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"鉄道フォーラム"代表の伊藤博康氏による鉄道コラム。
毎回幅広いテーマの中から、「乗ってみたい」「知って良かった」「へぇ~」な汽車旅関連の話題をご紹介します。お楽しみに!
毎回幅広いテーマの中から、「乗ってみたい」「知って良かった」「へぇ~」な汽車旅関連の話題をご紹介します。お楽しみに!
未成線の夢を叶えた列車"とことこトレイン" [No.H055]
未成線"を知ってますか?
かつて鉄道を建設しようとしたものの、完成することがなかった路線のことをいいます。
山口県岩国市は錦帯橋があることで知られていますが、その岩国市内を走る錦川(にしきがわ)鉄道は、もと国鉄岩日(がんにち)線を引き継いだ第三セクター鉄道です。岩日線は、岩国と日原(にちはら)を結ぶ路線として名づけられた線名でした。その日原は、JR西日本山口線にある島根県の駅で、同県にある津和野駅から北に2駅目です。つまり、錦川に沿って北上した線路は、中国山地を突っ切って島根県に抜けようとしていたのです。
錦川鉄道は川西~錦町間32.7kmの路線ですが、終点の錦町駅から先には、岩日線として開業するはずだった未成線が続いています。険しい山岳地帯ですが、それを抜けるトンネルやコンクリート橋が途中まで完成していました。それでありながら、1980(昭和55)年に工事が中断されてしまい、そのまま放置されたのです。
錦川鉄道は、この未成線に完成している路盤を利用して、観光列車を走らせることにしました。"とことこトレイン"という可愛らしい名前で、2002(平成14)年7月から錦町~雙津峡(そうづきょう)温泉間約6kmを、40分ほどかけてゆっくりと走ります。ただし、この"とことこトレイン"は、鉄道線の列車ではありません。ゴムタイヤで走る列車型の電気自動車です。
ところで、この"とことこトレイン"を、どこかで見たことがあると思った方はいませんか? 実は、2005(平成17)年に行われた愛知万博「愛・地球博」において、主会場となった長久手会場を一周する「グローバル・ループ」で活躍した観客輸送車です。当時、「グローバル・トラム」と呼ばれていました。大成功を収めた愛知万博のなかでも目立つ存在でしたので、会場に行かれた方であれば、見覚えがある方も多いと思います。
この「グローバル・トラム」を錦川鉄道が入手し、二代目「とことこトレイン」として走らせ始めたのは2009(平成21)年9月でした。2編成あり、それぞれに「ガタくん」と「ゴトくん」という愛称がついています。初代"とことこトレイン"はLPガス車だったのが、二代目は電気自動車になったお陰で、途中にある長いトンネル内でも排気ガスの臭いがしなくなりました。
そのトンネルの中でも特に長いのが、錦町駅を出発してすぐに入る広瀬トンネルで、「きらら夢トンネル」の愛称がついています。全長1,796mもの長さですから、トンネル内は夏に涼しく冬は暖かく、開放的な"とことこトレイン"にはうってつけです。さらに、このトンネルには行程最大の見どころがあります。6色の光る石を使い、地元の生徒・学生達が描いた壁画です。延々630mにもわたって続く壁画にはブラックライトを当てているので、暗闇に浮かぶ作品群は、まさに幻想的! 大学生達の作品は、天井から路面まで360度を使った力作です。"とことこトレイン"は、その一番の見どころで小休止をしますので、じっくりと観賞できます。
"とことこトレイン"の運転は、3月下旬~11月の土休日ですが、春休みと夏休みの期間は毎日運転となっています。一日3-4往復で、片道大人600円、小人300円ですが、錦川鉄道を利用すると、片道につき大人100円、小人50円の割引になります。また、錦川鉄道を利用すると、錦川鉄道のホームページ(https://nishikigawa.com/)内にある"とことこトレイン"のページ内で乗車3日前まで予約もできます。行楽シーズンなどには、予約してからでかけると安心ですよ。
"とことこトレイン"の切符売り場は、錦川鉄道の終点・錦町駅内に併設されています。同売り場には、国鉄岩日線時代に実際に使用していた河山駅と北河内駅のタブレット閉塞機が今年4月から展示されています。これも見落とさないようにしたいところです。
掲載日:2013年09月13日
かつて鉄道を建設しようとしたものの、完成することがなかった路線のことをいいます。
山口県岩国市は錦帯橋があることで知られていますが、その岩国市内を走る錦川(にしきがわ)鉄道は、もと国鉄岩日(がんにち)線を引き継いだ第三セクター鉄道です。岩日線は、岩国と日原(にちはら)を結ぶ路線として名づけられた線名でした。その日原は、JR西日本山口線にある島根県の駅で、同県にある津和野駅から北に2駅目です。つまり、錦川に沿って北上した線路は、中国山地を突っ切って島根県に抜けようとしていたのです。
錦川鉄道は川西~錦町間32.7kmの路線ですが、終点の錦町駅から先には、岩日線として開業するはずだった未成線が続いています。険しい山岳地帯ですが、それを抜けるトンネルやコンクリート橋が途中まで完成していました。それでありながら、1980(昭和55)年に工事が中断されてしまい、そのまま放置されたのです。
錦川鉄道は、この未成線に完成している路盤を利用して、観光列車を走らせることにしました。"とことこトレイン"という可愛らしい名前で、2002(平成14)年7月から錦町~雙津峡(そうづきょう)温泉間約6kmを、40分ほどかけてゆっくりと走ります。ただし、この"とことこトレイン"は、鉄道線の列車ではありません。ゴムタイヤで走る列車型の電気自動車です。
ところで、この"とことこトレイン"を、どこかで見たことがあると思った方はいませんか? 実は、2005(平成17)年に行われた愛知万博「愛・地球博」において、主会場となった長久手会場を一周する「グローバル・ループ」で活躍した観客輸送車です。当時、「グローバル・トラム」と呼ばれていました。大成功を収めた愛知万博のなかでも目立つ存在でしたので、会場に行かれた方であれば、見覚えがある方も多いと思います。
この「グローバル・トラム」を錦川鉄道が入手し、二代目「とことこトレイン」として走らせ始めたのは2009(平成21)年9月でした。2編成あり、それぞれに「ガタくん」と「ゴトくん」という愛称がついています。初代"とことこトレイン"はLPガス車だったのが、二代目は電気自動車になったお陰で、途中にある長いトンネル内でも排気ガスの臭いがしなくなりました。
そのトンネルの中でも特に長いのが、錦町駅を出発してすぐに入る広瀬トンネルで、「きらら夢トンネル」の愛称がついています。全長1,796mもの長さですから、トンネル内は夏に涼しく冬は暖かく、開放的な"とことこトレイン"にはうってつけです。さらに、このトンネルには行程最大の見どころがあります。6色の光る石を使い、地元の生徒・学生達が描いた壁画です。延々630mにもわたって続く壁画にはブラックライトを当てているので、暗闇に浮かぶ作品群は、まさに幻想的! 大学生達の作品は、天井から路面まで360度を使った力作です。"とことこトレイン"は、その一番の見どころで小休止をしますので、じっくりと観賞できます。
"とことこトレイン"の運転は、3月下旬~11月の土休日ですが、春休みと夏休みの期間は毎日運転となっています。一日3-4往復で、片道大人600円、小人300円ですが、錦川鉄道を利用すると、片道につき大人100円、小人50円の割引になります。また、錦川鉄道を利用すると、錦川鉄道のホームページ(https://nishikigawa.com/)内にある"とことこトレイン"のページ内で乗車3日前まで予約もできます。行楽シーズンなどには、予約してからでかけると安心ですよ。
"とことこトレイン"の切符売り場は、錦川鉄道の終点・錦町駅内に併設されています。同売り場には、国鉄岩日線時代に実際に使用していた河山駅と北河内駅のタブレット閉塞機が今年4月から展示されています。これも見落とさないようにしたいところです。
掲載日:2013年09月13日
●伊藤 博康(いとう ひろやす)
(有)鉄道フォーラム代表。愛知県犬山市生まれ。パソコン通信NIFTY-Serve草創期から鉄道フォーラムに関わり、1992年から運営責任者。(有)鉄道フォーラムを設立後、独自サーバでサービスを継続中。著書に「日本の “珍々”踏切」(東邦出版)「鉄道ファンのためのトレインビューホテル」「鉄道名所の事典」(東京堂出版)がある。現在、中日新聞社「達人に訊け」でもコラムを連載中。
(有)鉄道フォーラム代表。愛知県犬山市生まれ。パソコン通信NIFTY-Serve草創期から鉄道フォーラムに関わり、1992年から運営責任者。(有)鉄道フォーラムを設立後、独自サーバでサービスを継続中。著書に「日本の “珍々”踏切」(東邦出版)「鉄道ファンのためのトレインビューホテル」「鉄道名所の事典」(東京堂出版)がある。現在、中日新聞社「達人に訊け」でもコラムを連載中。
コンクリート橋の後方にはトンネルも見える。
鉄道用の構造物だけに、がっしりとしている。