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汽車旅ひろば - ひろやすの汽車旅コラム

汽車旅ひろば


  • ひろやすの汽車旅コラム
"鉄道フォーラム"代表の伊藤博康氏による鉄道コラム。
毎回幅広いテーマの中から、「乗ってみたい」「知って良かった」「へぇ~」な汽車旅関連の話題をご紹介します。お楽しみに!

名古屋近郊の定期観光(?)列車 [No.H019]

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眺めの良い高架橋上を走る城北線
非電化路線なので、架線柱もなく開放的
後方の高架は、名古屋第二環状道(旧・東名阪道)
東海交通事業 城北線をご存知でしょうか?
「東海交通事業」はJR東海の子会社で、主に駅業務の受託をしています。委託駅と呼ばれる有人駅にいる駅員は、東海交通事業の社員が多いのです。その会社が、1991年に開通した城北線の運営を受託します。その後、レンタカー事業もはじめています。

城北線は、国鉄時代に計画された名古屋駅を迂回する貨物線の一部で、機関区や操車場があった稲沢と中央本線勝川を短絡する路線です。国鉄末期にこの貨物線は不要とされ、建設が凍結されました。しかし、名古屋環状線の計画が残ったことから、JR東海に引き継がれました。このため、路線の西側では北にある稲沢方面への予定線は凍結される一方で、南にある名古屋方向へ向かう路線は継続建設となり、枇杷島駅に接続することになります。

沿線住民の期待などもあり1991年12月に勝川〜尾張星の宮が開業、1993年3月には尾張星の宮〜枇杷島が開通して全通します。しかし、沿線は人口密度が高くなく、さらに名古屋方向への人の流れはあるものの、環状方向の人の流れはほとんどありません。つまり、利用者は限定的と予想されました。そのため、土地や設備はJR東海が有するものの、列車の運行については子会社である東海交通事業に委託するという、上下分離方式を採用しました。このおかげで運賃はJR東海より割高となり、勝川〜枇杷島の全線を乗車した場合、11.2kmに430円という高額運賃になっています。
ちなみに、同区間を中央本線〜東海道本線と乗り継ぐと、19.0kmもあるにも関わらず、運賃は320円です。

このような路線なので、全線が高架複線であるにも関わらず、ディーゼルカーが1両でトコトコと走る線区となっています。それも、日中は1両のディーゼルカーが行ったり来たりするだけですから、複線の意味もありません。

しかし、高層ビルがほとんどない名古屋市北部を高架で進むだけに、濃尾平野や名古屋都心部の眺望はなかなかのものです。このことを利用して、毎年元旦には「初日の出号」が走ります。列車名がつき、1往復あるうち上りは臨時列車ですが、下りは定期列車を時刻変更しての運転です。
名古屋付近の元旦の日の出は7:01です。ただし、太陽が昇る東方に山があるため、日の出から数分後に初日の出を拝めます。その時間に、上りが比良7:00→7:10小田井(おたい)、下りが味美(あじよし)7:03→7:11勝川と、それぞれ高架上の眺めの良いあたりに停車します。乗客が車内から初日の出を拝んだら、再度発車という具合です。
こんなイベント列車ですが、予約不要、乗車賃も運賃だけです。さらに、先着100名には干支の置物までもらえるそうです。ひと味違った年の始まりを楽しめる列車ですよね。

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年末年始恒例となったイルミネーショントレイン
左側は枇杷島駅に進入してきた東海道本線の電車
名古屋駅の西隣の駅とは思えない光景だ

また、毎年、年末・年始には「イルミネーショントレイン」を運転しています。
車体にクリスマスツリーに使うLED装飾を施したもので、見ていると次々に色が変わっていくため、なかなかきれいです。昨年は震災の影響で節電が強く求められましたが、この照明用発電はディーゼルエンジンによるものなので節電の影響を受けず、よけい輝いて見えたものです。
今冬は12月14日(金)〜1月6日(日)の24日間に運転されています。日の入り後となる17:22枇杷島発の列車からはじまり、19:38枇杷島発まで上下計7本がこの電飾を光らせて走っています。


年末年始に、これらのちょっと変わった列車に乗るのはいかがでしょうか。
土日祝と12/31-1/3には、城北線を1日乗り放題の「ホリデーフリーきっぷ」(大人700円、小児350円)が発売されます。


掲載日:2012年12月28日


●伊藤 博康(いとう ひろやす)
(有)鉄道フォーラム代表。愛知県犬山市生まれ。パソコン通信NIFTY-Serve草創期から鉄道フォーラムに関わり、1992年から運営責任者。(有)鉄道フォーラムを設立後、独自サーバでサービスを継続中。著書に「日本の “珍々”踏切」(東邦出版)「鉄道ファンのためのトレインビューホテル」「鉄道名所の事典」(東京堂出版)がある。現在、中日新聞社「達人に訊け」でもコラムを連載中。