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"鉄道フォーラム"代表の伊藤博康氏による鉄道コラム。
毎回幅広いテーマの中から、「乗ってみたい」「知って良かった」「へぇ~」な汽車旅関連の話題をご紹介します。お楽しみに!
毎回幅広いテーマの中から、「乗ってみたい」「知って良かった」「へぇ~」な汽車旅関連の話題をご紹介します。お楽しみに!
日本一のトレインビューを誇る名古屋プリンスホテル [No.H285]
昨年10月、JR名古屋駅から南に1km弱の地に、新たな街「ささしまライブ24」ができました。あおなみ線のささしまライブ駅が最寄りですが、名古屋駅から歩いても15分程度で着きます。この地にはかつて名古屋貨物駅があり、その跡地を再開発しただけに、回りには名古屋の主だった鉄道が集まっています。
その「ささしまライブ24」の核を担う施設「グローバルゲート」は、ささしまライブ駅からペデストリアンデッキでつながっています。二棟の高層棟とそれをつなぐ低層棟からなる「グローバルゲート」にある地上36階建ての高層タワーに、名古屋プリンスホテル スカイタワーがオープンしました。ちなみに、プリンスホテルは名古屋に初進出です。
フロントは31階、客室は32階から36階という最上部に位置するホテルで、ほぼ真四角な建物の中央を吹抜けとして、周囲に客室を配置しています。そのお陰で全客室から名古屋の街を大俯瞰できます。しかも、すべての客室がトレインビュー!
右上の写真は、北向きの名古屋駅方面を見られる客室からみた夕景です。名古屋駅前の高層ビル群の左下にJR名古屋駅が広がり、そこから右下には名古屋駅に到着しようとしている新幹線が写っています。
画像をクリックし、拡大してみていただきたいのですが、新幹線の右端上部には在来線の列車がみられます。ここには、手前に中央本線、その先に東海道本線があります。その奥には名鉄名古屋本線がありますが、その名鉄電車の前照灯もかろうじて写っています。
新幹線の右端下部には、特急「ひだ」「南紀」に使用するキハ85系が顔を出していますが、ここは名古屋車両区への出入線です。その右に関西本線、左にはあおなみ線も見られますし、さらに左には近鉄名古屋駅へと地下に入っていく近鉄名古屋線も見られます。
この4社7線と名古屋車両区への入出庫線が、眼下に立体的に広がっているのです。これぞ、日本一のトレインビューといって過言ではないでしょう。
名古屋駅は北向きの部屋から見られますが、南向きの部屋からは、名古屋駅をでてから東海道新幹線・中央本線・東海道本線・名鉄名古屋本線の複線4本・計8線が約2kmにわたって並行している様子が見られます。
左の写真は、東海道新幹線で数を減らしている700系と、名鉄の空港特急「ミュースカイ」が並走しているところです。新幹線の右側先頭車の右上あたりに、名鉄の山王駅が見えます。同駅あたりで新幹線は右へと進み、中央本線はやや高度を下げて東海道本線と名鉄名古屋本線の下をくぐり、両線の左に出ます。
東海道本線と名鉄名古屋本線は大きく左にカーブしている様子が見られますが、そのカーブ途中に東海道本線の尾頭橋(おとうばし)駅があります。そのまま左手に進み、高速道路の下をくぐった先に高層ビルがありますが、そのあたりが金山総合駅となります。
これまた雄大な光景ですよね。
名鉄はほぼ全車種がここを通りますし、東海道本線と中央本線には旅客列車だけでなく、貨物列車も走っています。大都市の中心駅にしては珍しく、JR名古屋駅は貨物列車も通過するのが大きな特徴です。しかも、昨今話題の赤ホキ(美濃赤坂~笠寺間の石灰石専用貨車)や白ホキ(四日市~稲沢~大府間の炭酸カルシウム・石炭灰輸送貨車)も走ります。
西向きの部屋は、真正面にJR東海の名古屋車両区が広がっています。
よくあるトレインビューはホテル真下とか、近くを右から左へと線路があるというものですが、この西向きの部屋は、ものの見事に真っ直ぐ奥にヤードが広がっています。それというのも、このホテルの位置がかつて貨物駅だったからです。数ある名古屋車両区の線路は、ホテルの下までにまとまり、カーブして右手に進むことで名古屋駅に向かっています。
名古屋車両区はJR東海最大の気動車配置区で、高山本線の特急「ワイドビューひだ」や紀勢線の特急「ワイドビュー南紀」に使うキハ85系をはじめ、快速「みえ」用のキハ75系、紀勢線・参宮線・名松線用のキハ25、キハ11などが配置されています。 さらに、在来線用のドクターイエローとして“ドクター東海”の愛称があるキヤ95や、レール運搬気動車キヤ97もここに所属していますので、休んでいるところをよく見かけます。
右上の写真でも、右下に一編成ポツンと留置されている先頭が黄色い車両がキヤ95です。
その右上を近鉄名阪特急アーバンライナーが走っていますし、左下にはEF210牽引のコンテナ貨物列車があおなみ線を走っています。
名古屋車両区の中ほど上部にある黄色がかったトラス橋は、向野(こうや)橋です。いまは人道橋となっていますが、もともとは明治32(1899)年に山陰本線の保津峡に架けられた米国製の鉄橋を昭和初期に当地に転用したものです。土木学会の推奨土木遺産に認定されている文化財です。
さらに先にある黄金(こがね)陸橋の手前には、名門・名古屋機関区時代からの生き残りである転車台も見えます。
貨物列車は、いまや定期列車が全国でここだけとなった愛知機関区のDD51が走っていますし、その後継として今年から運用に入ったDF200もやってきます。
新幹線は、毎日一番列車が走る前に、「確認車」が走っていることを知っていますか?
鉄道車両ではなく工事用車なので、車籍は持っていません。でも、この確認車が上下線ともに走って列車運行に支障が無いことを確認しなければ、当日の新幹線旅客列車は一切走ることができないという重要な役割をもっています。
一番列車の前ですから、午前5時20分頃に、ホテル横の下り線を名古屋駅へと走って行きます。早起きしないとみられませんし、トレインビューができるホテルでしか見られない光景です。
いかがでしょう、名古屋プリンスホテル スカイタワーからのトレインビューは。
東向きの部屋は紹介しませんでしたが、新幹線にもっとも近いところですので、トレインウォッチには悪くないでしょう。ただし、線路までの間に他の建物もあるので、線路がずぅっと見える…という具合にはいきません。
気軽に泊まるにはやや高めの宿泊費ですが、ホテルによると開業以来3割程度が愛知県在住の方だということです。日頃の疲れを癒すためにと、ホテルライフを楽しむために泊まっているようです。
夜景がきれいなブッフェレストラン「天空」で、美味しい地中海料理を心ゆくまで楽しみ、さらに部屋に戻って、グラスを傾けながら行き交う列車を眼下に楽しむ休日は癒やし効果抜群でしょう。
チェックアウト時間は正午とゆっくりできるため、火木土に走るキヤ95の名古屋港レールセンターへの回送列車(稲沢9:34→10:12名古屋港)がホテル横を10時前に通過する様子や、近鉄名古屋駅を10時25分に発車する豪華特急「しまかぜ」も客室から余裕で見られます。
また、正午にチェックインして20時までのデイユースプランも発売されたので、宿泊まではできないという方は、このプランでトレインビューを堪能するのも一考でしょう。
鉄道好きであれば、ぜひ一度は泊まってみたいホテルです。また、ご家族連れでも快適に楽しめるホテルといえましょう。
名古屋プリンスホテル スカイタワー
https://www.princehotels.co.jp/nagoya/
掲載日:2018年05月18日
その「ささしまライブ24」の核を担う施設「グローバルゲート」は、ささしまライブ駅からペデストリアンデッキでつながっています。二棟の高層棟とそれをつなぐ低層棟からなる「グローバルゲート」にある地上36階建ての高層タワーに、名古屋プリンスホテル スカイタワーがオープンしました。ちなみに、プリンスホテルは名古屋に初進出です。
フロントは31階、客室は32階から36階という最上部に位置するホテルで、ほぼ真四角な建物の中央を吹抜けとして、周囲に客室を配置しています。そのお陰で全客室から名古屋の街を大俯瞰できます。しかも、すべての客室がトレインビュー!
右上の写真は、北向きの名古屋駅方面を見られる客室からみた夕景です。名古屋駅前の高層ビル群の左下にJR名古屋駅が広がり、そこから右下には名古屋駅に到着しようとしている新幹線が写っています。
画像をクリックし、拡大してみていただきたいのですが、新幹線の右端上部には在来線の列車がみられます。ここには、手前に中央本線、その先に東海道本線があります。その奥には名鉄名古屋本線がありますが、その名鉄電車の前照灯もかろうじて写っています。
新幹線の右端下部には、特急「ひだ」「南紀」に使用するキハ85系が顔を出していますが、ここは名古屋車両区への出入線です。その右に関西本線、左にはあおなみ線も見られますし、さらに左には近鉄名古屋駅へと地下に入っていく近鉄名古屋線も見られます。
この4社7線と名古屋車両区への入出庫線が、眼下に立体的に広がっているのです。これぞ、日本一のトレインビューといって過言ではないでしょう。
名古屋駅は北向きの部屋から見られますが、南向きの部屋からは、名古屋駅をでてから東海道新幹線・中央本線・東海道本線・名鉄名古屋本線の複線4本・計8線が約2kmにわたって並行している様子が見られます。
左の写真は、東海道新幹線で数を減らしている700系と、名鉄の空港特急「ミュースカイ」が並走しているところです。新幹線の右側先頭車の右上あたりに、名鉄の山王駅が見えます。同駅あたりで新幹線は右へと進み、中央本線はやや高度を下げて東海道本線と名鉄名古屋本線の下をくぐり、両線の左に出ます。
東海道本線と名鉄名古屋本線は大きく左にカーブしている様子が見られますが、そのカーブ途中に東海道本線の尾頭橋(おとうばし)駅があります。そのまま左手に進み、高速道路の下をくぐった先に高層ビルがありますが、そのあたりが金山総合駅となります。
これまた雄大な光景ですよね。
名鉄はほぼ全車種がここを通りますし、東海道本線と中央本線には旅客列車だけでなく、貨物列車も走っています。大都市の中心駅にしては珍しく、JR名古屋駅は貨物列車も通過するのが大きな特徴です。しかも、昨今話題の赤ホキ(美濃赤坂~笠寺間の石灰石専用貨車)や白ホキ(四日市~稲沢~大府間の炭酸カルシウム・石炭灰輸送貨車)も走ります。
西向きの部屋は、真正面にJR東海の名古屋車両区が広がっています。
よくあるトレインビューはホテル真下とか、近くを右から左へと線路があるというものですが、この西向きの部屋は、ものの見事に真っ直ぐ奥にヤードが広がっています。それというのも、このホテルの位置がかつて貨物駅だったからです。数ある名古屋車両区の線路は、ホテルの下までにまとまり、カーブして右手に進むことで名古屋駅に向かっています。
名古屋車両区はJR東海最大の気動車配置区で、高山本線の特急「ワイドビューひだ」や紀勢線の特急「ワイドビュー南紀」に使うキハ85系をはじめ、快速「みえ」用のキハ75系、紀勢線・参宮線・名松線用のキハ25、キハ11などが配置されています。 さらに、在来線用のドクターイエローとして“ドクター東海”の愛称があるキヤ95や、レール運搬気動車キヤ97もここに所属していますので、休んでいるところをよく見かけます。
右上の写真でも、右下に一編成ポツンと留置されている先頭が黄色い車両がキヤ95です。
その右上を近鉄名阪特急アーバンライナーが走っていますし、左下にはEF210牽引のコンテナ貨物列車があおなみ線を走っています。
名古屋車両区の中ほど上部にある黄色がかったトラス橋は、向野(こうや)橋です。いまは人道橋となっていますが、もともとは明治32(1899)年に山陰本線の保津峡に架けられた米国製の鉄橋を昭和初期に当地に転用したものです。土木学会の推奨土木遺産に認定されている文化財です。
さらに先にある黄金(こがね)陸橋の手前には、名門・名古屋機関区時代からの生き残りである転車台も見えます。
貨物列車は、いまや定期列車が全国でここだけとなった愛知機関区のDD51が走っていますし、その後継として今年から運用に入ったDF200もやってきます。
新幹線は、毎日一番列車が走る前に、「確認車」が走っていることを知っていますか?
鉄道車両ではなく工事用車なので、車籍は持っていません。でも、この確認車が上下線ともに走って列車運行に支障が無いことを確認しなければ、当日の新幹線旅客列車は一切走ることができないという重要な役割をもっています。
一番列車の前ですから、午前5時20分頃に、ホテル横の下り線を名古屋駅へと走って行きます。早起きしないとみられませんし、トレインビューができるホテルでしか見られない光景です。
いかがでしょう、名古屋プリンスホテル スカイタワーからのトレインビューは。
東向きの部屋は紹介しませんでしたが、新幹線にもっとも近いところですので、トレインウォッチには悪くないでしょう。ただし、線路までの間に他の建物もあるので、線路がずぅっと見える…という具合にはいきません。
気軽に泊まるにはやや高めの宿泊費ですが、ホテルによると開業以来3割程度が愛知県在住の方だということです。日頃の疲れを癒すためにと、ホテルライフを楽しむために泊まっているようです。
夜景がきれいなブッフェレストラン「天空」で、美味しい地中海料理を心ゆくまで楽しみ、さらに部屋に戻って、グラスを傾けながら行き交う列車を眼下に楽しむ休日は癒やし効果抜群でしょう。
チェックアウト時間は正午とゆっくりできるため、火木土に走るキヤ95の名古屋港レールセンターへの回送列車(稲沢9:34→10:12名古屋港)がホテル横を10時前に通過する様子や、近鉄名古屋駅を10時25分に発車する豪華特急「しまかぜ」も客室から余裕で見られます。
また、正午にチェックインして20時までのデイユースプランも発売されたので、宿泊まではできないという方は、このプランでトレインビューを堪能するのも一考でしょう。
鉄道好きであれば、ぜひ一度は泊まってみたいホテルです。また、ご家族連れでも快適に楽しめるホテルといえましょう。
名古屋プリンスホテル スカイタワー
https://www.princehotels.co.jp/nagoya/
掲載日:2018年05月18日
●伊藤 博康(いとう ひろやす)
(有)鉄道フォーラム代表。愛知県犬山市生まれ。パソコン通信NIFTY-Serve草創期から鉄道フォーラムに関わり、1992年から運営責任者。(有)鉄道フォーラムを設立後、独自サーバでサービスを継続中。著書に「日本の “珍々”踏切」(東邦出版)「鉄道ファンのためのトレインビューホテル」「鉄道名所の事典」(東京堂出版)がある。現在、中日新聞社「達人に訊け」でもコラムを連載中。
(有)鉄道フォーラム代表。愛知県犬山市生まれ。パソコン通信NIFTY-Serve草創期から鉄道フォーラムに関わり、1992年から運営責任者。(有)鉄道フォーラムを設立後、独自サーバでサービスを継続中。著書に「日本の “珍々”踏切」(東邦出版)「鉄道ファンのためのトレインビューホテル」「鉄道名所の事典」(東京堂出版)がある。現在、中日新聞社「達人に訊け」でもコラムを連載中。