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"鉄道フォーラム"代表の伊藤博康氏による鉄道コラム。
毎回幅広いテーマの中から、「乗ってみたい」「知って良かった」「へぇ~」な汽車旅関連の話題をご紹介します。お楽しみに!
毎回幅広いテーマの中から、「乗ってみたい」「知って良かった」「へぇ~」な汽車旅関連の話題をご紹介します。お楽しみに!
柴又で寅さんに会い、矢切の渡しで野菊の墓へ [No.H238]
東京都葛飾区柴又といえば、映画「男はつらいよ」の寅さんが旅立った場所として、誰もが知るところですよね。京成電鉄金町線の柴又駅前には、そのシーンを再現した「寅さん」像が建っているのですが、振り返った視線の先には何もありませんでした。
そこには本来、見送りにきた妹の「さくら」が心配そうな顔をしているいるはず… ということで、今春、新たに「さくら」像が建立されました。3月25日の除幕式には、山田洋次監督と、同映画で「さくら」を演じた女優・倍賞千恵子さんが参加したということです。
「さくら」像は、倍賞美津子さんの等身大に造られているとのことです。その台座には、映画の当該シーンの台本が記され、その文末には山田洋次監督のサインも彫られています。
これまでも、柴又駅で下車した人はまず「寅さん」像を写し、一緒に記念写真を撮ってから駅前広場を後にしていました。そこに「さくら」像も登場したので、下車した人達の駅前滞在時間がさらに延びた様子でした。
おかげで、平日の日中に行ったにもかかわらず、この写真を撮るまでに少々時間を要することになりました。
柴又駅で下車した人の多くは、駅前から始まる参道を歩いて柴又帝釈天を目指します。古くから人気のある寺院で、その参道もいつも賑わっています。
柴又帝釈天を参拝したあと、さきほどきた参道には戻らず、さらに先を目指します。すると、すぐに江戸川の堤防に突き当たります。その堤防を超えて川原の柴又公園内を進んだところに、「矢切の渡し」の乗り場があります。
「矢切の渡し」は江戸時代から江戸川にあった渡し船の一つで、唯一、今も残るものです。3月中旬から11月末までは毎日運行、冬季は土休日と庚申の日だけの運行です。毎日10時~16時に随時運行していますが、荒天時には欠航となります。料金は片道大人200円、子ども100円です。
のんびりとした手こぎで渡る江戸川は、川風が吹いて気持ちが良いものです。少し下流に北総鉄道の鉄橋があり、ときおり成田空港へ行くスカイライナーが走り抜けます。遠くにはスカイツリーも見えます。
5分ほどで渡った先は千葉県松戸市になります。江戸川は、東京都と千葉県の境を流れているのです。
「矢切の渡し」を降りて千葉県に上陸すると、多くの人は小休止のあと再び舟に乗り、もとの岸に戻ります。
対岸へは戻らず、川原から堤防を越えると、松戸行きのバス停もありますが、右の写真の「野菊のこみち」の矢印も見えます。これは、この地を舞台にした伊藤左千夫の小説「野菊の墓」ゆかりの地へと案内するものです。
この一帯は畑で、そのなかの農道を「野菊のこみち」として整備してあるので、道中の大半は車に気を遣うことなく、安心してマイペースで歩くことができます。途中、小さな川を渡る矢切橋の袂には、「野菊の墓」100周年記念碑もあります。
さらに歩いて高台が迫ってくると、やや急な坂を登って西蓮寺に着きます。ここに「野菊の墓文学碑」があり、展望台からはいま歩いてきた一帯を一望できます。
ここまで、矢切の渡しを下船してから徒歩で約20分です。近くに松戸や市川へ行くバス停もありますが、10分歩くと北総鉄道の矢切駅に着きます。
気持ちの良い週末に、柴又の「寅さん」と「さくら」の像を楽しみ、参道を楽しみ、柴又帝釈天に参拝してから「矢切の渡し」で「野菊の墓」ゆかりの地へと散策する半日を過ごしてみてはいかがでしょうか。
掲載日:2017年05月26日
そこには本来、見送りにきた妹の「さくら」が心配そうな顔をしているいるはず… ということで、今春、新たに「さくら」像が建立されました。3月25日の除幕式には、山田洋次監督と、同映画で「さくら」を演じた女優・倍賞千恵子さんが参加したということです。
「さくら」像は、倍賞美津子さんの等身大に造られているとのことです。その台座には、映画の当該シーンの台本が記され、その文末には山田洋次監督のサインも彫られています。
これまでも、柴又駅で下車した人はまず「寅さん」像を写し、一緒に記念写真を撮ってから駅前広場を後にしていました。そこに「さくら」像も登場したので、下車した人達の駅前滞在時間がさらに延びた様子でした。
おかげで、平日の日中に行ったにもかかわらず、この写真を撮るまでに少々時間を要することになりました。
柴又駅で下車した人の多くは、駅前から始まる参道を歩いて柴又帝釈天を目指します。古くから人気のある寺院で、その参道もいつも賑わっています。
柴又帝釈天を参拝したあと、さきほどきた参道には戻らず、さらに先を目指します。すると、すぐに江戸川の堤防に突き当たります。その堤防を超えて川原の柴又公園内を進んだところに、「矢切の渡し」の乗り場があります。
「矢切の渡し」は江戸時代から江戸川にあった渡し船の一つで、唯一、今も残るものです。3月中旬から11月末までは毎日運行、冬季は土休日と庚申の日だけの運行です。毎日10時~16時に随時運行していますが、荒天時には欠航となります。料金は片道大人200円、子ども100円です。
のんびりとした手こぎで渡る江戸川は、川風が吹いて気持ちが良いものです。少し下流に北総鉄道の鉄橋があり、ときおり成田空港へ行くスカイライナーが走り抜けます。遠くにはスカイツリーも見えます。
5分ほどで渡った先は千葉県松戸市になります。江戸川は、東京都と千葉県の境を流れているのです。
「矢切の渡し」を降りて千葉県に上陸すると、多くの人は小休止のあと再び舟に乗り、もとの岸に戻ります。
対岸へは戻らず、川原から堤防を越えると、松戸行きのバス停もありますが、右の写真の「野菊のこみち」の矢印も見えます。これは、この地を舞台にした伊藤左千夫の小説「野菊の墓」ゆかりの地へと案内するものです。
この一帯は畑で、そのなかの農道を「野菊のこみち」として整備してあるので、道中の大半は車に気を遣うことなく、安心してマイペースで歩くことができます。途中、小さな川を渡る矢切橋の袂には、「野菊の墓」100周年記念碑もあります。
さらに歩いて高台が迫ってくると、やや急な坂を登って西蓮寺に着きます。ここに「野菊の墓文学碑」があり、展望台からはいま歩いてきた一帯を一望できます。
ここまで、矢切の渡しを下船してから徒歩で約20分です。近くに松戸や市川へ行くバス停もありますが、10分歩くと北総鉄道の矢切駅に着きます。
気持ちの良い週末に、柴又の「寅さん」と「さくら」の像を楽しみ、参道を楽しみ、柴又帝釈天に参拝してから「矢切の渡し」で「野菊の墓」ゆかりの地へと散策する半日を過ごしてみてはいかがでしょうか。
掲載日:2017年05月26日
●伊藤 博康(いとう ひろやす)
(有)鉄道フォーラム代表。愛知県犬山市生まれ。パソコン通信NIFTY-Serve草創期から鉄道フォーラムに関わり、1992年から運営責任者。(有)鉄道フォーラムを設立後、独自サーバでサービスを継続中。著書に「日本の “珍々”踏切」(東邦出版)「鉄道ファンのためのトレインビューホテル」「鉄道名所の事典」(東京堂出版)がある。現在、中日新聞社「達人に訊け」でもコラムを連載中。
(有)鉄道フォーラム代表。愛知県犬山市生まれ。パソコン通信NIFTY-Serve草創期から鉄道フォーラムに関わり、1992年から運営責任者。(有)鉄道フォーラムを設立後、独自サーバでサービスを継続中。著書に「日本の “珍々”踏切」(東邦出版)「鉄道ファンのためのトレインビューホテル」「鉄道名所の事典」(東京堂出版)がある。現在、中日新聞社「達人に訊け」でもコラムを連載中。