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"鉄道フォーラム"代表の伊藤博康氏による鉄道コラム。
毎回幅広いテーマの中から、「乗ってみたい」「知って良かった」「へぇ~」な汽車旅関連の話題をご紹介します。お楽しみに!
毎回幅広いテーマの中から、「乗ってみたい」「知って良かった」「へぇ~」な汽車旅関連の話題をご紹介します。お楽しみに!
廃止まであと1年強となり、にぎわう三江線 [No.H218]
JR西日本の三江線は、広島県の三次(みよし)駅と島根県の江津(ごうつ)駅を結ぶ108. 1kmのローカル線です。
沿線人口が少ない山間部を縫って走る路線だけに、利用者はとても少なくて、2018年4月1日に廃止することをJR西日本は発表しました。2016年9月30日付の発表文に記されている廃止理由には、平成26(2014)年度の輸送密度が1日あたり50人と記されています。バス一台で運べてしまう程度の人数を、一日約5往復の列車で輸送しているわけですから、採算制以前の状況ということは誰の目にも明らかでしょう。
廃止まであと1年3ヶ月となった三江線ですが、廃止報道があってから利用者が一気に増えています。実際に乗ってみると、乗り鉄のお名残乗車も見かけますが、その多くは廃止前に乗っておこうというリタイア世代の方々でした。特に、三次発9時57分の石見川本行の利用者が多いようで、同列車に途中駅から乗った私は、座る席がないほどでした。通常は単行のところ、廃止報道後は平日でも2両編成で走っているのですが、それでもこれほどの状態です。週末にはもっと混雑していることでしょう。
ちなみに、同列車で私が座れたのは潮(うしお)駅からでした。同駅で温泉へ行く人達が下車されたことで、車内に少し余裕ができたのでした。
そんな三江線ですが、中でも人気の駅が、右上の写真にある宇津井(うづい)駅です。三次駅から33.3kmの地点ですので、全線の3分の1ほど進んだ場所となります。
宇津井駅の人気の理由は、その立地にあります。
左写真をみると納得していただけることでしょう。古びたアパートのようなコンクリート製の塔があり、その最上部に高架コンクリート橋が写っていますが、ここに線路とホームがあるのです。
塔の中はすべて階段で、階段以外のものは何もありません。つまり、6階まで歩いて登っていくことになるわけです。高架駅が昨今増えているとはいえ、これほど極端な高架駅は類を見ません。それも、エレベーターもエスカレーターもない、自力で登っていくしかない構造ですので、バリアフリー対策などとても考えられないわけです。
そんな超個性的な駅だけに、人気があるのです。もっとも、人気はあっても利用する方はほとんどいません。なにせ、下車したら次の列車まで最大で日中6時間半も待たなければならないのですから。同駅の発車時刻は次の通りです。
江津方面 07:15 11:01 18:00 20:30
三次方面 06:31 08:17 17:35 19:23
さきほど、約5往復と記しましたが、この区間はこの通り4往復しかありません。それも冬場は、午後の2往復が暗闇となってしまいます。午前の2往復も、三次発が5:44と9:57、三次方面の1本目は5駅先の浜原発6:00で、2本目が江津発6:00です。三次発2本目となる9:57発の人気が高い理由がここから分かります。
ちなみに筆者は前夜に三次泊とし、三次発5:44で7:15に宇津井駅着。同駅で3時間46分過ごすことでこの写真を撮りました。このように、下車するだけでもハードルの高い駅です。
右の写真は、前述のホームへと続く階段の途中にある踊り場で撮ったものです。
ゆずりあって
ゆっくり
お進み下さい
とありますが、すれ違うような方はほぼいません(笑)
ときおり、興味本位で車を乗り付けて、ホームまで往復する“観光客”はいますが、それも一日に数えるほどの人数のようです。
その上に「あと106段」と書いてありますよね。地上から高さ約20mの位置にあるホームまでに、階段を116段上っていくことになりますが、各踊り場にこのような張り紙がされているのです。この張り紙は、一番下の踊り場にあるものですが、「あと106段」の下に、「ゴールはまだですよー」といったフレンドリーな一言も添えられています。
この張り紙は、ほぼ全ての踊り場に異なる内容で貼り出されています。地元の羽須美中学校の生徒が記したもののようです。この張り紙をひとつひとつ読み、写真を写しながら上ったら、思ったほどきつくありませんでした。
張り紙を作ってくれた生徒達に感謝!
掲載日:2016年12月16日
沿線人口が少ない山間部を縫って走る路線だけに、利用者はとても少なくて、2018年4月1日に廃止することをJR西日本は発表しました。2016年9月30日付の発表文に記されている廃止理由には、平成26(2014)年度の輸送密度が1日あたり50人と記されています。バス一台で運べてしまう程度の人数を、一日約5往復の列車で輸送しているわけですから、採算制以前の状況ということは誰の目にも明らかでしょう。
廃止まであと1年3ヶ月となった三江線ですが、廃止報道があってから利用者が一気に増えています。実際に乗ってみると、乗り鉄のお名残乗車も見かけますが、その多くは廃止前に乗っておこうというリタイア世代の方々でした。特に、三次発9時57分の石見川本行の利用者が多いようで、同列車に途中駅から乗った私は、座る席がないほどでした。通常は単行のところ、廃止報道後は平日でも2両編成で走っているのですが、それでもこれほどの状態です。週末にはもっと混雑していることでしょう。
ちなみに、同列車で私が座れたのは潮(うしお)駅からでした。同駅で温泉へ行く人達が下車されたことで、車内に少し余裕ができたのでした。
そんな三江線ですが、中でも人気の駅が、右上の写真にある宇津井(うづい)駅です。三次駅から33.3kmの地点ですので、全線の3分の1ほど進んだ場所となります。
宇津井駅の人気の理由は、その立地にあります。
左写真をみると納得していただけることでしょう。古びたアパートのようなコンクリート製の塔があり、その最上部に高架コンクリート橋が写っていますが、ここに線路とホームがあるのです。
塔の中はすべて階段で、階段以外のものは何もありません。つまり、6階まで歩いて登っていくことになるわけです。高架駅が昨今増えているとはいえ、これほど極端な高架駅は類を見ません。それも、エレベーターもエスカレーターもない、自力で登っていくしかない構造ですので、バリアフリー対策などとても考えられないわけです。
そんな超個性的な駅だけに、人気があるのです。もっとも、人気はあっても利用する方はほとんどいません。なにせ、下車したら次の列車まで最大で日中6時間半も待たなければならないのですから。同駅の発車時刻は次の通りです。
江津方面 07:15 11:01 18:00 20:30
三次方面 06:31 08:17 17:35 19:23
さきほど、約5往復と記しましたが、この区間はこの通り4往復しかありません。それも冬場は、午後の2往復が暗闇となってしまいます。午前の2往復も、三次発が5:44と9:57、三次方面の1本目は5駅先の浜原発6:00で、2本目が江津発6:00です。三次発2本目となる9:57発の人気が高い理由がここから分かります。
ちなみに筆者は前夜に三次泊とし、三次発5:44で7:15に宇津井駅着。同駅で3時間46分過ごすことでこの写真を撮りました。このように、下車するだけでもハードルの高い駅です。
右の写真は、前述のホームへと続く階段の途中にある踊り場で撮ったものです。
ゆずりあって
ゆっくり
お進み下さい
とありますが、すれ違うような方はほぼいません(笑)
ときおり、興味本位で車を乗り付けて、ホームまで往復する“観光客”はいますが、それも一日に数えるほどの人数のようです。
その上に「あと106段」と書いてありますよね。地上から高さ約20mの位置にあるホームまでに、階段を116段上っていくことになりますが、各踊り場にこのような張り紙がされているのです。この張り紙は、一番下の踊り場にあるものですが、「あと106段」の下に、「ゴールはまだですよー」といったフレンドリーな一言も添えられています。
この張り紙は、ほぼ全ての踊り場に異なる内容で貼り出されています。地元の羽須美中学校の生徒が記したもののようです。この張り紙をひとつひとつ読み、写真を写しながら上ったら、思ったほどきつくありませんでした。
張り紙を作ってくれた生徒達に感謝!
掲載日:2016年12月16日
●伊藤 博康(いとう ひろやす)
(有)鉄道フォーラム代表。愛知県犬山市生まれ。パソコン通信NIFTY-Serve草創期から鉄道フォーラムに関わり、1992年から運営責任者。(有)鉄道フォーラムを設立後、独自サーバでサービスを継続中。著書に「日本の “珍々”踏切」(東邦出版)「鉄道ファンのためのトレインビューホテル」「鉄道名所の事典」(東京堂出版)がある。現在、中日新聞社「達人に訊け」でもコラムを連載中。
(有)鉄道フォーラム代表。愛知県犬山市生まれ。パソコン通信NIFTY-Serve草創期から鉄道フォーラムに関わり、1992年から運営責任者。(有)鉄道フォーラムを設立後、独自サーバでサービスを継続中。著書に「日本の “珍々”踏切」(東邦出版)「鉄道ファンのためのトレインビューホテル」「鉄道名所の事典」(東京堂出版)がある。現在、中日新聞社「達人に訊け」でもコラムを連載中。