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"鉄道フォーラム"代表の伊藤博康氏による鉄道コラム。
毎回幅広いテーマの中から、「乗ってみたい」「知って良かった」「へぇ~」な汽車旅関連の話題をご紹介します。お楽しみに!
毎回幅広いテーマの中から、「乗ってみたい」「知って良かった」「へぇ~」な汽車旅関連の話題をご紹介します。お楽しみに!
トンネル駅を楽しむ…ほくほく線・美佐島駅 [No.H048]
トンネル駅を知っていますか?
地下鉄の駅はもちろんトンネル内です。
しかし、都市部の地下駅ではなく、山岳地帯等のトンネル内にある駅をトンネル駅と呼んでいます。
一般的に、日本でトンネル駅とされているのは、次の7駅になります。
なぜか東日本に固まっていて、東海・北陸以西には一駅もないんですね。
このうち1.2.は青函トンネル内にある駅で、非常時用に造られた駅を観光に利用できるようにしたものですから、他の5駅とは性格が異なります。また、2013年7月現在、北海道新幹線の建設工事のため、吉岡海底駅は利用できず、竜飛海底駅だけ「海底駅見学整理券」を購入することで利用できます。
前置きが長くなりました。
今回、このうち6.の美佐島(みさしま)駅をご紹介します。
場所は、上越新幹線の越後湯沢駅から上越線で17km強の位置にある六日町駅と、飯山線の十日町駅の中間にあります。六日町も十日町も新潟県ですが、この間には山があるため、トンネルで抜けているわけです。それでも、前後の魚沼丘陵駅としんざ駅はトンネルを出たすぐのところに造られたのですが、美佐島駅だけはそうすることができず、致し方なくトンネル内に設置することになったようです。
駅舎は、ごく普通の落ち着いた田舎駅といった感じです。ただ、駅舎の先に線路がないので、「美佐島駅」と書かれていなければ、地区の公民館のように見えます。手入れが行き届いているのは、地元の方々が大切に利用しているお陰でしょう。
上の画像では判りにくいのですが、階段の上にある「美佐島駅」の文字は独特な書体です。書の右には柿の絵も添えられています。珍しい駅名標だと近づいてみると、額の右側に「片岡鶴太郎書 ほくほく線開業10周年記念」との説明板が掲げられていました。北越急行のホームページ内にある「お知らせ」をみると、平成19年の開業10周年に、新潟放送で記念特別TV番組を制作・放送したそうです。その際に出演されたのが片岡鶴太郎氏で、全12駅に同様な駅名看板がつけられたそうです。
さて、駅舎に入ってみましょう。
これまた公民館風ですが、入ってすぐに地下へと向かう階段があるのは、トンネル駅ならではのものでしょう。人が二人並んで歩けるくらいの、余裕ある幅の階段で、周りはコンクリート打ちっ放しとなっています。
つい、すぐに階段を降りたくなりますが、まずは入口付近にある時刻表で電車の時刻を確認しましょう。時間があるなら、慌てる必要はありません。地下に行くとトイレもありませんので、まずはここで用足しをしておくのが無難です。また、和室の待合室がありますので、ここでしばらく休んでいても良いでしょう。ただし、待合室のシャッターは18時に自動で閉まってしまうそうですから、寝過ごさないよう要注意です。
階段を降りていくと、夏場なら次第に気温が下がっていくことが感じられます。地下に着くと自動ドアがあり、そのドアの先に小さな待合室がありました。地下ですから湿気が多いのですが、待合室には除湿器が備え付けられていて、思ったよりも快適です。ただし、狭い空間なので、閉塞感は否めません。さらに、ホームは目の前なのに、銀色に冷たく光る扉は閉じていて、ホームに出ることを拒んでいます。その傍らにある電光表示板には、「電車が到着するまで扉は開きません」と書いてあります。さらに「この自動扉は、階段側扉が開いている時は開きません!」とも注意書きがあります。
これほど厳重なのは、ホームの先を特急「はくたか」が高速で通過するためです。なにせ、在来線では国内最速の時速160kmで行き来している「はくたか」です。ホームに出ていたら危険なのはもちろん、扉が開いていたら、その風圧で待合室の方はもちろん、地上にいる方まで危なくなる可能性があるわけです。ちなみに、待合室内の電光表示板は、電車が接近すると
・電車が通過します
・電車が到着します
の二通りを間違いなく表示してくれるようになっています。さらに、通過時には危険だというアナウンスも流れます。
この特急通過時には、トンネル内を流れる風が自動扉付近から漏れてくるようで、ヒュウヒュウといった独特な音がします。理由を知らなければかなり不気味に感じるであろう音です。その音が最高潮に達するのが、「はくたか」のホーム通過時です。けたたましいアナウンスとともに、この特急通過前後の音は他では聞くことができないものです。美佐島駅に行かれるのであれば、ぜひ地下待合室で通過音を聞かれることをお勧めします。
掲載日:2013年07月26日
地下鉄の駅はもちろんトンネル内です。
しかし、都市部の地下駅ではなく、山岳地帯等のトンネル内にある駅をトンネル駅と呼んでいます。
一般的に、日本でトンネル駅とされているのは、次の7駅になります。
1. | JR北海道 | 津軽海峡線 | 吉岡海底駅 |
2. | JR北海道 | 津軽海峡線 | 竜飛海底駅 |
3. | 野岩鉄道 | 会津鬼怒川線 | 湯西川温泉駅 |
4. | JR東日本 | 上越線 | 湯檜曾駅 |
5. | JR東日本 | 上越線 | 土合駅 |
6. | 北越急行 | ほくほく線 | 美佐島駅 |
7. | JR西日本 | 北陸本線 | 筒石駅 |
なぜか東日本に固まっていて、東海・北陸以西には一駅もないんですね。
このうち1.2.は青函トンネル内にある駅で、非常時用に造られた駅を観光に利用できるようにしたものですから、他の5駅とは性格が異なります。また、2013年7月現在、北海道新幹線の建設工事のため、吉岡海底駅は利用できず、竜飛海底駅だけ「海底駅見学整理券」を購入することで利用できます。
前置きが長くなりました。
今回、このうち6.の美佐島(みさしま)駅をご紹介します。
場所は、上越新幹線の越後湯沢駅から上越線で17km強の位置にある六日町駅と、飯山線の十日町駅の中間にあります。六日町も十日町も新潟県ですが、この間には山があるため、トンネルで抜けているわけです。それでも、前後の魚沼丘陵駅としんざ駅はトンネルを出たすぐのところに造られたのですが、美佐島駅だけはそうすることができず、致し方なくトンネル内に設置することになったようです。
駅舎は、ごく普通の落ち着いた田舎駅といった感じです。ただ、駅舎の先に線路がないので、「美佐島駅」と書かれていなければ、地区の公民館のように見えます。手入れが行き届いているのは、地元の方々が大切に利用しているお陰でしょう。
上の画像では判りにくいのですが、階段の上にある「美佐島駅」の文字は独特な書体です。書の右には柿の絵も添えられています。珍しい駅名標だと近づいてみると、額の右側に「片岡鶴太郎書 ほくほく線開業10周年記念」との説明板が掲げられていました。北越急行のホームページ内にある「お知らせ」をみると、平成19年の開業10周年に、新潟放送で記念特別TV番組を制作・放送したそうです。その際に出演されたのが片岡鶴太郎氏で、全12駅に同様な駅名看板がつけられたそうです。
さて、駅舎に入ってみましょう。
これまた公民館風ですが、入ってすぐに地下へと向かう階段があるのは、トンネル駅ならではのものでしょう。人が二人並んで歩けるくらいの、余裕ある幅の階段で、周りはコンクリート打ちっ放しとなっています。
つい、すぐに階段を降りたくなりますが、まずは入口付近にある時刻表で電車の時刻を確認しましょう。時間があるなら、慌てる必要はありません。地下に行くとトイレもありませんので、まずはここで用足しをしておくのが無難です。また、和室の待合室がありますので、ここでしばらく休んでいても良いでしょう。ただし、待合室のシャッターは18時に自動で閉まってしまうそうですから、寝過ごさないよう要注意です。
階段を降りていくと、夏場なら次第に気温が下がっていくことが感じられます。地下に着くと自動ドアがあり、そのドアの先に小さな待合室がありました。地下ですから湿気が多いのですが、待合室には除湿器が備え付けられていて、思ったよりも快適です。ただし、狭い空間なので、閉塞感は否めません。さらに、ホームは目の前なのに、銀色に冷たく光る扉は閉じていて、ホームに出ることを拒んでいます。その傍らにある電光表示板には、「電車が到着するまで扉は開きません」と書いてあります。さらに「この自動扉は、階段側扉が開いている時は開きません!」とも注意書きがあります。
これほど厳重なのは、ホームの先を特急「はくたか」が高速で通過するためです。なにせ、在来線では国内最速の時速160kmで行き来している「はくたか」です。ホームに出ていたら危険なのはもちろん、扉が開いていたら、その風圧で待合室の方はもちろん、地上にいる方まで危なくなる可能性があるわけです。ちなみに、待合室内の電光表示板は、電車が接近すると
・電車が通過します
・電車が到着します
の二通りを間違いなく表示してくれるようになっています。さらに、通過時には危険だというアナウンスも流れます。
この特急通過時には、トンネル内を流れる風が自動扉付近から漏れてくるようで、ヒュウヒュウといった独特な音がします。理由を知らなければかなり不気味に感じるであろう音です。その音が最高潮に達するのが、「はくたか」のホーム通過時です。けたたましいアナウンスとともに、この特急通過前後の音は他では聞くことができないものです。美佐島駅に行かれるのであれば、ぜひ地下待合室で通過音を聞かれることをお勧めします。
掲載日:2013年07月26日
●伊藤 博康(いとう ひろやす)
(有)鉄道フォーラム代表。愛知県犬山市生まれ。パソコン通信NIFTY-Serve草創期から鉄道フォーラムに関わり、1992年から運営責任者。(有)鉄道フォーラムを設立後、独自サーバでサービスを継続中。著書に「日本の “珍々”踏切」(東邦出版)「鉄道ファンのためのトレインビューホテル」「鉄道名所の事典」(東京堂出版)がある。現在、中日新聞社「達人に訊け」でもコラムを連載中。
(有)鉄道フォーラム代表。愛知県犬山市生まれ。パソコン通信NIFTY-Serve草創期から鉄道フォーラムに関わり、1992年から運営責任者。(有)鉄道フォーラムを設立後、独自サーバでサービスを継続中。著書に「日本の “珍々”踏切」(東邦出版)「鉄道ファンのためのトレインビューホテル」「鉄道名所の事典」(東京堂出版)がある。現在、中日新聞社「達人に訊け」でもコラムを連載中。
夏場に降りると、空気がひんやりとしている。
片面ホームに出口が一個所あるだけの駅だ。