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"鉄道フォーラム"代表の伊藤博康氏による鉄道コラム。
毎回幅広いテーマの中から、「乗ってみたい」「知って良かった」「へぇ~」な汽車旅関連の話題をご紹介します。お楽しみに!
毎回幅広いテーマの中から、「乗ってみたい」「知って良かった」「へぇ~」な汽車旅関連の話題をご紹介します。お楽しみに!
鉄道で行くこだわり温泉-江差線湯ノ岱温泉 [No.H049]
JR北海道の江差線は、函館~江差間83.3kmの路線です。このうち、ほぼ半分にあたる函館~木古内間41.2kmは、青函トンネルを有する津軽海峡線への接続ルートで、特急列車と貨物列車が多く走る、いわば幹線です。一方、木古内~江差間42.1kmは、通常1-2両編成の普通列車が、一日6往復走るだけのローカル線です。このローカル線区間が、来年(2014年5月12日)に廃止されることが決まりました。つまり、来年のゴールデンウィーク明けまでしか乗ることができない路線というわけです。
この廃止発表が4月26日にJR北海道から行われてから、お名残乗車で訪れる人が増えているようです。現に、筆者が7月10日(水)に訪れたときは、乗客の多くが壮年の乗車目的の方々でした。なぜ壮年かというと、JR東日本が展開している、50歳以上の方を対象とした会員制サービス「大人の休日倶楽部」の乗り放題パスが使える時期だったのです。その後、「青春18きっぷ」の通用期間になっていますので、いまも乗車目的の利用者が多いと思います。
ところが、乗ってみると、ほとんどの方が木古内~江差を単純往復されているだけのようです。列車本数が多くないので、途中下車しづらいことは判りますが、折角のローカル線ですから、下車して楽しむことも考えてみませんか?
…ということで、今回は、ちょうど中間付近にある湯ノ岱駅から徒歩10分ほどの距離にある国民温泉保養センターをご紹介しましょう。別名「湯ノ岱温泉」と呼ばれる、上ノ国町が運営している施設です。
江差線は湯ノ岱~江差がスタフ閉塞となっているため、スタフを渡す係の方が常駐しています。ただし、きっぷの発券業務等はしないので、駅としては無人駅の扱いです。湯ノ岱駅舎そのものもおしゃれな感じで、ちょっと下車したくなるような外観です。
さて、駅を出て右に行き、木古内寄りにある踏切を渡ります。すると、道路の先の少し左手に国民温泉保養センターの建物が見えます。もちろん、江差線の車窓からも見えます。やがて天ノ川を渡り、左折すると同温泉に着きます。渋い外観ですが、受付の方は丁寧ですし、施設利用者は多く、なかなかちゃんとした施設です。入浴料は大人350円、小人100円です。
浴室は広く、3つの浴槽に加えて、3つの打たせ湯があります。浴槽は入口から順に温度が42℃、38℃、35℃と変えてあり、すべて惜しげもなくかけ流しになっています。このうち35℃の浴槽は、ジャクジーになっています。
一方、最も高温の42℃の湯船は茶色く濁っています。35℃の浴槽はほとんど濁りがないことから、温度が高い方が酸化が早いことが目で見て判ります。鉄分を含む、鮮度の高い温泉ということですね。
ちなみに、源泉は2本あり、どちらもナトリウム・カルシウム-塩化物・炭酸水素塩泉です。暖まる食塩泉に、血行促進作用がある炭酸水素も含まれているというわけで、まさに健康によい温泉ですね。源泉温度は33.7℃と39.0℃、掘削自噴で毎分440リットルと250リットルということですので、量的には十分です。35℃の浴槽が源泉そのもの、それ以外は少し加温しているようです。
近年、温泉施設が全国に多くできていますが、こういう本物の源泉かけ流しの温泉は多くありません。温泉好きな乗り鉄の方には、廃線前にぜひ江差線を使って訪れて欲しい温泉でした。
なお、温泉施設内には広い畳敷きの無料休憩室があり、併設するレストランのメニューをここでも楽しめるようになっています。その休憩室のもっとも浴室側の壁一面には、ヘッドマークが多数飾られています。江差線の臨時列車に使用したヘッドマークだということです。ほぼ常設展のようになっていて、受付で聞いたところ、展示を終える予定はなく、変わったとしても江差線に関係するものになるであろうとのことでした。
また、北海道夢れいる倶楽部という江差線を応援している会が作成した江差線関連グッズも受付で販売しています。
このように、温泉成分だけでなく、施設全体が鉄分を含む温泉が湯ノ岱温泉でした。
掲載日:2013年08月02日
この廃止発表が4月26日にJR北海道から行われてから、お名残乗車で訪れる人が増えているようです。現に、筆者が7月10日(水)に訪れたときは、乗客の多くが壮年の乗車目的の方々でした。なぜ壮年かというと、JR東日本が展開している、50歳以上の方を対象とした会員制サービス「大人の休日倶楽部」の乗り放題パスが使える時期だったのです。その後、「青春18きっぷ」の通用期間になっていますので、いまも乗車目的の利用者が多いと思います。
ところが、乗ってみると、ほとんどの方が木古内~江差を単純往復されているだけのようです。列車本数が多くないので、途中下車しづらいことは判りますが、折角のローカル線ですから、下車して楽しむことも考えてみませんか?
…ということで、今回は、ちょうど中間付近にある湯ノ岱駅から徒歩10分ほどの距離にある国民温泉保養センターをご紹介しましょう。別名「湯ノ岱温泉」と呼ばれる、上ノ国町が運営している施設です。
江差線は湯ノ岱~江差がスタフ閉塞となっているため、スタフを渡す係の方が常駐しています。ただし、きっぷの発券業務等はしないので、駅としては無人駅の扱いです。湯ノ岱駅舎そのものもおしゃれな感じで、ちょっと下車したくなるような外観です。
さて、駅を出て右に行き、木古内寄りにある踏切を渡ります。すると、道路の先の少し左手に国民温泉保養センターの建物が見えます。もちろん、江差線の車窓からも見えます。やがて天ノ川を渡り、左折すると同温泉に着きます。渋い外観ですが、受付の方は丁寧ですし、施設利用者は多く、なかなかちゃんとした施設です。入浴料は大人350円、小人100円です。
浴室は広く、3つの浴槽に加えて、3つの打たせ湯があります。浴槽は入口から順に温度が42℃、38℃、35℃と変えてあり、すべて惜しげもなくかけ流しになっています。このうち35℃の浴槽は、ジャクジーになっています。
一方、最も高温の42℃の湯船は茶色く濁っています。35℃の浴槽はほとんど濁りがないことから、温度が高い方が酸化が早いことが目で見て判ります。鉄分を含む、鮮度の高い温泉ということですね。
ちなみに、源泉は2本あり、どちらもナトリウム・カルシウム-塩化物・炭酸水素塩泉です。暖まる食塩泉に、血行促進作用がある炭酸水素も含まれているというわけで、まさに健康によい温泉ですね。源泉温度は33.7℃と39.0℃、掘削自噴で毎分440リットルと250リットルということですので、量的には十分です。35℃の浴槽が源泉そのもの、それ以外は少し加温しているようです。
近年、温泉施設が全国に多くできていますが、こういう本物の源泉かけ流しの温泉は多くありません。温泉好きな乗り鉄の方には、廃線前にぜひ江差線を使って訪れて欲しい温泉でした。
なお、温泉施設内には広い畳敷きの無料休憩室があり、併設するレストランのメニューをここでも楽しめるようになっています。その休憩室のもっとも浴室側の壁一面には、ヘッドマークが多数飾られています。江差線の臨時列車に使用したヘッドマークだということです。ほぼ常設展のようになっていて、受付で聞いたところ、展示を終える予定はなく、変わったとしても江差線に関係するものになるであろうとのことでした。
また、北海道夢れいる倶楽部という江差線を応援している会が作成した江差線関連グッズも受付で販売しています。
このように、温泉成分だけでなく、施設全体が鉄分を含む温泉が湯ノ岱温泉でした。
掲載日:2013年08月02日
●伊藤 博康(いとう ひろやす)
(有)鉄道フォーラム代表。愛知県犬山市生まれ。パソコン通信NIFTY-Serve草創期から鉄道フォーラムに関わり、1992年から運営責任者。(有)鉄道フォーラムを設立後、独自サーバでサービスを継続中。著書に「日本の “珍々”踏切」(東邦出版)「鉄道ファンのためのトレインビューホテル」「鉄道名所の事典」(東京堂出版)がある。現在、中日新聞社「達人に訊け」でもコラムを連載中。
(有)鉄道フォーラム代表。愛知県犬山市生まれ。パソコン通信NIFTY-Serve草創期から鉄道フォーラムに関わり、1992年から運営責任者。(有)鉄道フォーラムを設立後、独自サーバでサービスを継続中。著書に「日本の “珍々”踏切」(東邦出版)「鉄道ファンのためのトレインビューホテル」「鉄道名所の事典」(東京堂出版)がある。現在、中日新聞社「達人に訊け」でもコラムを連載中。
湯ノ岱~江差はスタフ閉塞のため、
列車が到着すると、スタフの授受を行っている。