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汽車旅ひろば - ひろやすの汽車旅コラム

汽車旅ひろば


  • ひろやすの汽車旅コラム
"鉄道フォーラム"代表の伊藤博康氏による鉄道コラム。
毎回幅広いテーマの中から、「乗ってみたい」「知って良かった」「へぇ~」な汽車旅関連の話題をご紹介します。お楽しみに!

北海道観光列車モニターツアー報告 3日目 [No.H263]

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釧網線北浜駅は、オホーツク海に一番近いとされる駅だ。生憎の曇天で、オホーツク海はどんよりと淀んで見える。
ツアー最終日となる3日目は、網走駅に午前8時集合です。
この日も前日と同じく、クリスタルエクスプレスを貸切で利用します。網走駅の改札口上にある電光掲示板には、「団体 8:18 知床斜里」と出ています。でも、この日の最初の目的地は、網走の町外れに位置する北浜駅です。線路が1本だけの無人駅なので、クリスタルエクスプレスを同駅に留置しておくわけにいかず、知床斜里駅まで回送で往復するのです。
網走~北浜間は11. 5km。それに対して、北浜~知床斜里間は25. 8kmですから、わずかな乗車区間のためにその後の長い回送が発生することになります。しかも、網走~知床斜里間は、昨日も通った釧網線です。ただし、昨日は日が暮れてからの通過で、景色が見られませんでした。
そこまでして行く北浜駅は、オホーツク海に一番近い駅と呼ばれている人気が高い駅です。駅に併設された展望台からは、オホーツク海沿いを走る列車が眺められるばかりでなく、知床半島の背骨を形成する知床連山も眺められるとして、観光バスも立ち寄るほどの絶景です。
この日は残念ながらどんよりと曇り、知床連山は一部しか見えず、オホーツク海も青くありませんでした。駅舎の傍らに建つ赤いポストの色がやけに華やかに見えます。その傍らには、昨日から列車内で沿線案内をしてくださっているMOTレール倶楽部が造った記念写真用の特急「オホーツク」のイラスト板ができていました。


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北浜駅舎をバックに地元に伝わる伝統芸として、太鼓演奏と獅子舞を披露してくれたのは、網走市立白鳥台小学校の生徒たち。
北浜駅には8時33分に到着し、クリスタルエクスプレスが戻ってくる9時49分まではフリータイムとなります。北浜駅には、駅から1キロ弱のところにある、濤沸(とうふつ)湖水鳥・湿地センターの方が出迎えに来てくださりました。多くの参加者は同センターに行って、オオハクチョウをはじめとした渡り鳥の飛来地として知られる濤沸湖を見学します。
その見学が一段落して駅に戻ってくるタイミングを見計らい、駅前では勇壮な和太鼓演奏が始まりました。駅近くの高台にある網走市立白鳥台小学校の生徒たちによるもので、寒風吹きすさむなか、北浜駅舎とオホーツク海をバックにはつらつとした演奏を聞かせてくれました。
和太鼓が終わると、次は獅子舞です。いずれも地元に伝わる伝統芸能で、小学校として熱心に指導し、保存をしているそうです。毎年2月に開催される「あばしりオホーツク流氷まつり」でも披露されているそうですが、極寒期だけに、この地で育った寒さに強い子でないと務まらないことでしょう。
そんな子ども達に元気をもらってから、再度、クリスタルエクスプレスの乗客となりました。


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北浜から遠軽まで、クリスタルエクスプレスの車内では、北見の特産品が販売された。
北浜を9時49分に発車したクリスタルエクスプレスは、網走から石北本線へと進み、12時02分着の遠軽まで2時間強の汽車旅となります。その時間を利用して、途中に通る北見の特産品やグッズの車内販売がありました。
北見といえば、ハッカで知られていますが、そのハッカを使ったお菓子のほかに、黒糖を使った「熊のまくら」という焼き菓子や、北見工業大学で育ったハーブを使ったお茶などもあります。また、原則受注生産というこだわりの「パン酵房fu-sora」のパンの販売もありました。このあと下車する遠軽より、さらに先にある白滝駅から4キロほど山に入ったところに工房を構えるパン屋さんです。
朝食は宿泊したホテルについていたので、皆さん食べてきたと思うのですが、これら車内販売が飛ぶように売れていました。

途中の常紋峠では雪深くなります。ところが、峠を越えると再び雪が少なくなり、やがて遠軽到着です。
遠軽駅でも横断幕とゆるキャラの歓迎をうけます。ゆるキャラは、「アンジくん」と「こけもも姫」で、遠軽町にある白滝ジオパークのキャラクターだそうです。
駅前には、昨日までも乗ったジェイアール北海道バスが2台とも来ています。札幌ナンバーのバスで、3日間、我々が乗る列車とともに移動しては、線路から離れた地への足となってくれています。
これまでは2台とも同じコースを辿っていたのですが、この遠軽駅では別々の場所に行きます。
1台はサロマ湖観光に行き、湖畔のホテルでバイキングの昼食です。
もう1台は、丸瀬布いこいの森へ行きます。筆者はこちらに参加しました。


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丸瀬布いこいの森で動態保存されている森林鉄道。蒸気機関車「雨宮21号」を先頭にして、特別運転がされた。
丸瀬布いこいの森に行く参加者を乗せたバスは、いこいの森を過ぎて、まずはマウレ山荘というリゾートホテルに行きます。ここでまずは昼食です。
昼食を済ませて丸瀬布いこいの森に行くと、蒸気機関車「雨宮21号」が煙を上げて待ってくれていました。夏場の観光シーズンの週末を中心に運行している森林鉄道の保存列車ですが、10月末で今年の運行を修了しています。それを、この日はこの北海道観光列車モニターツアーのために、特別に運転して下さるのです。
前日からの一時的な冬型気圧配置のおかげで、この日は雪原を走る列車となりました。「丸瀬布の雨宮21号」は、鉄道好きに知られた存在ですが、雪の中を走る姿は滅多に見られません。それだけ貴重な姿を見ることができたのでした。
特別運転は14時発で、客車に乗車する人と、沿線で撮影する人に分かれます。雨宮21号けん引の客車は2両ですが、なにせ森林鉄道用の小さな車両なので、バスの乗客40名は乗り切れません。そこで、ディーゼル機関車による列車も続行運転されました。
ツアー貸し切り列車は、一周約2kmある8の字型線路を2周します。ゆっくりと走りますので、20分強の所要時間となりますが、みんな笑顔です。
14時50分にバスに再集合して、丸瀬布いこいの森を後にします。その際、この運転に関わって下さった人たちが、客車の窓をすべて開け、全部の窓から一人ずつ顔を出して手を振ってくれました。バスが通過するときには、雨宮21号も気笛を鳴らしてくれました。


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丸瀬布駅に進入してきたクリスタルエクスプレス。この駅から札幌まで、4時間強の汽車旅となる。
丸瀬布駅に到着すると、バスとはここでお別れです。一路、回送で札幌を目指すのでしょう。
ツアー参加者は、駅でしばらく待って、やってきたクリスタルエクスプレスに乗車です。ただ、これまでと違って、すでに乗客がいます。サロマ湖見学に行った人達は、再び遠軽駅に戻って、同駅から乗車してきているのです。
遠軽駅を15時28分に発車したクリスタルエクスプレスは、次第に夕闇に包まれていく景色のなかを走り続けます。札幌駅到着は19時41分。それまで4時間13分ありますが、この最終行程には敢えて催しが設定されていません。
2泊3日のツアーに疲れて眠りに就く人、思いで話に話を咲かせる人、夜汽車の雰囲気となった汽車旅を楽しむ人、丸瀬布駅近くで仕入れたビールを飲みながら語り合う人など、参加者がそれぞれの過ごし方をした4時間強でした。
観光地を目指して乗ったり降りたりするのも楽しいですが、このように鉄道ならではののんびりとした時間を過ごす汽車旅も良いものです。沿線観光ばかりでなく、このようにゆっくりと乗ることを楽しむ旅も含めた北海道観光列車が、やがて走りはじめることを期待したいところです。

以上で、3回に分けた北海道観光列車モニターツアーの報告を終わります。


掲載日:2017年11月24日


●伊藤 博康(いとう ひろやす)
(有)鉄道フォーラム代表。愛知県犬山市生まれ。パソコン通信NIFTY-Serve草創期から鉄道フォーラムに関わり、1992年から運営責任者。(有)鉄道フォーラムを設立後、独自サーバでサービスを継続中。著書に「日本の “珍々”踏切」(東邦出版)「鉄道ファンのためのトレインビューホテル」「鉄道名所の事典」(東京堂出版)がある。現在、中日新聞社「達人に訊け」でもコラムを連載中。