞いて、ペンキ塗りツアーを発案したそうです。
昨年(2015年)10月3日~4日の1泊2日で募集したところ、老若男女の参加者が集まりました。さらに、地元の長沼町青年団体協議会も地元のことだからと全面応援してくれることになりました。また、三菱大夕張鉄道が夕張市内に保存した車両などを維持管理している、三菱大夕張鉄道保存会の協力も得ることができて当日を迎えました。
その当日の作業の様子が、最初に紹介した写真です。
まずは古い塗装をはがし、その後にペンキを塗るわけですが、手間暇がかかるので、まずは片面だけできればよいと考えていたそうです。
ところが、写真をみての通りの好天。さらに、参加者みなが作業を進めるうちにどんどん楽しくなってきたそうで、このまま一気にやってしまえ! とばかりに、ツアーの2日間で機関車全体を塗り直してしまったそうです。
かかった費用は、ペンキ代と参加者の昼食弁当代だけで、総額約50万円! 長沼町としては、解体するにしても保存を続けるにしても、最低数百万円は必要との見積りだっただけに、大いに喜ばれたということです。
この話を聞き、同車を見てみたいと思った筆者は、過日、現地に案内してもらいました。
右の写真が、その時に撮ったものです。
きれいになってますでしょ?
近付いて細かく見ると、サビ取りしたあとにパテで埋めることをしていないため、平面のはずのところが凸凹になっているなど、もちろん完璧ではありません。
しかし、機関車全体をくまなくペンキ塗りしたため、風雨にさらされてもこれ以上劣化しない状態にまでなっています。もちろん、素人目には十分にきれいで、この状態であれば町民からみっともないので撤去しろというような要望もでるはずがありません。
北海道鉄道観光資源研究会の永山代表によると、このペンキ塗りの成果は4つあるそうです。
1.機関車を守ることができた。
2.参加者が楽しむことができた。
3.長沼町の負担がとても少なくて済んだ。
4.長沼町青年団体協議会の若いメンバーが、機関車に愛着をもつようになった。
地元の若者にとって、この機関車は生まれたときからここにあるもので、それがどういう意味をもっているのかなど、さほど考える機会もなかったことでしょう。しかし、合宿形式での作業をするにつれ、かつて地元を走っていた機関車に愛着が湧いてきたのであれば、これは何物にも代えがたい成果でしょう。
その結果、今年から毎年9月を「長沼SLの日」とすることになり、毎年合宿形式でこの機関車のメンテナンスを続けようという話しになっているそうです。また、今年の作業では、運転室まわりと炭水車を中心とした補修をすることで打合せを進めているとのことです。
今後、さらに状態が良くなっていくことが期待される夕張25号機ですね。
※2016年6月10日 一部修正・更新しました。
掲載日:2016年05月27日
●伊藤 博康(いとう ひろやす)
(有)鉄道フォーラム代表。愛知県犬山市生まれ。パソコン通信NIFTY-Serve草創期から鉄道フォーラムに関わり、1992年から運営責任者。(有)鉄道フォーラムを設立後、独自サーバでサービスを継続中。著書に「日本の “珍々”踏切」(東邦出版)「鉄道ファンのためのトレインビューホテル」「鉄道名所の事典」(東京堂出版)がある。現在、中日新聞社「達人に訊け」でもコラムを連載中。
(有)鉄道フォーラム代表。愛知県犬山市生まれ。パソコン通信NIFTY-Serve草創期から鉄道フォーラムに関わり、1992年から運営責任者。(有)鉄道フォーラムを設立後、独自サーバでサービスを継続中。著書に「日本の “珍々”踏切」(東邦出版)「鉄道ファンのためのトレインビューホテル」「鉄道名所の事典」(東京堂出版)がある。現在、中日新聞社「達人に訊け」でもコラムを連載中。