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"鉄道フォーラム"代表の伊藤博康氏による鉄道コラム。
毎回幅広いテーマの中から、「乗ってみたい」「知って良かった」「へぇ~」な汽車旅関連の話題をご紹介します。お楽しみに!
毎回幅広いテーマの中から、「乗ってみたい」「知って良かった」「へぇ~」な汽車旅関連の話題をご紹介します。お楽しみに!
伝説のガソリンカーが毎月走る、足尾歴史館 [No.H191]
ガソリンカーをご存じですか?
自動車がガソリンで走るのは当たり前ですが、かつて、鉄道車両でも小規模なものにはガソリンエンジンを積んで走っていたことがあるのです。そのような車両を、ガソリンカーと呼んでいます。
今やまずお目にかかれないガソリンカーですが、毎月第一土・日曜日だけ、栃木県の足尾でその走りを見て、聞いて、乗ることができます。それが、今回紹介する足尾歴史館です。
右の写真がそのガソリンカーが走っている様子ですが、なかなか可愛らしいでしょ?
これは、かつて繁栄した足尾銅山において、資材運搬や足尾の人々の足として活躍していた車両を2009(平成21)年に復元したものです。外見こそ復元ですが、そのエンジンは現役当時とおなじ米フォード社製を探して入手したそうです。
また、後部の客車も同じく現役時代のものを忠実に復元したもので、ガソリンカーに遅れること1年で完成しました。
その車体に描かれているヤマイチマークは、鉱山業一筋の意味をこめたものです。足尾鉱山を開発した古河グループの操業者・古河市兵衛が、1877年に鉱山業に専念すると決めた際に作ったとされます。2013年からは、古河グループのグローバルロゴマークとしても使われています。
サボには「一般定時」と記されていますが、これは決まった時間に走っていた旅客列車を指すもので、足尾では「定時」と呼んで親しまれていたそうです。
前述のとおり、このガソリンカーに牽引される客車には、足尾歴史館の開館期間の第一土・日曜日に乗ることができるのですが、その客車は実に小型です。
先にご覧になった写真で、乗客が狭そうに乗っている様子がわかりますが、その車内が左の写真です。ホームに人がいますが、その人たちの大きさから、向かい合わせの椅子の幅がいかに狭いかを判っていただけるものと思います。
レールとレールの幅(ゲージ)が610mmの狭軌ですので、JR在来線の1,067mmと比べても半分近い狭さです。車体幅が狭いのも致し方ないですよね。
ちなみに、富山県の黒部峡谷鉄道や、三重県の三岐鉄道北勢線・四日市あすなろう鉄道は、国内で営業している鉄道で最も狭いゲージを使用していますが、それでも762mmです。足尾ガソリン軌道・歴史館線の610mmに比べると2-3割広いですよね。
これほど狭い車両なので、椅子の背にはモケットが貼られていませんし、椅子の下は走行用の台車の枠や車輪を避けるために、凸凹になっています。設計時の苦労が忍ばれますよね。
足尾歴史館は「NPO法人足尾歴史館」が運営している施設で、わたらせ渓谷鐵道の通洞駅から桐生方面へ線路沿いに歩いて3分ほどのところに位置しています。
毎年4月から11月までの8ヶ月間の開館で、月曜日が定休日です。(月曜日が祝日の場合は翌日に休館)開館時間は10-16時で、入館料は大人350円、子供250円です。この入館料は「一日会員券」としていて、この会費で運営費を捻出しているそうです。
今回紹介したガソリンカーは前述のとおり、毎月第一土・日曜日だけの運転ですが、その運転時には会員…つまり、入館料を払った方が無料で一日何度でも乗車できることになっています。ですから、同館に行くなら第一土日曜日がお得ですよね。
なお、足尾歴史館の館内には、江戸から昭和まで銅山の町として栄えた足尾の歴史が展示してあります。
足尾銅山は、日本初の公害事件ともいわれる鉱毒事件が起きた地でもありますので、その歴史を消すことはできません。
一方で、繁栄した時代には国鉄足尾線と先の「一般定時」のガソリンカーが活躍していましたので、そんな展示も見られます。
アクセスには、桐生からのわたらせ渓谷鐵道のほか、日光から山越えをしてくる日光市営バス「足尾JR日光駅線」があります。2-3時間に1本と多くはありませんが、日光観光と兼ねての訪問もできる地です。
掲載日:2016年06月10日
自動車がガソリンで走るのは当たり前ですが、かつて、鉄道車両でも小規模なものにはガソリンエンジンを積んで走っていたことがあるのです。そのような車両を、ガソリンカーと呼んでいます。
今やまずお目にかかれないガソリンカーですが、毎月第一土・日曜日だけ、栃木県の足尾でその走りを見て、聞いて、乗ることができます。それが、今回紹介する足尾歴史館です。
右の写真がそのガソリンカーが走っている様子ですが、なかなか可愛らしいでしょ?
これは、かつて繁栄した足尾銅山において、資材運搬や足尾の人々の足として活躍していた車両を2009(平成21)年に復元したものです。外見こそ復元ですが、そのエンジンは現役当時とおなじ米フォード社製を探して入手したそうです。
また、後部の客車も同じく現役時代のものを忠実に復元したもので、ガソリンカーに遅れること1年で完成しました。
その車体に描かれているヤマイチマークは、鉱山業一筋の意味をこめたものです。足尾鉱山を開発した古河グループの操業者・古河市兵衛が、1877年に鉱山業に専念すると決めた際に作ったとされます。2013年からは、古河グループのグローバルロゴマークとしても使われています。
サボには「一般定時」と記されていますが、これは決まった時間に走っていた旅客列車を指すもので、足尾では「定時」と呼んで親しまれていたそうです。
前述のとおり、このガソリンカーに牽引される客車には、足尾歴史館の開館期間の第一土・日曜日に乗ることができるのですが、その客車は実に小型です。
先にご覧になった写真で、乗客が狭そうに乗っている様子がわかりますが、その車内が左の写真です。ホームに人がいますが、その人たちの大きさから、向かい合わせの椅子の幅がいかに狭いかを判っていただけるものと思います。
レールとレールの幅(ゲージ)が610mmの狭軌ですので、JR在来線の1,067mmと比べても半分近い狭さです。車体幅が狭いのも致し方ないですよね。
ちなみに、富山県の黒部峡谷鉄道や、三重県の三岐鉄道北勢線・四日市あすなろう鉄道は、国内で営業している鉄道で最も狭いゲージを使用していますが、それでも762mmです。足尾ガソリン軌道・歴史館線の610mmに比べると2-3割広いですよね。
これほど狭い車両なので、椅子の背にはモケットが貼られていませんし、椅子の下は走行用の台車の枠や車輪を避けるために、凸凹になっています。設計時の苦労が忍ばれますよね。
足尾歴史館は「NPO法人足尾歴史館」が運営している施設で、わたらせ渓谷鐵道の通洞駅から桐生方面へ線路沿いに歩いて3分ほどのところに位置しています。
毎年4月から11月までの8ヶ月間の開館で、月曜日が定休日です。(月曜日が祝日の場合は翌日に休館)開館時間は10-16時で、入館料は大人350円、子供250円です。この入館料は「一日会員券」としていて、この会費で運営費を捻出しているそうです。
今回紹介したガソリンカーは前述のとおり、毎月第一土・日曜日だけの運転ですが、その運転時には会員…つまり、入館料を払った方が無料で一日何度でも乗車できることになっています。ですから、同館に行くなら第一土日曜日がお得ですよね。
なお、足尾歴史館の館内には、江戸から昭和まで銅山の町として栄えた足尾の歴史が展示してあります。
足尾銅山は、日本初の公害事件ともいわれる鉱毒事件が起きた地でもありますので、その歴史を消すことはできません。
一方で、繁栄した時代には国鉄足尾線と先の「一般定時」のガソリンカーが活躍していましたので、そんな展示も見られます。
アクセスには、桐生からのわたらせ渓谷鐵道のほか、日光から山越えをしてくる日光市営バス「足尾JR日光駅線」があります。2-3時間に1本と多くはありませんが、日光観光と兼ねての訪問もできる地です。
掲載日:2016年06月10日
●伊藤 博康(いとう ひろやす)
(有)鉄道フォーラム代表。愛知県犬山市生まれ。パソコン通信NIFTY-Serve草創期から鉄道フォーラムに関わり、1992年から運営責任者。(有)鉄道フォーラムを設立後、独自サーバでサービスを継続中。著書に「日本の “珍々”踏切」(東邦出版)「鉄道ファンのためのトレインビューホテル」「鉄道名所の事典」(東京堂出版)がある。現在、中日新聞社「達人に訊け」でもコラムを連載中。
(有)鉄道フォーラム代表。愛知県犬山市生まれ。パソコン通信NIFTY-Serve草創期から鉄道フォーラムに関わり、1992年から運営責任者。(有)鉄道フォーラムを設立後、独自サーバでサービスを継続中。著書に「日本の “珍々”踏切」(東邦出版)「鉄道ファンのためのトレインビューホテル」「鉄道名所の事典」(東京堂出版)がある。現在、中日新聞社「達人に訊け」でもコラムを連載中。