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汽車旅ひろば - ひろやすの汽車旅コラム

汽車旅ひろば


  • ひろやすの汽車旅コラム
"鉄道フォーラム"代表の伊藤博康氏による鉄道コラム。
毎回幅広いテーマの中から、「乗ってみたい」「知って良かった」「へぇ~」な汽車旅関連の話題をご紹介します。お楽しみに!

寝台特急「北斗星」を残す“茂辺地 北斗星広場” [No.H246]

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茂辺地駅近くにグランドオープンした「北斗星広場」。寝台特急「北斗星」用客車2両を保存する。[撮影:永山 茂]
青函トンネルの開通と同時に、新たな時代の列車として鳴り物入りで登場した寝台特急「北斗星」は、上野~札幌間を結ぶ人気列車でした。JR誕生の翌年となる1988年3月13日に走りはじめ、北海道新幹線の本格試運転が始まる直前の2015年8月23日まで27年あまり走り続けました。
運転を始めた頃、寝台列車はすでに衰退の一途を辿っていました。しかし北斗星は個室が多く、食堂車とラウンジカーそれにシャワーもある豪華列車として注目され、連日満員盛況のスタートとなりました。その後に登場した大阪発の寝台特急「トワイライトエクスプレス」とともに、北海道への優雅な旅にはぜひ乗りたい列車と位置付けられます。
この「北斗星」の成功は、目的地への移動そのものを楽しむ交通手段の提供という意味で、それまでは長距離フェリーやクルーズ船が担っていた分野に鉄道も参入できることを証明しました。いま話題の「ななつ星in九州」「TRAIN SUITE 四季島」「トワイライトエクスプレス瑞風」をはじめ、全国で走るようになった観光列車の元祖ともいえる列車でした。
その寝台特急「北斗星」が、青函トンネルを抜けて北海道を走りはじめてすぐに通過した茂辺地駅の近くに、昨年、2両の「北斗星」で使われた車両が保存されました。旧茂辺地中学校グラウンド跡地で、地元の北斗市茂辺地地区創生会議が整備を続けて、去る6月25日に「茂辺地 北斗星広場」としてグランドオープンしました。
先週まで4回連載した道南いさりび鉄道の観光列車「ながまれ海峡号」の車内からも、この保存車両を見ることができます。


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車内はほぼ現役当時のまま。ミニロビーに入った瞬間、かつて「北斗星」車内で過ごした記憶が甦った。
保存された客車は、半室が個室B寝台ソロで、残る半室がロビー室とシャワー室となっているスハネ25 501。それに、最後尾に連結される車掌室付き開放B寝台車オハネフ25 2の2両です。
地元有志が結成した「北斗の星に願いをプロジェクト推進委員会」が、昨年3月から4月にかけて、WEB上での寄付金集め「クラウドファンディング」で目標1,000万円を掲げて協力を呼びかけました。それがみごとに成功し、1,500万円超の寄付金が集まりました。(「解体の危機にある27年間愛された寝台列車「北斗星」を守りたい!」)その寄付金を使いJR北海道から譲り受けて同地に運び入れた2両です。
スハネ25 501の車端部にウッドデッキを設けて、連結面から車内に入って見学が出来るようになっています。その車内を撮影したのが上の写真です。JR北海道編成特有のミニロビーとも呼ばれた半室ロビーの先には公衆電話ボックスがあり、その奥はシャワー室になっています。
公衆電話もシャワー室ももちろん使用できませんが、背後に続くB寝台ともども火曜日を除く毎日、11時~18時に無料で見学ができます。北斗星に何度も乗ったことがある筆者は、ロビーカーに乗るなりかつて車内で過ごした記憶が甦りました。その感覚は、文章では表すことができない独特のもので、自分でもそのような感覚になったことに驚きました。
北斗星を利用したことがある方はもちろん、残念ながら乗り逃した方も、当時の寝台客車がどのようなものであったかを知るために、函館方面へ行く機会に立ち寄ることをお勧めします。


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併設してオープンした中華料理店「北斗軒」の店内からみた、「北斗星」保存車両。(開店前に撮影)
前記ロビーカー内からの写真には、右側の車窓に青いコンテナが写っています。これは海上コンテナを改造した中華料理店です。この写真を撮ったときはグランドオープン前だったため、まだ店舗の雰囲気ではありませんが、最初の写真では、店舗の幟が立っていることを見ていただけると思います。
その店舗内部から、カウンター越しに撮ったのが右の写真です。ここで食事をしながら眺めるのもいい雰囲気ですよね。

この中華料理店の店主は、漫画「北斗の拳」の大ファンでいられるそうです。その好きさが高じて、いずれ北斗市に住みたいと思っていたところに、この「北斗星広場」の話があったことで、札幌市内から夫妻で移住されたそうです。
札幌市内では、化学調味料無添加のこだわり食材を使った人気中華料理店を経営されていたそうです。北斗星広場の新店は「北斗軒」という店名です。「北斗の拳」となんだか似てますね。茂辺地小児童が名付けたそうです。
メニューには北斗市特産のホッキ貝を使った「北寄炒飯」(800円)や、かつて茂辺地にあった人気ラーメン店の味を再現した「茂辺地ラーメン」(700円)など、茂辺地ならではの味が並びます。
営業時間は、北斗星の客車見学時間と同じ11~18時、火曜定休です。北斗星広場に行ったときには、ぜひ寄ってみたいお店です。
●北斗軒 Facebookページ


掲載日:2017年07月21日


●伊藤 博康(いとう ひろやす)
(有)鉄道フォーラム代表。愛知県犬山市生まれ。パソコン通信NIFTY-Serve草創期から鉄道フォーラムに関わり、1992年から運営責任者。(有)鉄道フォーラムを設立後、独自サーバでサービスを継続中。著書に「日本の “珍々”踏切」(東邦出版)「鉄道ファンのためのトレインビューホテル」「鉄道名所の事典」(東京堂出版)がある。現在、中日新聞社「達人に訊け」でもコラムを連載中。