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汽車旅ひろば - ひろやすの汽車旅コラム

汽車旅ひろば


  • ひろやすの汽車旅コラム
"鉄道フォーラム"代表の伊藤博康氏による鉄道コラム。
毎回幅広いテーマの中から、「乗ってみたい」「知って良かった」「へぇ~」な汽車旅関連の話題をご紹介します。お楽しみに!

北海道で、キハ183スラントノーズ保存の動き [No.H270]

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キハ183スラントノーズを保存するため、クラウドファンディングに寄付を呼びかけている
北海道の特急は、かつて函館起点で全道に向けて走っていました。青函連絡船が北海道の玄関だったからです。
その後、千歳空港が北海道の玄関となり、道内の特急網も札幌起点に再編されて今に至ります。その函館起点から札幌起点へと移行した昭和50年代に、新世代の特急形気動車としてデビューしたのがキハ183系でした。
それまでの主力であったキハ80系に比べてややパワーアップして、移動の快適化を目指した車両でした。当時は国鉄でしたので、国鉄気動車特急の標準色をまとっての登場でした。右の写真は、まさにその頃の姿です。
ちょうど、石勝線が開業した頃で、札幌~道東間の営業距離が短くなるだけでなく、高速走行が可能になりました。その到達時間短縮も期待される、北海道用に開発された車両でした。
キハ183系の試作車と初期車0番代は、スラントノーズと呼ばれる独特の前面形状をしています。スラント(slant)は、傾斜したという意味の英語です。
同型車は残りわずかとなっていますが、今年3月25日の特急「旭山動物園号」を最後に全廃されることが決まりました。そこで、同車を1両だけでも国鉄色に戻したうえで保存し、後世に伝えたいと北海道鉄道観光資源研究会が立ち上がり、クラウドファンディングでの資金集めをはじめています。


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キハ183保存先として予定されている「道の駅 あびらD51ステーション」の完成予想イラスト
クラウドファンディングの目標額は610万円として、元旦から支援受付を始めています。この原稿を記している1月24日時点で、すでに508.5万円と額にして約83%もの応募が集まっています。期限は3月30日23時までですので、成立する可能性が極めて高い様子です。
期間内に目標額に達して成立した場合には、そこで終わらず、2両目の移設費用を賄うことを考えて、セカンドゴール1100万円を目指すとしています。
詳しくは、次の各サイトをご覧下さい。
   「スラントノーズ型・キハ183系保存」クラウドファンディングについて
   北海道・鉄道史の誇り。往年の「特急おおぞら」を国鉄色で未来へ

ところで、保存するには場所が必要です。鉄道車両は大きく重いだけに、土地の確保と、保存後の保守体制も予め想定しておくことが必要になります。
その点、このキハ183については万全とみて良いようです。
というのも、保存予定先は、今春オープン予定の「道の駅 あびらD51ステーション」で、地元の安平町は地元で保存しているD51の同地への移転を決めています。その完成予想イラストは、D51の隣に線路であるような無い様な不思議な空間を描いています。ここが、保存予定地なのです。
さらに、クラウドファンディングをしている北海道鉄道観光資源研究会は、2015年12月4日付の当コラムで「北海道初の電車711系を保存している「大地のテラス」 」として取り上げた、車両保存実績がある組織で、その代表である永山氏は日本旅行の社員です。安心して支援ができる先であることがご理解いただけると思います。


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いまは夏場に月2回各2時間の公開としているD51 320が、「道の駅」完成で通年見学可能になる
ところで、保存予定地の道の駅はどこにあり、どこのD51をもってくるのでしょう。
道の駅の名称冒頭の「あびら」は安平町のことで、室蘭本線の苫小牧~追分間に安平駅があります。その隣の追分駅は、国鉄の現役蒸気機関車が最後まで働いていた追分機関区のあったところで、いま安平町となっています。
その追分機関区の跡地の近くに「安平町鉄道資料館」があります。ここに国鉄最後の現役蒸気機関車だったうちの一両として、D51 320が保存されているのです。
右の写真は、筆者が訪れた時に撮影したものですが、通常はこのように資料館のシャッターが閉まっていてD51が見られません。左下に館から引きだした様子がありますが、これは5月から10月までの第2,4金曜日の13時~15時に公開しているときのものです。公開期間中は事前連絡することで見学させてもらえるということですが、フラッと立ち寄れるわけではありません。
その点、今春からは「道の駅」の目玉展示として、いつでも見学が可能となります。それも、追分駅から駅前をほぼまっすぐに進んで800mほどの国道沿いという、アクセスのし易い場所です。
これだけの条件が整っている保存計画です。ぜひ、D51とともにキハ183も保存されて欲しいですよね。そのためには、クラウドファンディングの成立が必須となります。

最後に、再度となりますが、同クラウドファンディングの詳細個所を記しておきます。ちなみに、筆者もわずかな額ながら応募しました。
   「スラントノーズ型・キハ183系保存」クラウドファンディングについて
   北海道・鉄道史の誇り。往年の「特急おおぞら」を国鉄色で未来へ


掲載日:2018年01月26日


●伊藤 博康(いとう ひろやす)
(有)鉄道フォーラム代表。愛知県犬山市生まれ。パソコン通信NIFTY-Serve草創期から鉄道フォーラムに関わり、1992年から運営責任者。(有)鉄道フォーラムを設立後、独自サーバでサービスを継続中。著書に「日本の “珍々”踏切」(東邦出版)「鉄道ファンのためのトレインビューホテル」「鉄道名所の事典」(東京堂出版)がある。現在、中日新聞社「達人に訊け」でもコラムを連載中。