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"鉄道フォーラム"代表の伊藤博康氏による鉄道コラム。
毎回幅広いテーマの中から、「乗ってみたい」「知って良かった」「へぇ~」な汽車旅関連の話題をご紹介します。お楽しみに!
毎回幅広いテーマの中から、「乗ってみたい」「知って良かった」「へぇ~」な汽車旅関連の話題をご紹介します。お楽しみに!
関東最東端の駅を訪ねて (1) [No.H010]
なぜ人は“端っこ”に行きたがるのでしょう。最北端だの、最南端だの、端っこというのはなにかと人気です。その仲間のひとつ、関東最東端の駅を訪ねてみました。
JRの各駅停車を乗り継いでやってきたのは千葉県の銚子駅です。下車すると、駅の跨線橋を渡らず、ホームの反対側に歩きます。というのも、乗ってきた各駅停車は駅舎側のホームから跨線橋を渡った2番線ホームにつきます。その島式ホームの先端に、銚子電気鉄道のホームがあるのです。ホームの半分を切り取って線路を敷いた形で、そこには車止めがあって、終着駅のイメージがあります。ただし、ホーム上にある待合室はちょっと洋風で、そこだけイメージが違うかな…という感じです。
車止めの手前に柵があり、そこに何やら書いてあります。(上の写真をクリック)
銚子〜犬吠・外川の往復きっぷが大人540円、コマワリ手形という1日乗車券は乗り降り自由で1日大人620円とのこと。明らかな手書きで、この鉄道の熱心さが感じられます。ちなみに、「コマワリ手形」は「狐廻手形」と書きます。なぜ狐なのかはどこにも書かれていなくて、残念ながら理由がわからないのですが、気軽に乗り降りしようとすると便利なきっぷです(※)。ちなみに、終点・外川(とかわ)駅までの運賃は310円なので、往復するだけで元が取れます。
やがてやってきたのは、真っ黄色のデハ1001号です。もと営団地下鉄(現・東京メトロ)銀座線で走っていた車両ということから、今年、往年の塗装に塗り直したのです。ちなみに、それ以前の塗装は銚子電鉄オリジナル塗装を経て、2007年から5年ほど「桃太郎電鉄色」でした。これは、経営の苦しい銚子電鉄を応援する意味で、ゲームソフト会社のハドソンが「桃太郎電鉄」シリーズの発売20周年記念としてタイアップしたものでした。なかなか楽しいラッピングでしたが、既に5年も経ったため、塗装変更したようです。ただし、車内の座席モケットは「桃太郎電鉄」のままで、観光客は乗車すると一様に「へぇ〜」といった声をあげます。その車内に入ると、車掌さんがおいでになります。ここで、前述の「狐廻手形」を購入します。
やがて、電車はゴトゴトと走りはじめました。“ゴトゴト”と形容したそのままの走りで、とても元地下鉄の車両だとは思えないほどです。でも、それが何だか楽しいのは、ローカル鉄道の良さでしょうね。
銚子駅構内を出て左カーブしたら、もう次の駅に到着しました。車両基地がある仲ノ町駅です。ここには改めて寄ることとして、乗り続けます。全線で6.4kmのミニ私鉄ですが、駅数は銚子駅も含めて10駅もあります。駅間の平均距離は、わずか700m強です。だから気軽に下車して隣駅まで歩ける…と思いがちですが、線路と道路が並行していないため、歩くと意外に遠回りをすることもあります。でも、これほどの駅間ですから、電車はさほどスピードを出すこともなく走るわけです。
4駅目の笠上黒生(かさがみくろはえ)駅で、対向電車と交換します。車掌さんもここで対向電車に乗り換えて、銚子駅に戻ります。つまり、笠上黒生〜外川はワンマン運転となるわけです。観光客が乗るのは銚子駅からが多く、そうでなければ有人駅の犬吠駅か外川駅ですから、銚子駅発車から「狐廻手形」などの切符を売れば、その先で運賃精算する乗客はとても少なく、なかなか合理的な人員配置ですね。
笠上黒生駅からさらに2駅進むと、海鹿島(あしかじま)駅です。ここで下車したのは、私だけでした。特に特徴も無い、駅前にはお店の一軒もない、ホーム一面だけの無人駅です。でも、駅名標の傍らには「関東最東端の駅」の碑が建っています。そう、今日の目的地だった駅は、ここ海鹿島駅なのです。
古びた小柄な木造駅舎は、手入れがしっかりしていて、意外なほどきれいでした。もと駅員がいた窓口のうえには、壁掛け時計が正確に時を刻んでいます。待合室もちゃんと清掃されていて、その壁には手書きの電車発車時刻表が掲げてあります。誰も来ない駅でしたが、しばしその過ぎ去る時を楽しむには十分な駅でした。やがて、やってきた電車に乗ります。(つづく)
※お詫び
文中に“「コマワリ手形」は「狐廻手形」と書きます。”とありますが、正しくは「弧廻手形」でした。
銚子電気鉄道の線路が弧を描いた線形になっていることに由来するようです。
ここに訂正するとともにお詫び致します。 (2012年10月31日)
掲載日:2012年10月26日
JRの各駅停車を乗り継いでやってきたのは千葉県の銚子駅です。下車すると、駅の跨線橋を渡らず、ホームの反対側に歩きます。というのも、乗ってきた各駅停車は駅舎側のホームから跨線橋を渡った2番線ホームにつきます。その島式ホームの先端に、銚子電気鉄道のホームがあるのです。ホームの半分を切り取って線路を敷いた形で、そこには車止めがあって、終着駅のイメージがあります。ただし、ホーム上にある待合室はちょっと洋風で、そこだけイメージが違うかな…という感じです。
車止めの手前に柵があり、そこに何やら書いてあります。(上の写真をクリック)
銚子〜犬吠・外川の往復きっぷが大人540円、コマワリ手形という1日乗車券は乗り降り自由で1日大人620円とのこと。明らかな手書きで、この鉄道の熱心さが感じられます。ちなみに、「コマワリ手形」は「狐廻手形」と書きます。なぜ狐なのかはどこにも書かれていなくて、残念ながら理由がわからないのですが、気軽に乗り降りしようとすると便利なきっぷです(※)。ちなみに、終点・外川(とかわ)駅までの運賃は310円なので、往復するだけで元が取れます。
やがてやってきたのは、真っ黄色のデハ1001号です。もと営団地下鉄(現・東京メトロ)銀座線で走っていた車両ということから、今年、往年の塗装に塗り直したのです。ちなみに、それ以前の塗装は銚子電鉄オリジナル塗装を経て、2007年から5年ほど「桃太郎電鉄色」でした。これは、経営の苦しい銚子電鉄を応援する意味で、ゲームソフト会社のハドソンが「桃太郎電鉄」シリーズの発売20周年記念としてタイアップしたものでした。なかなか楽しいラッピングでしたが、既に5年も経ったため、塗装変更したようです。ただし、車内の座席モケットは「桃太郎電鉄」のままで、観光客は乗車すると一様に「へぇ〜」といった声をあげます。その車内に入ると、車掌さんがおいでになります。ここで、前述の「狐廻手形」を購入します。
やがて、電車はゴトゴトと走りはじめました。“ゴトゴト”と形容したそのままの走りで、とても元地下鉄の車両だとは思えないほどです。でも、それが何だか楽しいのは、ローカル鉄道の良さでしょうね。
銚子駅構内を出て左カーブしたら、もう次の駅に到着しました。車両基地がある仲ノ町駅です。ここには改めて寄ることとして、乗り続けます。全線で6.4kmのミニ私鉄ですが、駅数は銚子駅も含めて10駅もあります。駅間の平均距離は、わずか700m強です。だから気軽に下車して隣駅まで歩ける…と思いがちですが、線路と道路が並行していないため、歩くと意外に遠回りをすることもあります。でも、これほどの駅間ですから、電車はさほどスピードを出すこともなく走るわけです。
4駅目の笠上黒生(かさがみくろはえ)駅で、対向電車と交換します。車掌さんもここで対向電車に乗り換えて、銚子駅に戻ります。つまり、笠上黒生〜外川はワンマン運転となるわけです。観光客が乗るのは銚子駅からが多く、そうでなければ有人駅の犬吠駅か外川駅ですから、銚子駅発車から「狐廻手形」などの切符を売れば、その先で運賃精算する乗客はとても少なく、なかなか合理的な人員配置ですね。
笠上黒生駅からさらに2駅進むと、海鹿島(あしかじま)駅です。ここで下車したのは、私だけでした。特に特徴も無い、駅前にはお店の一軒もない、ホーム一面だけの無人駅です。でも、駅名標の傍らには「関東最東端の駅」の碑が建っています。そう、今日の目的地だった駅は、ここ海鹿島駅なのです。
古びた小柄な木造駅舎は、手入れがしっかりしていて、意外なほどきれいでした。もと駅員がいた窓口のうえには、壁掛け時計が正確に時を刻んでいます。待合室もちゃんと清掃されていて、その壁には手書きの電車発車時刻表が掲げてあります。誰も来ない駅でしたが、しばしその過ぎ去る時を楽しむには十分な駅でした。やがて、やってきた電車に乗ります。(つづく)
※お詫び
文中に“「コマワリ手形」は「狐廻手形」と書きます。”とありますが、正しくは「弧廻手形」でした。
銚子電気鉄道の線路が弧を描いた線形になっていることに由来するようです。
ここに訂正するとともにお詫び致します。 (2012年10月31日)
掲載日:2012年10月26日
●伊藤 博康(いとう ひろやす)
(有)鉄道フォーラム代表。愛知県犬山市生まれ。パソコン通信NIFTY-Serve草創期から鉄道フォーラムに関わり、1992年から運営責任者。(有)鉄道フォーラムを設立後、独自サーバでサービスを継続中。著書に「日本の “珍々”踏切」(東邦出版)「鉄道ファンのためのトレインビューホテル」「鉄道名所の事典」(東京堂出版)がある。現在、中日新聞社「達人に訊け」でもコラムを連載中。
(有)鉄道フォーラム代表。愛知県犬山市生まれ。パソコン通信NIFTY-Serve草創期から鉄道フォーラムに関わり、1992年から運営責任者。(有)鉄道フォーラムを設立後、独自サーバでサービスを継続中。著書に「日本の “珍々”踏切」(東邦出版)「鉄道ファンのためのトレインビューホテル」「鉄道名所の事典」(東京堂出版)がある。現在、中日新聞社「達人に訊け」でもコラムを連載中。
車止めの柵には、お得なきっぷを紹介してある
やってきたのは、地下鉄銀座線色のデハ1001号だった