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汽車旅ひろば - ひろやすの汽車旅コラム

汽車旅ひろば


  • ひろやすの汽車旅コラム
"鉄道フォーラム"代表の伊藤博康氏による鉄道コラム。
毎回幅広いテーマの中から、「乗ってみたい」「知って良かった」「へぇ~」な汽車旅関連の話題をご紹介します。お楽しみに!

明治村に蒸気機関車も復活! [No.H014]

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出発記念式典でテープカットを行う
サイモン・フィッシャー英国総領事ら
機関車には日英両国の国旗が掲げられている
10月5日の当コラム「明治村に京都N電が復活!」では、蒸気機関車も明治村に動態復活の動きと記しました。その蒸気機関車12号が、11月8日にいよいよお客さんを乗せての運転をはじめました。その初日には、発車セレモニーが行われ、記念列車が走りました。
この日、約2年ぶりに走りはじめたのは、イギリスのシャープ・スチュアート社製の蒸気機関車で、1874(明治7)年の製造です。日本の鉄道が走りはじめたのは1872(明治5)年ですから、その2年後という実に古い機関車です。それも、輸入して最初に走っていたのは、新橋〜横浜間。誰もが知っている日本初の鉄道開業区間に、増備車として輸入された機関車なのです。もちろん、日本で動いているもっとも古い蒸気機関車です。
このことから、製造元である英国の総領事であるサイモン・フィッシャー氏を来賓として招き、明治村の鈴木館長、経営母体となる名鉄インプレスの跡田社長、それに当日来村していた小学校の児童代表による「1日駅長」2名がテープカットを行いました。

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走りはじめた客車から、
日英国旗の手旗を振る小学生たち
式典が終わると、いよいよ発車です。
蒸気機関車12号は高らかに汽笛を鳴らし、白い煙と白い蒸気を一杯に噴き出し、ボッボッという音とともに加速していきます。
3両の古典客車内には、「1日駅長」も含む小学生達が乗って、全開の窓から日英国旗の手旗を振っています。どの顔も楽しそう!
いまの鉄道はどこでも暖冷房完備だけに、ひょっとするとこの子達は生まれて初めて列車の窓から手を振るという経験をしたのかも知れません。汽車が当たり前だった時代の光景ですよね。




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転車台で機関車をまわす様子も見逃せないポイント
重い機関車がゆっくりと回転するので、
その全体像をじっくりと見学できる
この日から営業運転を再開した明治村の蒸気機関車ですが、動く機関車は1両だけなので、隔週の平日に連休をとってメンテナンスを行うことになっています。その運休日は明治村の公式サイト内で発表されますので、行く際には事前チェックを忘れないようにしましょう。
乗車賃は“乗車体験料”として中学生以上片道500円、小学生300円です。午前10時台から午後3時台まで、30〜60分間隔で10往復します。
ここの蒸気機関車の楽しみは、もちろん乗ることが一番です。客車も3両それぞれが由緒あるもので、車内の様子も珍しければ、2軸車という点も珍しく、時速10キロとゆっくりながら、その乗り心地を楽しめます。
その乗る前や降りた後には機関車を付け替えるので、その様子も忘れずに楽しみたいところです。
機関車の方向を変えるために、両端の駅ホームの先にはターンテーブル(転車台)があり、そこで機関車を方向転換する様子を見学できるようになっています。その回転はもちろん手動。重い機関車を、二人の係員が息を合わせてまわします。

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ねじ式連結器をつなぎ、
最後のくさりをかけるところ
手前と奥にあるのがバッファー
中央にあるのがねじ式連結器
転車台での方向転換が終わったら、それでお終い…ではありません。その後、機関車はシュッシュッという音とともに機回し線を走って、客車の反対側に行きます。そこからバックして客車に連結するわけですが、その連結の様子もぜひ見て下さい。
というのも、見慣れた自動連結器ではなく、明治村の車両は明治時代に使われていたネジ式連結器を使用しているのです。車両端の左右に突き出しているバッファー(緩衝器)で受け止めて定位置に停まると、続いて係の方がねじ式連結器を締結。さらに鎖で補強します。
この連結作業の様子は、日本国内では他で見られないものだけに、是非見逃さないようにしてくださいね。

掲載日:2012年11月22日


●伊藤 博康(いとう ひろやす)
(有)鉄道フォーラム代表。愛知県犬山市生まれ。パソコン通信NIFTY-Serve草創期から鉄道フォーラムに関わり、1992年から運営責任者。(有)鉄道フォーラムを設立後、独自サーバでサービスを継続中。著書に「日本の “珍々”踏切」(東邦出版)「鉄道ファンのためのトレインビューホテル」「鉄道名所の事典」(東京堂出版)がある。現在、中日新聞社「達人に訊け」でもコラムを連載中。