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"鉄道フォーラム"代表の伊藤博康氏による鉄道コラム。
毎回幅広いテーマの中から、「乗ってみたい」「知って良かった」「へぇ~」な汽車旅関連の話題をご紹介します。お楽しみに!
毎回幅広いテーマの中から、「乗ってみたい」「知って良かった」「へぇ~」な汽車旅関連の話題をご紹介します。お楽しみに!
鉄旅オブザイヤー受賞の「ながまれ海峡号」の魅力3 [No.H244]
日本旅行が運行する道南いさりび鉄道の観光列車「ながまれ海峡号」の3回目です。
前2回も併せてご覧下さいね。
駅の立ち売りを楽しんだ上磯駅を発車すると、わずか8分で再び停車します。
その場所は、函館湾の先に浮かぶ函館山の景色が楽しめる場所です。北海道新幹線は内陸部を進みますが、道南いさりび鉄道は函館湾に沿って進むため、沿線は風光明媚です。その函館湾の向こうには函館山が聳えていて、列車の進行につれ見える角度が少しずつ変わっていく様子を楽しむことができます。これぞ、日本旅行が観光列車を走らせる価値があると見こんだ景色なのです。
函館湾の景色は、ここ矢不来信号場からはじまります。信号場…つまり駅ではありません。通常、道南いさりび鉄道の列車は通過しています。貨物列車だけが、単線のため対向列車を待避するために停車するところです。そこに敢えて「ながまれ海峡号」を停車させるのは、前述の眺めの良さとともに、鉄道好きにとっては当列車だけしか乗ることができないという希少性があるためです。
とはいえ、貨物列車1本と道南いさりび鉄道の普通列車2本を待避するため、停車時間は28分にもなります。そのあいだ扉は開きません。車内にトイレはあるし、上磯駅で体を動かしたところですので、各自好き勝手に過ごしても良さそうですが、さすがに28分の間は持ちません。
停車した列車内では、矢不来信号場の説明に続けて停車時間が28分と案内されます。さらに函館湾に見られる漁り火の話題を出します。イカ釣り漁船は、深夜に漁り火を焚いて漁をします。筆者も、かつて青函連絡船からみた漁り火を記憶しています。その漁り火に使うランプは意外なほど大きなものですが、身近に見る機会はそうそうあるものではありません。
その実物を列車に積んであり、これから各席に持って伺いますということです。同時に、駅長帽も持参して、ボックス座席ごとにランプを見せつつ駅長帽を被っての記念撮影をしています。28分の停車時間を如何に退屈させないようにするかの工夫が感じられます。
ところで、わずか1両で運転する「ながまれ海峡号」ですが、木古内駅側のロングシート部は販売せず、スタッフの準備室としています。その客室と準備室の間には大漁旗を幕として張ってあります。わずかこれだけのことですけど、雰囲気が出るものですね。また、車内には天井を中心に海産物の模型が飾られていて、特別な列車感を出しています。
これらの飾り付けは、テーブル設置とともに車庫で行うそうです。また、ディナーコースの翌日となる日曜日に今年からランチコースをはじめましたが、その運行を終わるとすべてを片付けるということです。
昨年の経験から慣れたし、休日出勤してくれる社員が手伝ってくれるので片付けが早くなったとアテンダントさんは言われていましたが、それでも1時間以上かかり、出区前の飾り付けは更に時間がかかるとのことです。
矢不来信号場を発車したあとも、交換待ちで茂辺地駅に停車したうえで、往路終点の木古内駅を目指します。矢不来信号場から木古内駅までの所要時間は約1時間10分。函館駅を発車してから1時間55分の17:45に到着です。函館~木古内間は41. 2kmですから、表定時速は20km強となります。この頃には、発車時に食べた「函館海鮮スイーツ丼」の満腹感もなくなっています。
木古内駅前は北海道新幹線開業に合わせて再開発され、「道の駅 みそぎの舞きこない」ができました。ここは地元の土産物がそろううえ、食についても充実しているとして開業以来人気です。来訪者の多くは「道の駅」だけに車利用のようですが、鉄道利用者も列車を待つ間に利用したり、レンタカーを借りたりしているようです。
その道の駅の一角にあるパン屋さん「コッぺん道土(こっぺんどっと)」は、塩パンが人気のお店です。ただ、「道の駅」全体が18時までの営業なので、到着してから注目しても間に合いません。そこで、函館駅で受付をする際に注文書を渡されます。希望者は、そこに希望数を記入して添乗員さんに渡せば、到着時にお店で受け取ることができるようになっています。一口サイズの塩パンが5個で230円。できたてはもちろん美味しいですが、持ち帰って翌日の朝食としてもおいしそうです。
この道の駅には、もうひとつ人気のお店があります。レストラン「どうなんde's Okuda Spirits」で、山形県鶴岡市で有名レストランを開設している奥田政行氏が監修するイタリアンレストランです。木古内町は鶴岡市からやってきた人達によって開拓された町で、廃止された江差線木古内駅~江差駅間の木古内駅の次の駅が渡島鶴岡駅という、まさに鶴岡出身者が開拓したところです。その縁で、開かれたレストランです。
木古内駅での折返し発車までは37分しかありませんので、同レストランに寄ることはできません。しかし、帰路の車内で同レストランの食事が食べられます。
次回は、いよいよディナーコースのメインディッシュです。
掲載日:2017年07月07日
前2回も併せてご覧下さいね。
駅の立ち売りを楽しんだ上磯駅を発車すると、わずか8分で再び停車します。
その場所は、函館湾の先に浮かぶ函館山の景色が楽しめる場所です。北海道新幹線は内陸部を進みますが、道南いさりび鉄道は函館湾に沿って進むため、沿線は風光明媚です。その函館湾の向こうには函館山が聳えていて、列車の進行につれ見える角度が少しずつ変わっていく様子を楽しむことができます。これぞ、日本旅行が観光列車を走らせる価値があると見こんだ景色なのです。
函館湾の景色は、ここ矢不来信号場からはじまります。信号場…つまり駅ではありません。通常、道南いさりび鉄道の列車は通過しています。貨物列車だけが、単線のため対向列車を待避するために停車するところです。そこに敢えて「ながまれ海峡号」を停車させるのは、前述の眺めの良さとともに、鉄道好きにとっては当列車だけしか乗ることができないという希少性があるためです。
とはいえ、貨物列車1本と道南いさりび鉄道の普通列車2本を待避するため、停車時間は28分にもなります。そのあいだ扉は開きません。車内にトイレはあるし、上磯駅で体を動かしたところですので、各自好き勝手に過ごしても良さそうですが、さすがに28分の間は持ちません。
停車した列車内では、矢不来信号場の説明に続けて停車時間が28分と案内されます。さらに函館湾に見られる漁り火の話題を出します。イカ釣り漁船は、深夜に漁り火を焚いて漁をします。筆者も、かつて青函連絡船からみた漁り火を記憶しています。その漁り火に使うランプは意外なほど大きなものですが、身近に見る機会はそうそうあるものではありません。
その実物を列車に積んであり、これから各席に持って伺いますということです。同時に、駅長帽も持参して、ボックス座席ごとにランプを見せつつ駅長帽を被っての記念撮影をしています。28分の停車時間を如何に退屈させないようにするかの工夫が感じられます。
ところで、わずか1両で運転する「ながまれ海峡号」ですが、木古内駅側のロングシート部は販売せず、スタッフの準備室としています。その客室と準備室の間には大漁旗を幕として張ってあります。わずかこれだけのことですけど、雰囲気が出るものですね。また、車内には天井を中心に海産物の模型が飾られていて、特別な列車感を出しています。
これらの飾り付けは、テーブル設置とともに車庫で行うそうです。また、ディナーコースの翌日となる日曜日に今年からランチコースをはじめましたが、その運行を終わるとすべてを片付けるということです。
昨年の経験から慣れたし、休日出勤してくれる社員が手伝ってくれるので片付けが早くなったとアテンダントさんは言われていましたが、それでも1時間以上かかり、出区前の飾り付けは更に時間がかかるとのことです。
矢不来信号場を発車したあとも、交換待ちで茂辺地駅に停車したうえで、往路終点の木古内駅を目指します。矢不来信号場から木古内駅までの所要時間は約1時間10分。函館駅を発車してから1時間55分の17:45に到着です。函館~木古内間は41. 2kmですから、表定時速は20km強となります。この頃には、発車時に食べた「函館海鮮スイーツ丼」の満腹感もなくなっています。
木古内駅前は北海道新幹線開業に合わせて再開発され、「道の駅 みそぎの舞きこない」ができました。ここは地元の土産物がそろううえ、食についても充実しているとして開業以来人気です。来訪者の多くは「道の駅」だけに車利用のようですが、鉄道利用者も列車を待つ間に利用したり、レンタカーを借りたりしているようです。
その道の駅の一角にあるパン屋さん「コッぺん道土(こっぺんどっと)」は、塩パンが人気のお店です。ただ、「道の駅」全体が18時までの営業なので、到着してから注目しても間に合いません。そこで、函館駅で受付をする際に注文書を渡されます。希望者は、そこに希望数を記入して添乗員さんに渡せば、到着時にお店で受け取ることができるようになっています。一口サイズの塩パンが5個で230円。できたてはもちろん美味しいですが、持ち帰って翌日の朝食としてもおいしそうです。
この道の駅には、もうひとつ人気のお店があります。レストラン「どうなんde's Okuda Spirits」で、山形県鶴岡市で有名レストランを開設している奥田政行氏が監修するイタリアンレストランです。木古内町は鶴岡市からやってきた人達によって開拓された町で、廃止された江差線木古内駅~江差駅間の木古内駅の次の駅が渡島鶴岡駅という、まさに鶴岡出身者が開拓したところです。その縁で、開かれたレストランです。
木古内駅での折返し発車までは37分しかありませんので、同レストランに寄ることはできません。しかし、帰路の車内で同レストランの食事が食べられます。
次回は、いよいよディナーコースのメインディッシュです。
掲載日:2017年07月07日
●伊藤 博康(いとう ひろやす)
(有)鉄道フォーラム代表。愛知県犬山市生まれ。パソコン通信NIFTY-Serve草創期から鉄道フォーラムに関わり、1992年から運営責任者。(有)鉄道フォーラムを設立後、独自サーバでサービスを継続中。著書に「日本の “珍々”踏切」(東邦出版)「鉄道ファンのためのトレインビューホテル」「鉄道名所の事典」(東京堂出版)がある。現在、中日新聞社「達人に訊け」でもコラムを連載中。
(有)鉄道フォーラム代表。愛知県犬山市生まれ。パソコン通信NIFTY-Serve草創期から鉄道フォーラムに関わり、1992年から運営責任者。(有)鉄道フォーラムを設立後、独自サーバでサービスを継続中。著書に「日本の “珍々”踏切」(東邦出版)「鉄道ファンのためのトレインビューホテル」「鉄道名所の事典」(東京堂出版)がある。現在、中日新聞社「達人に訊け」でもコラムを連載中。