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"鉄道フォーラム"代表の伊藤博康氏による鉄道コラム。
毎回幅広いテーマの中から、「乗ってみたい」「知って良かった」「へぇ~」な汽車旅関連の話題をご紹介します。お楽しみに!
毎回幅広いテーマの中から、「乗ってみたい」「知って良かった」「へぇ~」な汽車旅関連の話題をご紹介します。お楽しみに!
秩父鉄道の「SLパレオエクスプレス」が30周年 [No.H231]
「都心から一番近い蒸気機関車」を標榜する秩父鉄道の「SLパレオエクスプレス」が、今年も3月18日(土)から走り始めました。
走行区間は、熊谷~寄居~秩父~三峰口間56. 8kmで、往路は熊谷10:10発、三峰口12:50着と昼食を車内で食べられる時間帯です。復路は、三峰口14:03発、熊谷16:18着という、行楽帰りにちょうど良い時間となっています。
熊谷駅は、上越新幹線や高崎線との乗換駅ですし、寄居駅は東武東上線や八高線との乗換駅です。秩父駅の隣にある御花畑駅にも停車しますが、ここは西武秩父線の終点・西武秩父駅と徒歩連絡している駅です。つまり、首都圏の多くの地からアクセスしやすい立地というわけです。
さらに、長瀞付近では渓谷美を楽しめるとともに、秩父付近では武甲山のどっしりとした山容が楽しめます。沿線には秩父の町巡りや、秩父三社・秩父札所めぐりといった神社仏閣から、長瀞ライン下りや宝登山ロープウェイなど、みどころが豊富にあります。ハイキングコースも充実しています。
4月中旬から5月上旬にかけては、御花畑駅から徒歩約20分のところに位置する秩父羊山公園の「芝桜の丘」が見頃を迎えます。
これらの観光地への往復の足として、週末を中心に運転されているのが「SLパレオエクスプレス」なのです。
「SLパレオエクスプレス」とは変わった列車名ですが、秩父地方に2000万年ほど前に生息していたとされる海獣「パレオパラドキシア」にちなんだ命名だそうです。
昭和63(1988)年3月19日~5月29日に熊谷市で開かれた「さいたま博覧会」に合わせて登場した列車で、当時は蒸気機関車C58 363のテンダー(炭水車)の側面に、左の写真のとおり「PALEO EXPRESS」の文字とエンブレムが付いていました。さらに、機関車正面の一部にも「PALEO EXPRESS」の文字が記されていました。
観光的にはこのような装飾も良いのでしょうが、鉄道好きからは余計な装飾で残念だという声がでていました。そのこともあってか、いまは最初の写真にあるとおり、通常走行日には30周年の記念ヘッドマークすらつけない、素のままのきれいな姿で走っています。
牽引するのはC58形363号機です。
いまから45年前となる昭和47(1972)年に引退したあと、高崎線吹上駅近くにある吹上小学校で静態保存されていたそうです。それを動態復活させたのです。
運行当初は、(財)埼玉県北部観光振興財団が車両を所有し、秩父鉄道が委託を受けて運行する形でした。それが、平成15(2003)年から秩父鉄道が独自に運行する形に変わっています。
当初、C58に牽引される客車は、蒸気機関車時代に多く活躍していた旧形客車と呼ばれる手動扉の車両でした。それを、平成12(2000)年には今使用してる12系客車に変更したことで冷房付きとなり、より快適な汽車旅を楽しめるようになりました。
「SLパレオエクスプレス」は、三峰口駅で折り返しとなります。
その折り返し時間は1時間13分ありますが、乗務員たちは、そのあいだにもやることがいろいろとあります。
まずは、牽引してきた客車を切り離して前進します。三峰口駅の構内外れまで進むと、折り返してかつての貨物ホームに横付けします。ここで、復路用の給水をするのです。給水には30分ほどかかりますが、その間に火床整理と呼ばれる、火室にたまった灰を均(なら)して復路の運転で火の通りが良いようにします。また、テンダーの石炭は運転席に近い部分を使っているので、炭庫に登ってショベルで運転席に近いところへと石炭を寄せる作業があります。並行して、足回りの状態のチェックなどもあります。
給水が終わると、もう一度構内外れまで進み、今度はバックで留置線の一番奥の線路へと進みます。この線路の終端部分に転車台(ターンテーブル)があるのです。
転車台まで続く線路の脇は、貨車が展示してある「鉄道車両公園」となっています。誰でも無料で行くことができるので、「SLパレオエクスプレス」の乗客たちの多くは、ここに来て機関車を待ったり、持参したお弁当を食べたりします。
転車台では、C58が復路の列車の先頭にたったときに前向きになるよう方向転換するのですが、その様子も見どころとなっています。その様子は、フェンス越しながらC58を間近に見られるので、大きさに驚いたり、各部の様子を観察するなどの楽しみ方ができます。
右上の写真の通り、かつてテンダーについていた「PALEO EXPRESS」の文字とエンブレムはなくなっています。一方、ナンバープレートは「C58 363」のすぐ下に「形式C58」と記された“形式入りプレート”が長年使われています。
C58は構内を転線し、来たときと反対側の客車端に連結すると、出発準備完了となります。
やがて出発時間となり、汽笛一声、三峰口を力強く発車していきました。
復路は、多くが下り勾配という乗務員にとっては比較的楽な線形です。大勢の乗客を乗せて、熊谷駅までの復路の旅が始まりました。
掲載日:2017年03月31日
走行区間は、熊谷~寄居~秩父~三峰口間56. 8kmで、往路は熊谷10:10発、三峰口12:50着と昼食を車内で食べられる時間帯です。復路は、三峰口14:03発、熊谷16:18着という、行楽帰りにちょうど良い時間となっています。
熊谷駅は、上越新幹線や高崎線との乗換駅ですし、寄居駅は東武東上線や八高線との乗換駅です。秩父駅の隣にある御花畑駅にも停車しますが、ここは西武秩父線の終点・西武秩父駅と徒歩連絡している駅です。つまり、首都圏の多くの地からアクセスしやすい立地というわけです。
さらに、長瀞付近では渓谷美を楽しめるとともに、秩父付近では武甲山のどっしりとした山容が楽しめます。沿線には秩父の町巡りや、秩父三社・秩父札所めぐりといった神社仏閣から、長瀞ライン下りや宝登山ロープウェイなど、みどころが豊富にあります。ハイキングコースも充実しています。
4月中旬から5月上旬にかけては、御花畑駅から徒歩約20分のところに位置する秩父羊山公園の「芝桜の丘」が見頃を迎えます。
これらの観光地への往復の足として、週末を中心に運転されているのが「SLパレオエクスプレス」なのです。
「SLパレオエクスプレス」とは変わった列車名ですが、秩父地方に2000万年ほど前に生息していたとされる海獣「パレオパラドキシア」にちなんだ命名だそうです。
昭和63(1988)年3月19日~5月29日に熊谷市で開かれた「さいたま博覧会」に合わせて登場した列車で、当時は蒸気機関車C58 363のテンダー(炭水車)の側面に、左の写真のとおり「PALEO EXPRESS」の文字とエンブレムが付いていました。さらに、機関車正面の一部にも「PALEO EXPRESS」の文字が記されていました。
観光的にはこのような装飾も良いのでしょうが、鉄道好きからは余計な装飾で残念だという声がでていました。そのこともあってか、いまは最初の写真にあるとおり、通常走行日には30周年の記念ヘッドマークすらつけない、素のままのきれいな姿で走っています。
牽引するのはC58形363号機です。
いまから45年前となる昭和47(1972)年に引退したあと、高崎線吹上駅近くにある吹上小学校で静態保存されていたそうです。それを動態復活させたのです。
運行当初は、(財)埼玉県北部観光振興財団が車両を所有し、秩父鉄道が委託を受けて運行する形でした。それが、平成15(2003)年から秩父鉄道が独自に運行する形に変わっています。
当初、C58に牽引される客車は、蒸気機関車時代に多く活躍していた旧形客車と呼ばれる手動扉の車両でした。それを、平成12(2000)年には今使用してる12系客車に変更したことで冷房付きとなり、より快適な汽車旅を楽しめるようになりました。
「SLパレオエクスプレス」は、三峰口駅で折り返しとなります。
その折り返し時間は1時間13分ありますが、乗務員たちは、そのあいだにもやることがいろいろとあります。
まずは、牽引してきた客車を切り離して前進します。三峰口駅の構内外れまで進むと、折り返してかつての貨物ホームに横付けします。ここで、復路用の給水をするのです。給水には30分ほどかかりますが、その間に火床整理と呼ばれる、火室にたまった灰を均(なら)して復路の運転で火の通りが良いようにします。また、テンダーの石炭は運転席に近い部分を使っているので、炭庫に登ってショベルで運転席に近いところへと石炭を寄せる作業があります。並行して、足回りの状態のチェックなどもあります。
給水が終わると、もう一度構内外れまで進み、今度はバックで留置線の一番奥の線路へと進みます。この線路の終端部分に転車台(ターンテーブル)があるのです。
転車台まで続く線路の脇は、貨車が展示してある「鉄道車両公園」となっています。誰でも無料で行くことができるので、「SLパレオエクスプレス」の乗客たちの多くは、ここに来て機関車を待ったり、持参したお弁当を食べたりします。
転車台では、C58が復路の列車の先頭にたったときに前向きになるよう方向転換するのですが、その様子も見どころとなっています。その様子は、フェンス越しながらC58を間近に見られるので、大きさに驚いたり、各部の様子を観察するなどの楽しみ方ができます。
右上の写真の通り、かつてテンダーについていた「PALEO EXPRESS」の文字とエンブレムはなくなっています。一方、ナンバープレートは「C58 363」のすぐ下に「形式C58」と記された“形式入りプレート”が長年使われています。
C58は構内を転線し、来たときと反対側の客車端に連結すると、出発準備完了となります。
やがて出発時間となり、汽笛一声、三峰口を力強く発車していきました。
復路は、多くが下り勾配という乗務員にとっては比較的楽な線形です。大勢の乗客を乗せて、熊谷駅までの復路の旅が始まりました。
掲載日:2017年03月31日
●伊藤 博康(いとう ひろやす)
(有)鉄道フォーラム代表。愛知県犬山市生まれ。パソコン通信NIFTY-Serve草創期から鉄道フォーラムに関わり、1992年から運営責任者。(有)鉄道フォーラムを設立後、独自サーバでサービスを継続中。著書に「日本の “珍々”踏切」(東邦出版)「鉄道ファンのためのトレインビューホテル」「鉄道名所の事典」(東京堂出版)がある。現在、中日新聞社「達人に訊け」でもコラムを連載中。
(有)鉄道フォーラム代表。愛知県犬山市生まれ。パソコン通信NIFTY-Serve草創期から鉄道フォーラムに関わり、1992年から運営責任者。(有)鉄道フォーラムを設立後、独自サーバでサービスを継続中。著書に「日本の “珍々”踏切」(東邦出版)「鉄道ファンのためのトレインビューホテル」「鉄道名所の事典」(東京堂出版)がある。現在、中日新聞社「達人に訊け」でもコラムを連載中。