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汽車旅ひろば - ひろやすの汽車旅コラム

汽車旅ひろば


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"鉄道フォーラム"代表の伊藤博康氏による鉄道コラム。
毎回幅広いテーマの中から、「乗ってみたい」「知って良かった」「へぇ~」な汽車旅関連の話題をご紹介します。お楽しみに!

「幸福の招き猫電車」が走る東急世田谷線 [No.H266]

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世田谷線で走る「幸福の招き猫電車」。東急が運営する唯一の路面電車ながら、全線が専用軌道となっている。
2017年のNHK大河ドラマはいよいよ大詰め、残る放映は最終回だけとなりました。
一年間を通して描いてきたのは、江戸時代に彦根藩主を努め、幕末には大老職に就く井伊直弼を輩出した名門・井伊家が、いかにして戦国時代を生き延び、徳川側近として仕えるようになったかでした。
ドラマは静岡県西部の遠州を舞台に描かれていますが、江戸時代には江戸詰となった井伊家ですので、菩提寺も江戸…つまり今の東京にありました。その菩提寺は、世田谷区の豪徳寺です。豪徳寺という寺名そのものが、彦根藩の二代目藩主・井伊直孝の法号(戒名)である「久昌院殿豪徳天英居士」に由来するそうです。
その直政が鷹狩りの帰りに同寺を通ったところ、猫が手招きをしたので立ち寄りました。すると、すぐに雷雨がやってきたことから、招き猫により雨に濡れずにすんだとして、菩提寺にしたという言い伝えがあります。
このことから、境内に「招福堂」が建てられ「招猫観音」が祀られています。また、縁起物として招き猫が売られるようになりました。
その豪徳寺の最寄り駅は、東急世田谷線宮の坂駅です。隣の山下駅に隣接して、小田急の豪徳寺駅もあります。
このような立地のため、東急は「玉電開通110周年記念」として、今年9月25日から「幸福の招き猫電車」を走らせています。


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「幸福招き猫電車」の正面(下)と、側面(上)。側面には、様々な招き猫がいて、見ているだけで楽しくなる。
「玉電開通110周年記念」として「幸福の招き猫電車」を運行しているのは、東急世田谷線です。東急で唯一の路面電車ですが、全線が専用軌道となっています。
「玉電」は玉川電気鉄道が明治40(1907)年に、渋谷~道元坂上~三軒茶屋~玉川(現・二子玉川)間を開業しました。さらに大正14(1925)年になると、三軒茶屋で分岐する三軒茶屋~世田谷~下高井戸間の支線が開業しています。
東急となった後の昭和44(1969)年に、玉川線の本線にあたる渋谷~玉川間が廃止されたため、支線が世田谷線と改称されて今に至ります。
このような経緯から、「玉電開通110周年記念」を世田谷線で祝っているわけです。

その車体正面には招き猫の顔を描き(写真下)、側面には何体もの招き猫が描かれています。(写真上)
世田谷線には、300形が10編成20車体在籍していますが、その8番目となる308A-308Bが「幸福招き猫電車」になっています。このため、通常は待っていればやってきますが、日によって検査入場していたり、ラッシュ時だけの運用に入っていて日中の運用から外れていることもあります。


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車内は、つり革が招き猫の頭部の形をしていて、床にはねこの足跡がついている。
その車内はというと、左写真のとおり遊び心のある装飾が施されています。
つり革は招き猫の頭部の形をしていて、ネコ耳が付いているうえ、しっかり右手を挙げて福を招いてます。
床に目を転じると、ピンク色の肉球跡が点々と… 乗客は、この足跡に沿って車内を移動し、出口に進むようになっているわけです。なかなかの遊び心ですよね。

世田谷線は東急田園都市線の三軒茶屋駅から北上し、小田急小田原線豪徳寺前駅を経て、京王線下高井戸駅までの5. 0kmを17分で結んでいます。乗り切り制150円ですが、PASMO,Suica等のICカードだと144円と安く乗車できます。
日中6分ごとの運転ですので、前の電車が行ってしまっても、すぐに次の電車がやってくる便利さです。
「幸福の招き猫電車」は、来年(2018年)3月末までの運転予定です。猫好きであれば、豪徳寺の初詣も兼ねて乗りに行ってみてはいかがでしょうか。


掲載日:2017年12月15日


●伊藤 博康(いとう ひろやす)
(有)鉄道フォーラム代表。愛知県犬山市生まれ。パソコン通信NIFTY-Serve草創期から鉄道フォーラムに関わり、1992年から運営責任者。(有)鉄道フォーラムを設立後、独自サーバでサービスを継続中。著書に「日本の “珍々”踏切」(東邦出版)「鉄道ファンのためのトレインビューホテル」「鉄道名所の事典」(東京堂出版)がある。現在、中日新聞社「達人に訊け」でもコラムを連載中。