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汽車旅ひろば - ひろやすの汽車旅コラム

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"鉄道フォーラム"代表の伊藤博康氏による鉄道コラム。
毎回幅広いテーマの中から、「乗ってみたい」「知って良かった」「へぇ~」な汽車旅関連の話題をご紹介します。お楽しみに!

食堂車を楽しもう!寝台特急「北斗星」のグランシャリオ [No.H001]

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パブタイムの「北斗星」食堂車グランシャリオの様子
鉄道好きに限らず、旅好きが一度は乗ってみたいとあこがれるのは、食堂車付きの寝台列車ではないでしょうか。
いまや、食堂車も寝台車も、日本では風前の灯火となっています。なかでも、定期列車は上野〜札幌を1日1往復している寝台特急「北斗星」だけになりました。ほかに、臨時列車の「カシオペア」(上野〜札幌)と「トワイライトエクスプレス」(大阪〜札幌)という2本の寝台特急にも食堂車が連結されていますが、それぞれ週に3-4往復です。また、昼行列車の食堂車はいまやありませんので、都合がつく日に利用できる食堂車は「北斗星」の“グランシャリオ”だけともいえましょう。

この「北斗星」は、青函トンネルが開通した1988年3月に走りはじめました。それまで青函連絡船に乗り継いで本州〜北海道を行き来していたのが、乗り換え無しの直通列車を走らせることができるようになったことを記念した列車なのです。前年に国鉄は分割民営化されており、JR北海道とJR東日本は、民営会社ならではの魅力をこの「北斗星」に詰め込みました。それは、個室寝台を多く用意し、フリースペースの「ロビーカー」も連結するなど、“乗ることを楽しむ”ための列車となりました。鉄道は単なる移動手段ではなく、旅という非日常の夢を売る道具と位置づけられたのです。

その“乗ることを楽しむ”には、もちろん車内での飲食も含まれます。そのための食堂車ですから、予約して贅をつくした料 理を食べるという、高級レストランの様式を採用しました。 ちょうどバブル経済の全盛期だったこともあり、このコンセプトは当時大いに話題となりました。いま「北斗星」の食堂車“グランシャリオ”で提供されているメニューは、フランス料理のフルコース7,800円と、懐石料理5,500円です。それぞれに 合った飲み物として、別料金ですがワインや日本酒も各種用 意されています。

北斗星の運転時間は、上野19:03発→札幌11:15着と、札幌17:12発→上野9:38着となっています。つまり、夕食どきに始発駅を発車して、朝食後に終着駅に到着という行程です。この行程から、上野発の下り列車での夕食提供は19:45〜21:05の1回だけとなっています。一方、札幌発の上り列車は少し早めに発車することから、18:00〜19:20と19:40〜21:00の2回設定されています。とっぷりと暮れた車窓からの夜景を眺めながらの食事は、旅の楽しさであり醍醐味でもあり、同行者との会話もはずもうというものです。

これで満足して、あとはのんびりと寝台で休むのも手です。でも、それではちょっともの足らない、もう少し飲みながら会話を楽しみたいと思うこともあるでしょう。その場合には、夕食後の食堂車がパブタイムとなりますので、こちらも利用しましょう。ただし、パブタイムは予約ができず、先着順となります。乗客が多い日には、少し並ぶかパブタイムの後半に出直すと良いようです。というのも、夕食を予約していない方が、パブタイムに夕食を食べに来られるケースも多いためです。ちなみに、ラストオーダーは22:30、営業終了は23:00です。

パブタイムには、アルコールにおつまみという取り合わせで、ゆったりとその雰囲気を楽しむのも良いでしょう。BGMは、ガッタンガッタンという列車の走行音です。ちょっと暗めの照明も雰囲気を盛り上げています。ビールには北海道内限定販売で評判の「サッポロクラシック」もあります。下り列車であれば、これから行く北海道への思いを馳せてこのビールを飲むのも良いのではないでしょうか。

食堂車では、翌日の朝食も提供されます。6:30からの営業ですが、下り列車だと7時頃に道南の名所である大沼公園付近を走ります。晴れていれば、駒ヶ岳が車窓の右に左にと見える区間ですから、車窓が大きな食堂車で楽しみたいところです。  ちなみに、大沼湖は車窓左手ですが、7:27発車の森駅以降に見られる噴火湾の景色は右手になります。朝食は前夜のパブタイムと同じ予約無しの自由席ですので、左右どちらの席を利用するかという嬉しい悩みを経験することになります。


掲載日:2012年08月24日


●伊藤 博康(いとう ひろやす)
(有)鉄道フォーラム代表。愛知県犬山市生まれ。パソコン通信NIFTY-Serve草創期から鉄道フォーラムに関わり、1992年から運営責任者。(有)鉄道フォーラムを設立後、独自サーバでサービスを継続中。著書に「日本の “珍々”踏切」(東邦出版)「鉄道ファンのためのトレインビューホテル」「鉄道名所の事典」(東京堂出版)がある。現在、中日新聞社「達人に訊け」でもコラムを連載中。