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汽車旅ひろば - ひろやすの汽車旅コラム

汽車旅ひろば


  • ひろやすの汽車旅コラム
"鉄道フォーラム"代表の伊藤博康氏による鉄道コラム。
毎回幅広いテーマの中から、「乗ってみたい」「知って良かった」「へぇ~」な汽車旅関連の話題をご紹介します。お楽しみに!

歴史的駅舎と、錦川鉄道の駅から新幹線への乗り継ぎ [No.H056]

先週、錦川鉄道の"とことこトレイン"を紹介しました。山深い自然の中を、風を受けながら走る"とことこトレイン"は、これからがベストシーズンとなります。それでは…と考えてみたものの、錦川鉄道に乗るにはどうもアクセスが大変そうと感じた方はいませんか。そんな方への提案です。アクセスのために錦川鉄道に乗るのではなく、その往復も楽しみませんか?


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国の登録有形文化財になっている西岩国駅。
その外観は、幹線系の主要駅らしい立派なもの。
無人駅だが、地元の方々により大切に保存されている。
錦川鉄道の列車はJR西日本岩徳線に乗り入れていて、JR岩国駅発着となっています。岩国駅から2駅が、岩国~徳山を結ぶ岩徳線です。その中間にある西岩国駅で下車してみましょう。JR西日本の駅ですから、錦川鉄道の列車でなくJR岩徳線の列車でもOKです。JRの列車で訪れて、錦川鉄道の列車が来るまで西岩国駅を楽しむというのも良いでしょう。
同駅で下車したら、構内の広さと駅舎の立派さをご覧下さい。とてもローカル線の駅とは思えないものです。それもそのはず、もともと岩徳線は山陽本線として開業したのです。というのも、岩国~徳山間は山陽本線では68.8kmですが、岩徳線だと47.1kmと約3分の2の距離になるのです。このように、山陽本線を短絡することを目的に造られた路線でした。それだけに、西岩国駅は開業した1929(昭和4)年から13年間、岩国駅を名乗っていました。当時は、錦帯橋最寄り駅として大いに賑わったそうです。そのため、駅のホームはとても長く、上下線それぞれにホームがある立派な駅構内で、駅舎も立派なものなのです。しかし、戦時下の1942(昭和17)年に山陽本線が勾配の緩い柳井経由に戻ったため、西岩国駅となりました。
西岩国駅舎は開業当時からのもので、1979(昭和54)年にははやくも駅舎の永久保存を決めているそうです。それだけに状態が良く、国の登録有形文化財にもなっています。


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車掌車改造の待合室がユニークな清流新岩国駅。
去りゆく列車の上部が新幹線ホーム端。
今年3月に駅名を改称したことが納得できる。
さて、"とことこトレイン"を楽しんだら、帰りにJR岩徳線と合流する一つ手前の駅で下車してみましょう。「清流新岩国」駅と名乗っていますが、今年(2013年)3月15日までは「御庄」駅でした。改称後の現駅名から、ピンときた方もおいででしょう。新岩国駅はJRの山陽新幹線にある駅です。その前についている「清流」は錦川鉄道の路線名「錦川清流線」に由来します。つまり、「新幹線新岩国駅に乗換ができる錦川鉄道の駅ですよ」という駅名なのです。
実際、下車したホーム先端付近の上方には、新岩国駅ホーム端があります。左の写真が清流新岩国駅ですが、去りゆく列車の上方が新岩国駅ホーム端になっています。余談ながら、左に大きく写っている車掌車改造の待合室もユニークですよね。


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清流新岩国駅から、山陽新幹線の新岩国駅へは
高架下に沿って整備されている通路を歩いて300m。
しっかりと案内されているので、迷う心配もない。
同ホーム端の階段を降りると、新岩国駅は左へとの案内があります。そこには、新幹線高架に沿った通路があり、

新幹線(新岩国駅)まで約5分(300m)
清流新岩国駅

と書いた幟がズラッとはためいています。これだけ並べられると、迷う心配もなく歩けます。300mですから、歩くのにさほど抵抗はないですよね。新岩国駅に着けば、広島はもちろんのこと、東京・大阪・博多などへも行けますから、帰路にピッタリのコースでしょう。もし時間があるなら、新岩国駅前から錦帯橋経由岩国駅行の路線バスが出ていますので、錦帯橋見学をすることもできます。
"とことこトレイン"は魅力だけど、それだけのために錦川鉄道を往復するのはちょっと…と思っていた方、錦川鉄道から眺める錦川の渓谷美に加え、西岩国駅見学や第三セクター鉄道の駅から徒歩で乗り継ぐ新幹線駅を楽しむことも加えてみてはいかかでしょう。



掲載日:2013年09月20日


●伊藤 博康(いとう ひろやす)
(有)鉄道フォーラム代表。愛知県犬山市生まれ。パソコン通信NIFTY-Serve草創期から鉄道フォーラムに関わり、1992年から運営責任者。(有)鉄道フォーラムを設立後、独自サーバでサービスを継続中。著書に「日本の “珍々”踏切」(東邦出版)「鉄道ファンのためのトレインビューホテル」「鉄道名所の事典」(東京堂出版)がある。現在、中日新聞社「達人に訊け」でもコラムを連載中。