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汽車旅ひろば - ひろやすの汽車旅コラム

汽車旅ひろば


  • ひろやすの汽車旅コラム
"鉄道フォーラム"代表の伊藤博康氏による鉄道コラム。
毎回幅広いテーマの中から、「乗ってみたい」「知って良かった」「へぇ~」な汽車旅関連の話題をご紹介します。お楽しみに!

交通文化振興財団が、所蔵図書資料の公開をはじめる [No.H264]

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財団事務局内に設置された「交通資料調査センター」の一部。公開前でまだ雑然とした状態
公益財団法人交通文化振興財団について、その存在を知る方は多くないと思います。
しかし、京都鉄道博物館の運営を委託されている財団で、同館開設以前に同所にあった梅小路蒸気機関車館や、大阪弁天町にあった交通科学博物館の運営をしていたところと知ると、その位置づけに気付くことでしょう。
以前は、東京神田にあった交通博物館や、青梅にある青梅鉄道公園の運営も委託されていましたが、これらはJR東日本が東日本鉄道文化財団を設立し、同財団で運営をするようになっています。
このように、国鉄時代に国鉄を中心とした日本の交通文化に関して、学術面を担当する組織として設立された財団が母体となっています。それだけに、貴重な資料を多く所蔵していますし、個人の収集家からの書籍・資料・写真等の寄贈品も多く所蔵しています。
それら資料を財団内だけで管理・活用してきたのですが、公益財団として、より多くの方にこれら資料を活用いただけるようにと、去る2017年4月1日に財団事務局内に「交通資料調査センター」を開設しました。
その後同センターに所蔵資料を搬入し、準備を進めてきていましたが、いよいよこのコラムを公開する12月1日から、書籍についての閲覧受付けをはじめます。閲覧は無料ですが、事前予約制となります。
右上の写真は、「交通資料調査センター」開設準備段階で取材のために伺ったときに撮影したものです。蔵書の入った段ボールがあったり、台車が写っていたりしますが、公開を目前に控えてこれらを懸命に整理されているところでした。


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希望者に公開される資料類の例。鉄道をはじめ、飛行機や自動車など、交通に関する書籍・資料が豊富にある。
交通文化振興財団の本部はかつて交通科学博物館にありましたが、同館の閉館により新たな場所に移動していました。
その後、一大事業だった京都鉄道博物館の開設関連の業務が一段落したことから、今春、大阪市営地下鉄御堂筋線の西中島南方駅すぐ西側に事務所を移転して、「交通資料調査センター」を併設したということです。
左の写真は所蔵資料の一部です。ご覧の通り、鉄道はもとより車や飛行機も含む、交通全般の資料が所蔵されています。
左下に写っている写真は、上が高森線第一白川橋梁、下が土讃線吉野川橋梁の建設中の写真です。「土木工事写真集」という書籍に収録されているものです。なお、高森線はいま南阿蘇鉄道となり、昨年の熊本地震でこの第一白川橋梁も含めて被災したため、区間運休が続いています。
ちなみに所蔵書籍は、『日本国有鉄道百年史』『子爵井上勝君小伝』『航空から見た戦後昭和史』『鉄道史学』『鉄道ピクトリアル』『鉄道ファン』『自動車青年』『青函連絡船史』『鐵道省電氣局沿革史』他 交通関係会社社史、一般書籍、雑誌など約5,000点ということです。


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交通文化振興財団の活動を紹介するチラシの例。Web上で所蔵資料を公開予定と記してある。
これからはじまる交通資料調査センターの公開ですが、調べたい目的の書籍等があるかは、同財団のホームページで順次公開していく予定だそうです。いまはまだ資料データをまとめているところなので、全容が判るまでには時間がかかりそうですが、まとめたところから順次公開される予定なので、注目です。
そのホームページのURLは、次の通りです。

   公益財団法人 交通文化振興財団
   https://www.kouhaku.or.jp/

また、閲覧の予約は電話で行うそうで、その電話番号と財団の住所は次の通りです。

   〒532-0011
   大阪市淀川区西中島4丁目2番26号
   天神第一ビル1004号室
   電話番号:06-6309-5113
   ※詳しくはホームページをご確認下さい。

京都鉄道博物館の図書資料室は、土・日・祝日の10:30-17:00に公開されていますが、平日に調べ物がしたい、京都はやや遠いけど大阪であればありがたいといった方の場合は、この交通資料調査センターを活用すると良いのではないでしょうか。

なお、同財団は資料の収集活動も行っています。交通関係の資料があり、後世に残したいと考える方は、上記ホームページを見て交通文化振興財団に連絡してみてはいかがでしょうか。
ただし、月刊鉄道趣味誌については、他の鉄道関係資料館と同様に申し出が多いということです。それだけに、連絡しても既に所蔵していると回答される可能性が高いようです。

ところで、交通文化振興財団では、所蔵する写真等の資料をweb上で公開するデジタルアーカイブのシステム構築を目指しています。その資金集めとして、12月22日までクラウドファンディング(インターネット上での寄付募集)を実施中です。詳しくは https://readyfor.jp/projects/koutsubunka にて確認できます。
資料保存について興味のある方は、併せてご覧下さい。


掲載日:2017年12月01日


●伊藤 博康(いとう ひろやす)
(有)鉄道フォーラム代表。愛知県犬山市生まれ。パソコン通信NIFTY-Serve草創期から鉄道フォーラムに関わり、1992年から運営責任者。(有)鉄道フォーラムを設立後、独自サーバでサービスを継続中。著書に「日本の “珍々”踏切」(東邦出版)「鉄道ファンのためのトレインビューホテル」「鉄道名所の事典」(東京堂出版)がある。現在、中日新聞社「達人に訊け」でもコラムを連載中。